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死にたくないので本気でゲームクリア目指します  作者: のんびり+
チャプター1 ゲームスタート
1/4

セーブ01 ログイン

はい、どうものんびり+です。

二度目の連載です。

私自身未熟なので温かい目で見てくれると嬉しいです。


  ここは森の中なのか、辺りには無数の木々が静かに立ち尽くしていた。今は夜らしく、空を仰げば葉と葉の間から青黒い空と光の粒達が見える。

  そんな光景を一通り見て、俺は再び先程から抱えている疑問を思い返す。


「何で……俺はこんな所にいるんだ?」


  少なくても、俺が住む町にこんな自然に溢れた場所は無かったと思う。

  しかも、さっきから記憶が曖昧で過去の事を思い出せない。


「……まさか、夢遊病とかじゃ無いよな? それとも何者かに拉致られたか!?」


  ふざけた妄想が広がる中、俺は足元に落ちていたそれを見つけた。腰を屈めそれを拾ってみる。それは、説明書と書かれた一冊の白いノートだった。

  疑問で頭がいっぱいだが、俺は何となくページを開いてみる。

  “ようこそ、神無月優也かんなづきゆうやさん。この説明書をしっかり読んでゲームクリアを目指して下さいね!”

  冒頭にはそんなメッセージが書かれていて、下には目次らしきものが続いていた。

  それにしても、何故俺の名前がノートにあるのか。


  てかゲームクリアって……何かのゲームの説明書か?

 どうしてゲームの説明書がここに落ちてるんだよ。

  疑問が増えた。


  そして今更ながら気付いたが、今の俺の服装がどういう訳か燕尾服えんびふくになっていた。

  夜に燕尾服で独り寂しく森の中、オマケに意味不明な説明書……。

  一体何が楽しくて俺はこんな状況下にあるのか。そう考えると少しイライラしてきた。


 ――――そんな時だった。

  ズシン! と重みのある足音が聞こえたのは。


「……何だ?」


  音の方を向いて見る。

  足音は、等間隔にどんどんこちらに近付いて来るようで、音も次第に大きくなる。そして、足音は俺のすぐ近くで止まった。


  ソイツは、俺よりも二回り以上でかい体、人間とは思えない青い肌、肩に担がれたそれまたでかいこん棒、腰には動物の毛皮で出来たようなものを巻きつけている…………巨人だった。


  巨人の一つしか無い目が俺を捉えて動かない。

  俺は動けなかった。恐怖とかじゃ無くて、ただ頭が混乱してたから。

 そんな俺の脳内では、目の前の巨人についての考えが溢れていた。


  これは……何かのドッキリかな? そうだとしたら、きっと俺の驚きぶりに視聴者の皆様も爆笑間違い無しだな。

 ……それとも、これが噂のバーチャルリアリティってやつか! いやぁ最近の科学は凄いな。

  俺は一度深呼吸をして、目の前の巨人に話し掛けてみた。


「こんばんは、良い夜ですね。そんな薄着で寒く無いですか?」


  反応は無い。あったとすれば巨人の目が血眼になった事ぐらいか……。俺の頬を汗が一滴伝うのが分かった。


「む、無視は酷く無いですか?」


  笑顔を作ってそんな事を言ってみる……その笑顔が引きっているのが自分で良く分かる。

  一歩、巨人が俺に近付いた。俺は反射的に一歩後退する。

  そして……


「ア゛ァァァァァァァァ!!!!」


  爆音のような雄叫びと共に巨人はこん棒を振り上げ、俺に迫ろうとする。


  瞬間、俺は既に走っていた。一心不乱に、ただ巨人から少しでも離れる為に。









 ……どれくらい走ったかは分からないが、もう巨人の足音は聞こえなかった。


「助かった……」


  俺はその場に腰を下ろす。不思議と体に疲れは無く、大きな安心感が俺を満たしていた。


  そして俺は左手に何かを掴んでいる事に気付き視線を移す。掴んでいたのは説明書だった。また何となくページを開いてみる。

 ……ゲーム……。このワードが妙に引っ掛かる。俺は……さっきまで………………


「そうだ!!」


  やっと思い出した。曖昧だった記憶を。

  俺は神無月優也、高校三年生で今は夏休み中だった。

 それで今日は……そうだ、ゲームを拾ったんだ。買い物帰りに道に落ちてるのを見つけた。その光景は異様に不自然で、まるで拾って下さいと言わんばかりだった。パッケージも綺麗で見た事が無いゲームだったからつい興味が出て拾ったんだ。家に帰って早速ゲームをやろうとディスクをゲーム幾に入れて…………ここからが思い出せない。恐らく、記憶の続きが森の中での事だろう。


「って待て! 場面が飛びすぎだろ!?」


  思わず声に出てしまった。それもそうだ、家でゲームやってたらいつの間にか森の中。明らかに可笑しい。

  俺は溜め息を吐いた後、半分やけくそで説明書の続きを読んで見た。

 ページを捲ると、大きめにゲームのルールと書かれ小さめの文字が下に続いていた。

  “ゲームクリアの方法は、この世界で360日以内にお姫様と結婚する事です。また、期間を過ぎるとゲームオーバーと見なします”


「…………は?」


  疑問が口から出る。文字はまだ続いている。

  “もしあなたがこの世界で死んだ場合もゲームオーバーとし、現実世界のあなたも死にます”


「…………え?」


  また疑問が出た。

 今の俺はやけくそと言うより呆れた気分だ。

  俺は軽い放心状態のままページを捲った。次のページには何故か俺のプロフィールが書かれていた。

  “名前は神無月優也。この世界での魔王に該当する。種族は吸血鬼。身長は170センチ程で――――”

  俺の趣味から性格、身長までが事細かに書かれている。唯一気掛かりなのは、魔王と吸血鬼と言う謎ワード。


「……もう訳が分からん」


  疲れ果てた俺は、ペラペラと文字も読まずにページを捲る。最後のページを捲ると一枚の紙が落ちた。そしてページの最後には“ご武運を”と言うメッセージ。

  そこまで読むと、何故かノートが光に変わってあっと言う間に消えてしまった。

  だが、もうそんな事はどうでも良かった。

 今は何も考えたく無い。

 俺は無気力に寝転がる。


  葉と葉の間からは、青黒い空と大きな真円の月が見えた。





お疲れ様でした。





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