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高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
18/63

神奈vs七海 中編

「はっ!!」

「ぐふっ!?」


 神奈さんの右掌底が、七海のお腹に命中する。今のは中々イイものが入ったな……。

 だけど――――


「え!?」

「舐めんな!」

「あぐっ!?」


 七海はそれでも怯まずに神奈さんの右腕を掴んで、お返しとばかりに左拳を振るった。ゴッ! と鈍い音を響かせ、神奈さんの左頬が赤く染まる。それだけで七海の拳がどれだけ強いのか、俺には分かる。


「しぶとい女ですね……! 井口七海さん」

「それはお互い様よ……! 橘神奈。橘組の一人娘だから、さぞ過保護にされてるんだと思ってたけど……正直、舐めてたわ」


 俺も正直に言うと、七海と同じ側の考えだった。神奈さんが訓練してるのは俺もこの一年でよく見てたから知っているが、それでも七海に勝つのは難しいと思ってた。

 ヤバくなったら絶対に止めると俺は決めていた。だけど、そんな予想を遥かに上回っていた。七海が強いのはあの時の喧嘩で分かっていたことだが、まさか神奈さんがここまで強くなっているとは思わなかった。

 少なくとも、今の神奈さんとまともにやり合える一年は俺か “一年五本の指” の中でも、今戦りあってる七海しかいないかもしれない。


「私も貴女の事を、鷹緖組 “若頭補佐” の一人娘、としか見ていませんでしたが……大した力ですね」

「そりゃどうも……」


 因みにだが、この場にいる俺たち全員極道関係者だ。神奈さんは橘組 “組長” の娘……。七海は俺たちと敵対関係にある鷹緖組の “若頭補佐” 井口団蔵の娘。そして、俺は神奈さんと同じ橘組の “若頭” だ。

 敵対関係にある組で、上の役職である俺やその娘が同じ高校にいるってだけでも結構大きな問題なのに、その(むすめ)二人のタイマンなんて下手すりゃ橘組と鷹緖組の抗争の火種に成りかねないと、今更だが俺はそう考えていた。もし、そうなってしまったら責任は止め切れなかった俺にある。覚悟だけはしておくか。

 今、俺に出来ることはこの二人の喧嘩を……


「じゃ、続けようか?」

「ええ……そうですね」

「「私たちの喧嘩を!!」」


 ただ、見届ける事だけだ――――





「はぁっ!」

「らぁっ!」


 私は左ハイキックを放ち、井口さんは左ストレートを繰り出し、互いの攻撃が命中する。その時お互いに顔をしかめながらも私たちは攻撃を止めませんでした。一度でも止めてしまえば、喧嘩が負けて終わってしまう。それを分かっていますから……!!


「っしゃ!」

「あうっ!!」


 それにしても、井口さんの拳……女の拳で出せるレベルを遥かに超えている!! まるで鉄のように硬く、威力もズンッ! と全身に染み渡る。こんな攻撃、ガードしてても腕が痺れますよ⋯⋯。


「このっ!」

「がふっ!?」


 私はもう一度タメを作ってから、左ハイキックを彼女の顔面に浴びせる。それによって井口さんが一瞬ぐらついたかに思ったが、すぐに体勢を立て直して私を睨みつけてくる。そして、いきなり突進して私の胸ぐらを掴み上げてきたので私も負けじと彼女の胸ぐらを掴み返しました。

 全く、困りますよ……! こんなに強いなんて思ってませんでした!!


「流石……あの “大嵐闘” で残ってた “一年五本の指” の一人ですね」

「フン! アンタこそ、参加してたら間違いなく残ってた逸材よ。何で参加しなかったの……?」

「アレは強制じゃなく、参加自由のはずです。それに……蓮二さんにボロボロの顔を見せるの、嫌でしたから」

「!」


 あの時はそんな思いだったが、今は間違いなく私の顔はその状態になってるし、蓮二さんも見ている。 正直、こんな顔を見て欲しくない……ですけど、今はそんな事どうでもいい。

 私と同じで、蓮二さんの事が好きだという女に負けたくない……!!


「アンタ……! 本気で蓮二の事好きなんだ」

「それはお互い様でしょう? 井口さん」

「……そうね」


 私たちは会話を終え、互いに胸ぐらを離して距離を取る。一呼吸し、井口さんを捉えると驚きを隠せませんでした。

 何故なら――――


「フフッ……」

「何で……笑ってるんですか?」

「アンタが私と同類だって分かったからよ。こんなん笑うしかないっての」


 ど、同類? 私と井口さんが? 何処が――って、そんなの考える必要も無い事に気付きました。一瞬えっ? ってなってしまいましたが、さっき答えましたよね……。


「橘神奈!」

「! な、何ですか?」

「この喧嘩、勝っても負けても恨みっこ無しだからね!」

「っ……! はい!」


 私も彼女同様、ニッと笑みを浮かべ返事を返し、そのまま同時に駆けだした。

 この喧嘩を、もっと楽しむ為に――――






「っらぁ!」

「はぁっ!」


 私と橘神奈は何度目だろう? 互いに拳を喰らい、身体がふらつく。正直もう私はとっくに限界なんてきてる。気を一瞬でも抜いてしまえば意識を失うし、体も動かなくなる。それは間違いない……。

 だけど――――


「らっ!」

「あぐっ!!」


 橘神奈……! この女が向かってくる限り、私が折れることだけは絶対にしない! そしてそれは、この女もそうだ。私が向かってくる限り、折れることは無いだろう。

 そして今度は互いの蹴りを浴びせたと同時に橘神奈が膝をつき、私は両足がガクガクと笑い始めてしまった。


「つっ……!」


 私は叱咤激励するように両の太腿を全力で一回だけ叩く。すると、両足の震えは止まった。だけどこれはあくまでもほんの僅かな時間だけ。それは分かっている……。


「まだまだこれからですよ? 井口さん……」

「! ええ……分かってるわよ、そんな事」


 そう言いながらも、橘神奈も足が同じようにガクガクと震えている。恐らく、私と同じで限界なのだろう。だったらもうやることは一つ……。次の一撃で仕留める!!


「井口さん。そろそろ決着を、つけましょうか?」

「! ええ……ケリをつけようじゃないの。私たちの喧嘩に」


 どうやら橘神奈も同じ気持ちのようだ。なら……もう迷う事は無い。私の最高の一撃に全てを懸ける!!

 私はギュッと力強く右拳を握り締める。一方で橘神奈は屈伸を始めた。となると、最後の一撃で来るのは蹴りだ。何となくだが、私には分かる。今までの攻撃の殆どが蹴りだったってのもあるけど、こういう時は一番自信のある技で来るはずだから……!

 そんな事を考え、風が吹き荒れる中で互いに睨み合う。ビュゥゥゥゥ、と風による独特の音が屋上にコダマする。そして、風が止んだ直後に私たちは同時に駆けた――――


「おおおおおおっ!!」

「はぁぁぁぁぁっ!!」


 私たちはそれぞれ最高の一撃を、笑いながら繰り出した――――!


 ゴッ!!!

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