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高校生極道  作者: 華琳
プロローグ
1/63

始まりは突然に

『おはようございます!!!』


 数多くの男たちが、廊下を横切るたびに大声で挨拶をして俺に頭を下げる。それに対して俺は、いつものように返事を返した。


「おう……」


 俺の名は(くれない)蓮二(れんじ)。突然だが、俺は “極道” だ。しかも、末端の部下である “若衆” の一人じゃなくて “若頭” という立場にある。

 極道組織における “若頭” というのは “組長” の次に偉い立場だ。因みに、俺の家がそういう家系だから極道になったという訳ではない。昔、ちょっとだけ不良として名の知れた男ってだけだ。では何故、そんな俺が極道組織の “若頭” になったのかって?

 それは――――




(かしら)、親父がお呼びです」

「! あぁ、分かった。それで、親父は?」

「私の後について来てください」


 今、俺と話をしてたのは付き人の八坂雅人(やさかまさと)さんだ。銀髪のオールバックにサングラスをかけており、白スーツに黒シャツを着ている。

 この人は見た目が死ぬほど怖いが、実際は仲間思いのいい人なのだ。まぁ俺もようやく慣れてきたんだけども、最初の頃は怯えてたな……。ははっ、懐かしい。そう感慨(かんがい)深く思ってたら、いつの間にか奥の部屋の前に立っていた。

 先程雅人さんが口にした『親父』というのは、俺たち(たちばな)組の “組長” の事で、今から俺が会う人でもある。


「こちらです」

「ありがとう……。親父! 紅蓮二、ただ今着きました」

「おう、入れや」

「失礼します」


 スッと(ふすま)を開けて中に入り、音をたてないようにゆっくりと閉じる。そしてそこには威風堂々とした態度で胡座(あぐら)を組んで座って(ひげ)を生やし、黒の上下ジャージ姿の大男がいた。

 この人が橘組 “組長” である、橘隼人(はやと)だ……!


「ようきたな蓮二! まぁ、座らんかい」

「は、はい……!」


 いつもの事だけど、慣れないなぁこの人は。会う度に体から震えが止まらない。最初出会った時なんて俺は殺される! って思ったからな……。

 いや、嘘じゃないぞ? だってこの人、威圧感が半端ないもの。睨みを効かせただけで人を気絶させるとか人ができることなの? どこのマンガだよ! って、ツッコミを入れたからなぁ。勿論、心の中で!!

 そして親父と向き合う形で、俺は正座した。同じように胡座をかくなんて真似なんてできねぇ。例え二人きりだとしてもだ……。


「今日は、何のご用でしょうか?」

「なんや、えらい他人行儀やな? そんな風にせんでええんやで?」


 いや、アンタ怖いんだよ!! と口に出せるわけがなく、俺は口を(にご)すことしか出来なかった。

 普段はこんな風に気さくな人なのだが、キレた時は鬼神の如く怖いって雅人さんが言ってた。俺はまだこの人がキレた所を見たことがない。正直、見たくねーけどな……。


「それにしても蓮二……お前またデカくなったな?」

「え……そうですかね?」

「服越しでもワシには分かるわ。一回りもガタイが大きゅうなっとる」


 親父の言葉に疑問を抱いた俺は、自分の体をじっと観察するように見つめた。うーん……気にした事なかったから全く分からねー。けど、親父は何故かうんうんと頷いていたので、恐らくそうなのだろう……。


「おっと、すまん。話が逸れたな? 今日、お前を呼んだのは他でもない……。ワシの娘についてや」

「っ!!」


 そう……俺がこの組に入ることとなったキッカケは親父の娘さんにあるのだ。ここ最近は、俺が仕事に追われているせいで会ってないんだよな……。


「もうすぐ来るはずなんやが……遅いなぁ」

「親父! 連れて参りました」


 都合よく襖の先から雅人さんの声が聞こえてきた。え、何? まさか娘さん連れてきたのか!? 今日マジで何の話なの!?

 俺の内心は焦っていたがそれに構うことなく、襖が開かれ……!!


「失礼します」

「おぉ! よく来たの〜、神奈!」

「……」


 俺は、部屋に入ってきた彼女に目を奪われた。久しぶりに会ったというのに、言葉が出なかった。それ程に親父の娘さんである、橘神奈(かんな)さんが美しいのだ。

 輝くような白い肌に、左目の所に泣き黒子が一つあるのがチャームポイントだ。いつもはストレートの黒髪ロングなのだが、今回は頭をお団子にしており深緑の着物を身に(まと)っている。この人の普段の私服姿を俺は知っているからこそ、普段見たことのない着物姿の神奈さんに完全に見惚(みと)れてしまっていた。

 着物を着ると、素晴らしい二つの果実もちゃんと収まるんだなぁ。おかけでボディラインがくっきり見えるんだけど……って、何考えてんだ俺は!?


「蓮二さん……お久しぶりです」

「えっ!? あ、はいっ! お、お久しぶりです……」


 駄目だ。心臓がバクバクと激しく動いてやがる。何でこんなに緊張してんだよ俺は!? あの時は普通に話できてただろーが!? テンパってる場合じゃねーぞ!?


「さて、これで役者は(そろ)ったな」

「あの、親父? 今日はホントに何の話なんですか?」

「あー……ゴホンゴホン」


 親父が軽く咳き込み、部屋の空気が静まる。 一体何だってんだ? どんな内容なんだよ!?

 俺の心臓がバクバクと鳴り響くのを何とか受け止めていたその時! 庭にある鹿威(ししおど)しがカコン! と、響き渡り……親父の口が動いた!!


「神奈! 今日からお前を蓮二の “許婚(いいなずけ)” とする!! ええな?」


「えっ!? は、はいっ!」

「え?」


 い、今なんて? え、嘘? 

 俺の耳がおかしくなければ親父は許嫁って言わなかった? 許嫁ってあの許嫁だよね!? ちょっと意味違いませんか親父!? それに神奈さん、貴女も何で驚きながら返事したんですか!?


「それと蓮二! 明日から神奈と同じ高校に通ってもらうことになったから、よろしゅう頼む!!」

「へ? え……。ええええええっ!?」


 こうして俺、紅蓮二の……極道として、そして橘組の若頭としての高校生活が始まろうとした――――!!!

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