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なな話

なな


オルトの日常。ver.公爵領



オルトは定期的に自分の領の街に出かけ、その様子を視察する。


「オルト様、これは貢ぎ物でございます」


「うむ」


「オルト様、どうぞ私の貢ぎ物も!」


「うむ」


「オルト様、最近卸してくださった素晴らしい品質の竜肉です。ぜひご賞味ください」


「うむ」


オルト様、オルト様!オルト様オルト様オルト様オルト様オルト様ーーーーー


そして数十分後、その場からオルトが動く頃には、オルトの手は抱えきれない食べ物やお菓子で埋め尽くされていた。傍目、奇妙なバランスでそれらは積み上げられ、バランスを保つオルトの様子は、その器用さが垣間見えた。


また、そのまま無表情でそれらをもくもくと口にするオルトの表情は、彼を観察することに優れている者ならいつもより僅かに微笑みに近い形なことを読み取れる。


当然、市民たちはそれを分かってたくさんの食べ物をオルトに献上しているのだ。貢ぎ物という体面をとった感謝の印。オルトは向けられる眼差しに込められた思いに、気づくことはない。


いや、そもそも非公式でフラリと訪れた視察で、街の住民の8割近い数の人数がオルトの周りに整然と集合し、オルトの通行を妨げない程度にオルトを囲み、熱狂の歓声を挙げているのにも関わらず、自身は恨まれていると考えるオルト自身が異常なのかもしれない。














オルトの日常。ver.奴隷騎士団マムルーク



「行きます....オルト様」


「来い」


直後、常人の目には残像さえ残さないスピードで奴隷騎士団マムルーク総長イサベルはオルトに接近し、凄まじい速度で剣を振るう。


そのあまりの早さは、遠巻きに見ていたマムルークの団員達でさえ目で追うのがやっとだったり、視認すらできない者も多々いる。彼らはどれも一騎当千の猛者であるのだが、そんな彼らでさえこの有様なのだ。オルトもこれほどの速度で迫られれば、流石に気を引き締めないと危うくもある。


パシ


はずだった。


片手、ただそれだけで振られた剣が止められていた。親指と人差し指でしっかり剣は止められており、ビクともしない。


「オルト様.....まさか、さらに腕を上げられましたか.....」


「コツを掴んだんだ」


そうオルトが呟いた直後、既にオルトはイサベルの背後にいた。


「っぁ.....」


イサベルの反応は間に合わず、彼女の首筋にはオルトの剣が添えられていた。オルトの愛剣パトラッシュ四号。それは鋭く輝き、少しでも動かせばそのままイサベルの首を両断しかねない切れ味を秘めていた。


「....完敗です。まさか短期間でここまで差をつけられるとは....流石としか言いようがありません」


「いや、お前も腕を上げている。そこまで凹むものではない」


ザワザワ、流石はオルト様!!と歓声が聞こえる中、暗い顔をしたイサベルに、オルトは慰めの声をかける。本人にそれを指摘しても決して慰めとは認めないだろうが。


「いえ、主より弱い騎士など、本来あってはならないものなのです....」


「問題ない。イサベル、主は私であるとはいえ、お前が守るべきなのは妹であるメディアだ。そこのところを勘違いするな」


その発言でイサベルは不服そうな顔をするが、奴隷の首輪もあるので彼女は逆らうことができず、


「はっ、了解しました」


ただ、頷いた。


「あー......、それと強さに関しては気にするな。私は天才だ。お前とは格が違うんだ。比べるな。私は超強い。気にしたら負けだ」


「.......ありがとうございます、オルト様」


平坦な声で、やけに遠くを見つめながらのオルトの言葉。自然と綻びそうになる表情を必死でイサベルは整え、強く強く自身の脳に主の顔を刻み込む。彼女からすればこういった主の顔は珍しいのだ。少し目を凝らせば、恥ずかしがっている様子がオルトの表情から察せる。


オルトは、残念なことに対人能力は高いとは言えない。非常に計算高く優れた知能を持っているのだが、自分の感情を相手に伝えるのが不得意なのだ。コミュ障とまではいかなくても、それに近いものではある。


それをそれなりの長い付き合いから知っているイサベルは、微笑ましいものを見るような心情でオルトを見る。イサベルはオルトに忠誠を誓ってはいるが、それはアウレリウス公爵領民によく見られる狂信的な忠誠だけではない。オルトの完璧な才能と、欠点などの人間味を全部知った上で捧げられる忠誠であり、愛情だ。


