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高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
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A組vsB組 中編

 俺と柳は自分の拳によって俺は左頬を、柳は右頬を殴打し互いにほぼ同時に一歩後ずさる。この時俺は、柳美紅の力に驚きを隠せず殴られた左頬にそっと手を添えた。

 左頬からズキズキと短い感覚で痛みが走っている。弘人と喧嘩した時には感じられなかった。こいつの力は間違いなく弘人以上だ……!!


「いったぁ〜! やってくれるじゃないか!!」

「それはこっちのセリフだ!」


 口は元気なものの、俺たちは互いにその場を動かずに様子を見ていた。柳の拳を直で受け止め、威力を知った上でそう簡単に攻めれないと俺は悟ったからだ。

 それは柳も同じように見えた。何故なら、柳が苦虫を噛んだような顔をして俺を睨みつけているからだ……。

 うーむ、やっぱり女の顔を殴るのって俺的には嫌なんだよな。だって最低じゃん? 男が女に手を上げるって……。


「でも、安心したよボクは」

「あ? 何がだ、柳」

「紅蓮二君! 君が女だからって理由で喧嘩を買わない最低な奴じゃなかったからさ〜」


 え……。えええええっ!? 普通って男は女に暴力するのってダメなんじゃないの!? 寧ろ逆なのが最低なの!? この発言のせいで俺の頭はパニック状態に陥ってしまった。


「喧嘩の相手になるのが女だからという理由で喧嘩しない……そんなのこの学校じゃ臆病者扱いだからね! そうだよね皆!?」

『そうだそうだ〜!!』


 嘘やん……? マジですかこの学校。B組の奴だけでなく、A組の皆まで柳に賛同してやがる。この学校じゃ、常識ってやつは通用しないみたいだな。

 俺は落胆しつつも、安心していた部分もあった。それはこの学校では女相手とはいえ、喧嘩は喧嘩だとようやく割り切れるということだ――――


「ハッ……! ならとっとと済ませようや? 俺も極力女を殴るのは少ないほうがいいからな」

「とっとと済ませる……? そんなことさせる訳ないじゃん!」


 柳が俺の発言に怒ったのか、猪突猛進の如く突っ込んで俺の懐にいとも簡単に入り込んできた。俺はそれに気付くのにコンマ数秒反応が遅れてしまったが、その極僅かな時間は喧嘩においてかなり大きい。

 何故ならば――――


「しまっ――」

「遅いよっ!」


 柳の放った右ミドルキックは俺の腹に見事に命中した。ズンッ! と鈍い音が俺の腹に響き、俺の身体も同時にぐらついてしまった。


「ぐっ!?」

「ほらほら、どんどん行くよっ!」


 その一瞬を見逃すことなく、柳は高速ラッシュを俺に浴びせにきた。容赦のない攻撃を毎度毎度繰り出してきやがるよ、この女は!

 俺は足に力を込めてバックステップを行い、柳のラッシュ攻撃を何とか躱した直後に俺が柳に対して突っ込み、柳の顎に狙いを定めた。


「うおおおおっ!!」

「いっ!?」


 俺の全力の右アッパーは柳の顎を捕えずに空を切った。柳には動揺を与える程度……かに思われたが、俺はあの時微かではあったが手応えがあったのを感じてすかさず右拳を確認した。

 するとそこには――――


「結構やるね! 今のアッパーは流石のボクもビビったよ〜」

「そりゃどーも。それよりお前、顎大丈夫か?」

「え?」

「あっ、見ろ! 柳の顎から血が!!」


 ポタポタと、ゆっくり音をたてて柳の顎から流れているのは弘人が声を荒らげて言ったり “血” である。そう、俺の右拳に付着していたものもそれなのだ。

 恐らく俺の放ったアッパーは完全に避けられたのではなく、顎をほんの少しだけ掠めていたのだろう。それにしてもアッパーって凄いと思わされた。俺みたいな奴でも顎を掠めると、相手に血を流れさすことが可能なのだから……!!

 そんなことを考えている間に、俺に指摘された柳が左手で顎を拭い付着した血を見て、柳は何故か笑っていた。


「アハハッ! マジかよ? 久しぶりだなぁ、ボクが喧嘩で血を流したの」

「⋯⋯」

「オッケーオッケー! いいじゃん、紅蓮二君!! 君なら遠慮無しでやれそうだ……粉々に壊しても、イイよね?」

『!?』


 何だこの寒気は!?

 柳から放たれた殺気に当てられたのか、ゾクッと身体が震えた。それと同時に場の空気が静まり返った。


「んふふっ、それじゃいっくよ〜!?」

「っ!?」


 この場で出せるわけがない陽気な声に驚いたのは俺だけでなく、この場にいる皆も同じだった。柳の奴があれだけの殺気をこの場に充満させてやがったのに、その本人があんなに明るい訳がないと思い込んでいたからだろう。

 だけど俺はこの時、もう一つ気になる事もあった。それは柳の目が――――


「反応トロすぎっ!」

「なっ!?」


 いきなり目の前に現れた柳の右拳を、咄嗟の判断ではあったが辛うじてスウェーして避けることが出来たが、無理な動きをしてしまったせいで足を滑らせてしまった。

 すぐさま立ち上がろうとしたが、柳はそれを見逃すことは無かった。即座に立ち上がろうとした俺を蹴り飛ばし、マウントを取る。


「さぁて、こうなってしまったらもう終わりだよ!」


 やべ、最悪の状態だこれ。喧嘩においてマウントを取られるのはかなり不味い。何故なら、相手に対して一方的に攻撃を仕掛けることが出来るからだ。早く動かないと……! って、思ってはいるが俺は柳の目を見つめてしまっていた。何故かって?

