ろく話
ろく
アウレリウス公爵家の治める公爵領は国内一治安が良く、繁栄している。いや、大陸でも一番かも知れない。そう思わせるほどの素晴らしい場所だ。
しかしその反面、アウレリウス公爵領は大陸で一番奴隷が存在する場所である。この領地での農業のほとんどを奴隷がやったり、いくらかの奴隷が商工業などを営んでいる。風評としては奴隷は死んだような瞳で畑を耕しており、獣人などの汚れた民族が跋扈するおぞましい場所と噂されている。
なお、その大量にいる全ての奴隷の所有権はアウレリウス家当主、オルト=アウレリウスにあり、アウレリウス公爵領の奴隷は領の統治や領主について質問をすると揃って口を噤む。おおよそ、あまりにも酷な扱いにより、露見したら悪評を受けるのでそれを避けるために奴隷に喋ることを禁じているのだ、とその他の領民には解釈されている。こういった話を聞いている国王は、何度もオルトに改善の勧告をしているが、オルトは一切統治について改めることはしない。これにより、国王とオルトは非常に仲が悪い。
また、この場所は治安は良いながらも怪しげな宗教の考え方が市民に普及している。この世界で大きな影響力を持つアタナシウス教にとって、この場所はすぐさま焼き討ちにしても構わない忌むべき悪魔の土地という認識をされているのだ。
大きな政治的権力を持つ国王や、宗教権威を持つ教皇に毛嫌いされているこの領地がなぜ、ここまで栄えていられるのか。その理由は数多とあるが、一番の功労はオルトの組織した奴隷騎士団マムルークにある。
奴隷騎士団マムルークとは、オルトがいつ間のにか何処かから拾ってきた人で構成された騎士であり、紛れもない大陸最強の騎士団である。
オルトの直感は非常に優れている。彼が未だに賭け事で負けたことはないし、勘を信じて動いて物事が悪い方向に転がったことはあまりない。そのあまりにも優れた直感を用いて作られたのが、奴隷騎士団マムルークなのだ。
現在、世の中は混乱の時代である。多産多死が常識。いくつもの可能性を持った子供が大成する前に死んでいく。オルトはそんな中で英雄の素質を持った子供をどこからか拾い上げ、私兵として育て上げたのだ。その結果がマムルークなのである。
マムルークのメンバー達は奴隷であるが故にオルトには逆らえないし、命を救われたという非常に強い恩があることによって、士気、忠誠心が非常に高い、実力もずば抜けている凄まじい集団である。
以前何度か宗教組織や国王の陰謀で他国の軍隊からこの領地は侵略を受けているが、それらを全て破るほどこの騎士団は強い。
また、貿易という面でもこの公爵領は憎たらしいほど強い。どの領地よりもずっと安価で、品質の良い作物を大量に輸出しているがゆえに、輸出先の農家の作物の需要を奪っているのだ。
大量の安価かつ品質の良い作物が市場に溢れれば、市場の原理にしたがって自然と他の作物の値段は下がり、そうなれば当然農家の収入が減るので農業で食べていける農民が減る。
普通の善良な領主はその作物に関税をかけて、自身の領地の農民を保護するのだが、領民のことを気にしないような領主は進んでオルトの領地からの作物を輸入した。輸入の際の運送に掛かる費用を差し引いてもお釣りがくる位の安価なので、領主の笑いは止まらない。
領主はこの安価な作物を用いて農民の生活を崩し、農地を買い上げ、小作農を増加させ、自身の子飼いの勢力に大規模なプランテーションを行わせたり、囲い込みによる牧畜増進などを行った。
これにより農民の力が落ち、領主勢力が相対的に大きな力を持ったことにより、領主の支配はより盤石なものとなった。さらにその憎しみをオルト=アウレリウスに向けさせることができるのだから、領主からすればオルトは非常に都合の良い存在だった。
こういった事情により、農民の夜逃げが増えたり、都市に職を求めて人口流入が増えたり、危険職業である冒険者ギルドへの就職が増え、結果的に死者の増加が進んだりする。
※解説
冒険者の増加により簡単な依頼をこなす者が増え、そういったことによる依頼の奪い合い、それにより低賃金でも依頼を受けたいという者が増えて、依頼の低賃金化、これにより身の丈に合わない難易度の依頼に挑む者が増加したり、依頼者側の配慮が低下することによって死者が増えたということ。