そして、それを向けているのは何もイサベルだけではない。奴隷騎士団マムルークに所属している者男女関わらず全員がオルトを敬愛しており、言葉遣いは敬いながらもそれなりの親しみを持っている。


オルトは、奴隷に甘い。オルトの一人称は相対する人によって変わるのだが、他人に対しては俺となり、奴隷や義父や義母の前だと私になる。彼の本質は子供に近いのだ。だからこそ、好意を寄せる相手には鏡のように不器用ながらも好意を示す。無意識だが、一応オルトは奴隷たちの好意に気づいているのだ。


話は戻るがこういったオルトの感情により、奴隷の前ではオルトはそれなりに演技をしない素の顔が露見している。残念なことにオルトの素は子供っぽい一面ばかりなので、自然とそれを見るマムルークたちは親しみを抱いてしまうのだ。


(オルト様.....たとえあなたには及ばなくても、この剣、この身は全てあなたのために)


騎士は、忠誠を誓う。オルトはその忠誠の重さに気づかない。だから、いつかオルトがそれに気づかず計画通りにその命を散らした場合、彼らがどんな行動に出るかは.....きっと誰も想像できない。









オルトの日常。ver.どこかの街



もう、むり


つかれた。つちが、つめたい


おなかすいた。さむい


あいつのところから、にげた。じゆうに、なった


だけど、もうだめ。なにもたべるものがない。おなかがすいて、ぐらぐらする。ふらふら?もうわからない


「おかあさん....」


もうかおもおぼえていない。どんなひとか、わすれちゃった


「おと.....さん....」


おとうさんもおぼえていない。つめたい。さむい、さむいよ


ゆきがつめたい。ゆき、ゆき


ねえ、かみさま。たすけてください。おねがいします。いきたいです。まだしにたくない。いきたい、いきたい


くらい。だんだん、くらい。まっくろで、ふわーっとしたかんじ


......さびしいな



たすけて



だれか、たすけて




「生きてるか?」


....? なに?


「ふむ、意識はあまりしっかりしてないか。じゃあ、質問を変えよう。


生きたいか?」


いきたい?うん、いきたい。まだしにたくないよ


「しにたく.....ない.....」


「....了解した。安心しろ、死なせはしない」


ぼくはぎゅっとだっこされた。ねえ、ぼくきたないよ?きれいなふく、きぞくさんでしょ?いいの?ぼく、けがらわしいんだよ?


「大丈夫」


なでなで、きもちいいな。このひと、あったかい.....。おとうさんって、こんなかんじだっけ。もしかして、このひとがおとうさんなのかな?あったかい、あったかい.....








アウレリウス公爵領民

今日もオルト様のために働き、祈る。かつてのキリスト教徒の祈り、働けを体現した者たち。オルトにより対外への領の実態についてや、技術についての発言を制限されてはいるものの、それ以外は自由民と変わらない扱いを受けている。むしろ言論規制のことを除けば、この世界で最も裕福な暮らしをしている。


奴隷騎士団マムルーク

強さがおかしい軍団。三国志的に言えば、呂布とか関羽みたいな人だけで構成された軍団。そして、アウレリウス公爵領の悪評の根源。ここの忠誠心が高過ぎるが故に頻繁に暴走し、アウレリウス家にいらぬ偏見を植え付けさせる。


本人達はわりかし無自覚。一番やらかしているのは他国や教会が攻めてきた時の捕虜の扱いなど。オルトの悪口を言うやいなやすぐさまフルボッコにしたため、マムルーク=やばい⇒その主、もっとやばい。となった。


能力は非常に優秀なのだが、一言で言ってしまえばキチガイなヤンデレ集団。


イサベル

オルトがまだ幼い頃に拾ってきた奴隷の一人で、武術及び魔法全てにおいて非常に優れている。オルトにはあっさりとやられたが、この人一人で主要都市や要塞を陥落できるほど強い。最上位の魔人とも対等に渡り合える強さを持っている。一応美しい女性。


拾った子供

オルトが勘に任せて適当に歩いてたら発見した。男か女かはよくわからない。


最近のオルト

魔族の男を倒したことでレベルアップし、ステータスが上がった。なおかつ、魔族の男との戦闘で別体系の様々な技術をラーニングしたので、それを組み合わせ、非常に強くなった。


愛剣パトラッシュ四号

その名の通りオルトの愛剣四代目。初代からオルトに物凄く丁重に扱われており、剣身には初代から三代目の剣の金属が少し混ざっている。そういった長年の愛用の結果、四代目で密かに剣の大精霊が宿った。

嫌われってなんだっけ?

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