 それは柳の目の色がさっきまで黒だったのが、真紅に染まっていたからだった――――


「そらそらそらそらぁっ!!」

「っ! うおおおおっ!!」


 危なっ! 柳の目に見蕩れてたら反応遅れそうになった!

 容赦のない柳の拳の連打が俺の顔面を襲うが、俺も勿論そのまま喰らうなんてアホではない。何とか腕を交差させて顔面を守っているのだが⋯⋯一発一発が重いから腕が軋む! 何発もまともに受けてたら腕が折れかねない!!


「アハハハハ! どうした紅蓮二君!? そんなものか!」

「チッ!」


 今の柳に隙がないから反撃しようにも反撃するきっかけが見つからない。クソッ、このままじゃ不味い!!何とかしねぇと!!






「あーはっはっはっ!! 楽しいなぁ!!」

「くっ!!」


 蓮二さんが今圧倒的不利な状況だというのは皆も分かっていました。馬乗りにされて一方的に殴られているのですから……。


「おいおい、ヤバくないか!? 紅の奴……」

「柳の独壇場じゃねーかよ!!」

「このままじゃ負けちゃうよ〜……」


 クラスの皆も蓮二さんの心配はしてくれてるみたいですけど、蓮二さんの勝ちを信じてはいないと見ました。少なくとも私やほんの一部を除いては、ですが……。


「なぁ橘さん? 紅の奴、大丈夫なのか?」

「藤木君……それ、どういう意味ですか?」

「確かに、紅は村田を倒したんだから強いってのは間違いない。だけどこのままじゃ不味いよ。柳の目が赤くなってるし」


 藤木君の意見は今の状態を見て、当然の事を指していると思う。蓮二さんは今、確かに不利な状態です。柳さんの目が赤いのも見れば分かりますが、どういう事でしょうか?


「藤木君、柳さんの目が赤いと何か不味いのですか?」

「ええ……俺は “大嵐闘” の時に柳の目が黒い時に殴られたんすけど、腕にデカい痣が出来る程度でした。でも、何時の間にか今みたいな目になって何人もの男たちを一発でねじ伏せていましたよ。その時にやられた奴らの中で骨折してるのは何人もいましたから」

「っ……! そうですか」


 柳さんと同じ中学だったとはいえ、同じクラスってだけであまり接点がなかったからそんな事は知らなかった。藤木君はあの乱戦の中で見ていたのならそれが嘘でないことは明らかで、蓮二さんがかなり不味い状況だというのは伝わってくる。

 でも――――


「私は蓮二さんの事を信じてます。必ず勝って、私たちの所に帰ってきますよ」

「へぇ……? 随分と信頼してるんですね、紅の事を」

「はい。蓮二さんが負けるところなんて、私は見たくありませんから」


 そうでないと、橘組 “若頭” としての名は地に落ちますからね。でもそれ以上に……私は蓮二さんの許嫁です。私が信じないで誰が信じるというのですか!

 私は大きく深呼吸してから、蓮二さんに声援をとばした――――


「頑張ってくださーい! 蓮二さーん!!」

「っ! おっしゃあああああ!!」

「おわっ!?」

『ええええ!?』


 蓮二さんが私の声援に呼応し雄叫びを上げながら、馬乗りになっていた柳さんをブリッジした勢いでぶっ飛ばしました。周りの皆さんも、それがありえなかったみたいだから驚愕しているが私は違う。寧ろ笑っていた。


「らあっ!!」

「ぶっ!?」


 蓮二さんはすかさず柳さんに対して拳を振り下ろし、見事顔面にクリーンヒットする。

 本来なら私としては蓮二さんが女の子を殴る所なんて見たくないけど、この学校じゃ仕方ないかと思います。あの “大嵐闘” でもそんな光景は幾らでも見てきましたからね。


「つぅ〜!? まさかあそこから抜け出すとは!中々やるじゃないかっ!!」

「そりゃどうも。にしても、だいぶイイ拳を貰ってしまったわ」

「嘘つけ! 殆どガードしておったくせに」


 蓮二さんは確かに柳さんの発言通り殆どの攻撃を防いでいたけど、何発かはモロに食らっていました。それにガードした腕が痺れている恐らくですが、蓮二さんの両腕はいつものように振るうことは難しいです。でも、蓮二さんからそんな不安を感じなかった。

 何故なら――――


「さぁ、続けようか……! 俺たちの喧嘩をよ?」

「っ!?」


 ニヤリと不敵な笑みを、蓮二さんが浮かべていたからだ――――

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