魔王の影響がなければ魔物が刈られる速度が増える速度を越え、魔物の減少が進むので、もし時期が違えば依頼がさらに減少し、大変なことになっていたと言える。しかし皮肉なことに、職を無くした農民がなくなく冒険者をやることで、本来魔王の誕生で劇的に増加するはずだった魔物の数がそこそこで抑えられているという事実がある。
また、狩る魔物の量が増したことで、魔物から採取できる魔石の流通量が増え、必然的に魔石の値段が下落。それにより魔具の低価格販売が可能になり、魔具の民衆への普及、新たな魔具の開発がし易くなるなどの現象が起きていることも忘れてはいけない。
さらに都合の良いことに、本来下級な魔物の魔石は蓄積魔力が小さく、これを採取したところでまともな使い道などないのだが、賢者と呼ばれるとある研究者が、魔石を合成し、より蓄積魔力の多い高品質な魔石を作る機械を発明したことにより、質の悪い魔石にもそれなりの値段が付けられるようになり、今まで高価だった魔石の値段を下落させた。これは下級冒険者の生活の大きな助けとなった。
高位の魔物を刈らなければ手に入らなかった魔石が、人海戦術によって得られた下等の魔石を数千合わせることによって製造できるのだ。必然的にこの高価な魔石を用いて作っていた製品の値下がりが起こり、中級冒険者にも手が届く値段となる。これらが冒険者勢力の強化に繋がり、また新たな魔具の開発に繋がった。
冒険者が増えたことで、武器防具、魔具、薬品などの需要が増し、結果雇用が生まれたおかげかアウレリウス公爵領の農作物が流入したことによる大規模な社会的混乱、貧困問題は起こっていないが、それでも結構な社会的混乱を現在進行形で引き起こし続けているので、アウレリウス家はかなりの者に恨まれているのは確実だろう。
強く、栄え、怪しく迷惑な謎の領地。それこそがアウレリウス公爵領の他からの認識だった。
奴隷騎士団マムルークの朝は早い。
まず朝早く起き、騎士団で内密に作製されたオルトの像に祈りを捧げる。像が超希少金属のオリハルコンで作られていることから彼らの本気度と信仰心が伺える。
朝の訓練をし、朝食をとり身だしなみを整える。そしてまた彼らは午後まで訓練をする。
そして午後からは彼らは能力に応じて各自別行動に移る。
戦闘力の高い者は領内の警備や魔物の討伐を行い、魔法の使える者は領の整地を行う。具体的な面では畑の開墾、道路、水道管の整備などが主な仕事である。
畑の開墾や道路、水道など、こういったインフラは地属性の魔法で築かれることから、この世界のインフラは近代並みに発展しており、なおかつ地属性の魔法使いが多ければ多いほどインフラを整えることができることから、領地の豊かさの指標の一つとして、地属性の魔法使いの多さが数えられるほどだ。
マムルークの地属性魔法部隊は連携して道路工事を進めたり、火属性魔法部隊と合同で森を焼いて開墾を行ったりする。また、その別の場所で自然属性魔法部隊が計画された場所に植林をし、成長促進の魔法で別の場所に森を再建など、アウレリウス公爵領は毎日が忙しい。
そして日没と共に食事、入浴などを交代で行い、その後は自由な時間となる。これが主なマムルーク団員の一日である。なお、領地の警戒に空白期間を作らないため、交代で朝や午前、夜などに領地をパトロールしたりする役目もあり、領内の治安維持に抜かりはない。
解説するが、領の繁栄の大きな一因となっているのがマムルークの開墾、インフラ整備作業等である。
ここの魔法使いの優秀さにより新たな畑の開墾が容易となり、多くの土地が畑として使えるようになって、大量にいる奴隷に畑の割り当てができたり、流通のための道路や治水工事が魔法によって短期で労力少なく行われたりする。
ここから領全体の収入が増え、財産の再分配に気を遣っているオルトによって、農民層だけではなく商工業者たちもその恩恵を預かり、豊かな生活ができる。さらに農民の多くが生産者として機能すれば収入がさらに増え、結果より豊かになる。これにより市民全体に経済的及び心理的な余裕ができることとなるのだ。
アウレリウス家公爵領は、社会主義的な統治をしている。
地球の世界史では中々成功することが少ない社会主義だが、統治者として圧倒的なカリスマを備え、技術革新を機関銃の如く乱発させる優れた開発力を持ち、神がかった直感と天才とも呼び得る知謀を持ったオルトを筆頭に行われる政治は、オルトが暗殺でもされない限り失敗することなどあり得なかった。
さらにこの領内には、マルケー教という宗教が普及しており、社会主義的な思想と唯一神の存在を織り交ぜた教えにより、オルトの望む方向に領民の思想をコントロールしていた。
マルケー教の教えは、単純にいえば神の前に人は全て平等であるから差別は止めようね、といったものだ。
この教えはオルトに大量保護された獣人達に熱烈な支持を受け、人種にはそれなりの反感を生んだが、マムルークで働く獣人などの働きにより能力面での差別はなくなり、心理的な面では領内で獣人との交流をすることで、領民の差別意識は薄れていった。
また、この宗教の教えの一つに、唯一神が作り出した普遍的な法則を見つける、というものがあり、それを用いて自身の生活の質を高めることは神に近づく、神への忠誠を示すこととされ、多いに公爵領で推奨されることとされた。
この神の作り出した普遍的な法則を見つけ出すこと、それはまさしく地球的な言い方をすれば自然科学であり、公爵領においての神学者は、地球において科学者と呼ばれる者と同等だった。
※例。[アウレリウス領]唯一神の第七法則=[地球]万有引力の法則
これにより、公爵領において科学技術が盛んに研究され、領民を栄えさせる一つの要因となった。また、獣人、人間その他種族関係なく公平に起こる科学的な現象は、唯一神の存在を確かに感じさせるものとなり、より深い宗教への傾倒、人種差別の撤廃に繋がった。
さらにマルケー教はその宗教の基本理念の一つとして、現代日本人が思い描くような理想的な道徳を絶対神の名の下に守ることを厳格に義務付けられた宗教だ。他者の幸福を害することは大罪の一つとされ、他者の幸福を保証することで自身の幸福も他者に保証される、情けは人の為ならず。そんな譲り合い精神で自他共に幸福となることを是としたのだ。
地球世界の現代人からすれば非のうちどころがない理想的ともいえる宗教だが、この世界にとってこういった宗教は異端であるので、その他の宗教とは一切相入れない。
よってこの宗教が市民、奴隷共に完全に普及している領地を治めるアウレリウス家は、全方位に敵が非常に多いのだ。
話は戻るが、この宗教ではお金を使い、物やサービスを購入することは購入した相手を助け、またその助けられた者がそのお金で他の物やサービスを購入し、またさらに他の誰かを助け、結果幸福が循環する....といった経済学的な教えも含まれているので、ケチは良いことではないと見なされているのだ。
これにより、領地の住民は遠慮なく様々なことに金をつぎ込む。貯金をする心理というのは、将来への備えという不安からくることが多いが、圧倒的オルトのカリスマが民衆の将来への不安を抑制するので、民衆は遠慮なく散財することができるのだ。よって、金の周りが早い経済は非常に発展する。
マムルークが作り、宗教が円滑に回して領を豊かにする。これらがまさしくこの領が国内一豊かな領となった要因の一部だ。
そしてさらにこの領地を豊かにしているのは、超先進的に発達した技術だ。
農業、工業、その他諸々、ここの領地の人たちの扱う技術は既存のそれを遥かに上回る。地球の世界史に当てはめるならこの世界の平均的な技術が中世ヨーロッパ後期ほどに対して、この領地に普及する技術はおおよそ一部現代と同等レベルまで発展していると言ってもいいのだ。
例を表すなら農民が三圃式農業をやって、牛に畑を耕させているのの対し、アウレリウス公爵領農民は魔導科学で作られた車両によって畑を耕し、魔力によって効能が上昇した魔導肥料をばら撒いている感じだ。また、ビニールのようなもので農地を多い、空調をきかせ、季節関係なく作物を栽培する方法も導入されており、魔導科学ライトによって光合成を起こし、地下や建物内で作物を育てる実験も行われている。
※三圃式農業とは中世ヨーロッパの時代に考案され、農地を冬穀・夏穀・休耕地(放牧地)に区分しローテーションを組んで耕作する農法である。農地の地力低下を防ぐことを目的としており、休耕地では家畜が放牧され、その排泄物が肥料になり、土地を回復させる手助けとなった。
さらにこういった技術、つまり農業機械などで作業を効率化させることは、農民奴隷たちに時間のゆとりを生み、それを埋め合わせるようにオルト及びマルケー教が推奨している学問を学ぶことは、領民全体の学力、知力を向上させ、領地の発展へ繋がる。
またさらに、オルトが金属活字の印刷技術を確立させたので、領民へ本が広く普及し、小説や学術書、その他様々なものが領民の知識として広がり、一つの文化を築き上げていた。
技術漏洩に問題がないと判断された小説などは、他の領や他国に輸出されたりされ、一大ブームを生んだりした。
宗教についてさらに詳しく語ろう。奴隷たちにとって主オルトは奴隷的な意味での主人でもあり、また宗教的な意味でも絶対的権威を持っている。
絶対神の化身、アヴァターラ。これはマルケー教において、治世が乱れた時に民衆を助けるために現れる、救世主の役割を持つ現人神のことを指す。
領民はそれこそがオルトだと信じて疑わない。オルト自身もそういった意図を持ってマルケー教にそういう存在を作り出したので、それを否定せず、オルトは自身の話をよく聞く領民になって欲しいなー程度にこのことを考えていた。
実際、その予想に反して、領地の民はオルトが命令すれば喜んで命を捧げるほどオルトを狂信している。ついでだがオルトはその領民の実態に気づいてない。ある意味昭和の善良な日本市民と、天皇陛下のような関係が彼らには築かれている。
技術漏洩のことについて語ろう。技術体系が地球は科学一辺倒に対し、ここの領地では科学と魔法を応用した魔導科学が一つの学問として大成している。その様子はもはやここの領地だけ別世界と言っても過言ではない。だが、技術の公開はオルトが奴隷たちを操り、時にマムルークも駆使して完全に情報の伝搬を抑えている。わざわざ情報秘匿のための技術や記憶消去の魔法を開発し、駆使してまで、オルトは全力で技術の秘匿に徹底しているのだ。
さて、ここで一つ問題となるのがオルトの奴隷以外の存在の扱いだ。
この領地ではオルトの奴隷以外の存在はいるが、数的にはほとんどが奴隷だ。実質的な楽園ではあれど、悪評は凄まじいのであまり誰も寄り付かないのがアウレリウス公爵領なのだ。
しかし実際、詳しい実態は知られていないのがこの領地の特徴の一つだ。以前、国や教会の諜報機関がここの領地の実態を知ろうと何度かスパイをおくったりしているが、全て領地への侵入は失敗している。
国王も教皇もこれ以上農民や逃亡奴隷の流入により、アウレリウス領が力を付けるのを恐れているのか、プロパガンダとして根も葉もない噂を幾つも流し、わざとアウレリウス公爵領のイメージを低下させる戦略をとっている。
そのせいか、だいたいここに来るのは夜逃げして最後の望みにかける小作人や奴隷たちが大半である。
アウレリウス領に足を踏み入れただけで教会や国に目をつけられるので、基本よほど切羽詰まったものでもなければこの領地には入らない。そして、切羽詰まっている逃げ込んだ小作人や奴隷たちは、たいてい様々な保証をされているオルトの奴隷となるので、領の情報が漏れることはない。ある意味完璧で、完全な情報統制である。
しかしここに僅かな奴隷以外の存在が穴となるのだが、オルトはそれを許さず、奴隷ではない人物には約束厳守の魔法【契約】を結ばせた。
内容は単純である。領のことについて話せない。話そうとしたらその記憶は消滅する。
アウレリウス領に入った人々は選ばされるのだ。奴隷か、契約か、それとも死か。
アウレリウス領についての解説を続けよう。
アウレリウス領の教育は、知識共有の魔法をオルトが既に開発しているので、大半の領民はそれなりの教養を持っている。教育機関も充実しており、前述したような宗教的理由の勤勉さも持っているため、学問に対する発展も半端なものではない。
これにより領の文官も充実しており、戸籍や税金計算に関しても完璧である。また、国に年に一定の税金を治めることで特許状をもらっているので、この領地は王の干渉を受けない半ば自治領のようになっている。不輸不入権。オルトは領地への王の立ち入りも拒否することもでき、領内においては王よりも偉い。
世界で異端といってもいいほど先進的な場所、アウレリウス公爵領。これの骨組み、肉付けの大半に関わっているのがオルトである。
オルトが立ち上げたこの領地独特の宗教の戒律には、先ほど述べたような絶対神の下の平等というものがある。これは全ての存在は絶対神の前には矮小な存在だから、みんなほぼ似たようなもの。だからみんなで仲良くしていこう、というような意味合いで決められたものだが、ここには一つ大きな穴がある。
もし本当に平等を求めるのなら、オルトが行っている技術の秘匿はこの戒律に大きく反する。この領の技術が全世界に普及したなら、世界は一気に良い方向に変革するのだ。宗教的に絶対神の下の平等を掲げ、種族関わらず恒久的な平和が理念の宗教としては、オルトの行動は大きく教えに反している。
これはオルトがあえて作った穴であり、弱点だ。いつかこれを指摘し、自分を弾劾する存在が現れた時、この行動はオルト自身を悪たらしめる最高の汚点となる。奴隷はこういったことがあろうと主に対しての反逆はできない。
だからいつか自分が討たれ、彼らが自由になった時、その汚点を指摘し、自分たちを自由にしてくれた相手を次世代のアヴァターラとして認め、その者は大きな宗教的権威を得るだろう。と、オルトは予測している。
これはオルトの計画。いつか自分を討ち、この技術の全てを全世界に公開した時、その立役者は歴代で至上の聖女となれるのだ。
オルトの計画は緻密である。しかし、天才であるオルトの唯一の欠点がこの計画にあるとするならば、領民の心を、忠誠を、確実に読み間違えていることだろう。
オルトの認識では、自分は領民に恨まれているという認識だ。だが、違う。決定的なまでに、違うのだ。
賢者の魔石合成機
賢者はオルトの以前の魔法の師匠。ある日謎の機械の設計書が机の上においており、試しに作ってみようとしたことを切っ掛けに魔石合成機が誕生した。
アウレリウス公爵領
ぼくのかんがえたさいきょうのりょうち。作者の妄想とオルトのチート設定により生み出された色々とおかしい場所。魔法効果により、一部技術は現代日本すら上回る。オルトの義父セラスや妹メディアなどは現在学園がある王都の別荘で生活しているため、この領の惨状を知らない。穀物や野菜などの余剰生産物が毎年大量に出るため、様々な場所に安く売って現地の農民たちを困らせている。そこから困窮した農民たちを奴隷として買い取るということも行っており、普通にえげつない。
しかし、その分鉱物、その他ゴムの木や石油などの資源をそれなりの価格で輸入していたり、魔導機械を用いて大量生産した安価かつ良質な武器を他の領へ輸出したりしないなど、それなりの思いやりはある。
また、他の人からすればすぐ燃える上に、火がついたら中々消えないドロドロの液体や、使い道のよく分からない謎の金属、不思議な木などを高価で購入してくれたりすることは、とても不思議に思われていたりする。
また、現在オルトの空間魔法開発により、新たな魔具が誕生し、技術革新の真っ最中。領の要所それぞれに空間転移の魔具が置かれ、交通、流通が非常に便利になった。ただし遠距離移動用の魔導車両などの需要が下がっており、その職人たちは別の魔具を作ることとなった。知識共有の魔法が無かったら実は大量の失業者が出ていた。
オルト=アウレリウス
今まで毎日風属性の魔法でジェット気流に乗って王都へ行き、走って帰ってくるという登校を続けていたが、最近空間属性の魔法を開発したので登校が楽になって喜んでいる。余った時間で新しくお花観察の趣味ができた。最近は花に精霊が宿り、やけに懐いてくる精霊の存在に困惑している。
内政を詰め込もうとした結果。みんなも世界史と経済を学ぼう!