よん話
よん
赤光が弾けた。
ズドォォォンンンンンッッッ!!!!
凄まじい爆音。
「おそいっ」
ドゴォォッッッ!!!!雷が落ちたかのような打突音。
「ぐふっ.....!!くそっ!」
数キロメートル、大地に一直線のラインを引くように吹き飛ばされた翼を持つ魔族の男は、喀血しながら自身の魔力を全開にする。ドォンッ!爆音と共に高密度に圧縮されたエネルギーが魔族の男の周囲を吹き飛ばし、一つのクレーターを形成する。
ごうごうと魔力の波動が嵐に等しい強風を巻き起こす。同時に数多の魔法陣が展開され、空を埋め尽くすほどの魔弾の弾幕が迫り来る。
「......」
閃光。高速の飛翔魔法と、一瞬で放たれた数百の剣閃。
「なん....だと.....!?」
魔族の男の前にひらりと一人の人間が舞い降りた。
「もうおわりだ.....かんねんしろ」
全身に数々の重傷を負っているようだが、彼は透き通るような無表情で淡白に告げた。
「おまえのうごきはすべてみきった」
彼、オルト=アウレリウスはいつもと違うどこか空っぽのような、空虚な印象を受ける無表情をしていた。初めて見る者には違和感を与えるかもしれないが、これは彼の本質。また、その表情は下手に自分を取り繕う余裕もないほど、今回の敵は強いという事実を示していた。
「くっ.....仕方がない....か」
オルトは幾つもの激しい攻防の末、ついに魔族の男を追い詰めた。しかし、諦めたようにふぅっと息を吐く魔族の男にオルトの直感は逆に警鐘を鳴らした。
「お前の力は魔族には危険だ。今のところ唯一、貴様の刃は魔王様に届き得る」
淡々と告げる魔族の男の様子に、オルトの直感は最大級の警鐘を鳴らす。オルトはすぐさま魔力を練り、トドメを刺そうとした。
「だから、この国もろとも貴様は必ず殺す」
自爆。男の魔力が極限まで膨れ上がり、そして爆ぜた。
集束された魔力は魔族の中でも最上位のものであり、男の言葉通りこの国の領土をそのまま焦土にするほどの威力だった。
が、
「なっ、ぜっ....?」
最期に、魔族の男は純白の魔力を纏ったオルトを見た。男が放った魔力は全て不自然に、唐突に掻き消された。白い魔力が辺りを満たし、幻想的に景色を彩る。そんな中、魔族の男はその現象にとある答えを見つけた。
「その力っ...貴様.....は、いゃ....ぁなた、様は.....」
ーーーーーー。魔族の男は呟いて、灰となって消えた。
「よかった.....いきていたのですね.....?」
オルトは男の最期に聞き取った言葉を復唱した。少しの間思考を巡らせ、その言葉の意味を考えた。
「.....どうでもいいか」
妹には関係なさそうだしまあいいや。と脳内で結論付けたオルトは、ふと襲いかかってきた体の痛みに少しだけ顔をしかめた。いや、顔をしかめただけで済んでいるのは彼だからなのかもしれない。
現在、オルトの全身は血塗れであり、いくつもの骨が折れていて、内臓にも甚大なダメージを負っている。まさに怪我の見本市のような状況。これでもなお彼がいつも通りの無表情を貫き通せるのは、彼のその歪な精神性故なのだろう。
無言で回復魔法を展開し、オルトは自身の身を癒した。そしてふと彼の気が緩んだ刹那、
くるるるぅぅぅ。オルトの腹が空腹を訴える音がした。白い魔力がゆっくりと空に溶け、オルトは気を抜いたようにため息を漏らす。
「.....おなかすいた」
先代勇者の日記
異世界に来てから××日
素晴らしい出会いをした。私は今、最高の宝物と、いや唯一無二の運命と出会った。
初めて彼女と出会った時の彼女の印象は、伽藍堂のような空虚さだった。虚無、その言葉をそのまま表したかのような彼女の雰囲気。私は彼女から目を離すことができなかった。一目で虜にされたのだ。
真っ白な髪に、真っ白な瞳、真っ白な肌に、全てを白く染め上げる美しい白の魔力。惹かれた。どうしようもなくその全てが私を惹きつける。
私は彼女と対話し、友好をはかった。人生で初めて、自分から人と仲良くなりたいと思ったのだ。前の世界もこの世界も、性根が腐ったような人間しかいないのだが、彼女は違う。
『あなたはだれ?』
この日記を書いている今でも思い出せる、彼女の声。声量は小さくも、しっかりと響くその声は私が彼女に抱いたイメージと同じように、透き通った美しい声だった。
今日は別れてしまったが、彼女の特徴的な魔力の波動は覚えた。きっと、明日も会える。ここまで明日が待ち遠しくなるのは子供の頃以来だ。早く、彼女に会いたい。
異世界に来てから※※日
彼女はどうやら魔族なようだ。信じられない。魔族にも彼女のような者がいるとは思いもしなかった。彼女から聞いたが、彼女は魔族でも少々特殊な種族の者らしい。
ヴァニタス族。種族の特徴をまとめると次のようになる。
・全てを消し去る虚無属性の魔法を使える。
・虚無の魔法を扱える代わりに、自我が極めて薄くなる。端的に言えば行動が幼い子供のようになる。
・自我が薄いからといって感情も希薄というわけではなく、喜怒哀楽はしっかりある。しかし基本は無表情で、あまり何を考えているかは読み取れない。なお、非常に精霊との親和性が高い。
・直感に非常に優れる。しかし万能という訳でもないらしく、物事の判断基準がまだついていない幼児などはその直感をあまり発揮しないらしい。
・基本的に才能、潜在的な魔力、その他諸々、あらゆる物事に秀でている。知性は低いので、ほぼ全ての物事をセンスで補うらしい。
・性欲はあまりないが、それ以外の一次的な欲求は強い模様。特筆するのは食欲。現代の調理法を用いて料理を作ってあげると、彼女及びその家族たちはすぐさま懐いてくれた。
・基本的に見た目が幼く、一番老齢を重ねたものでもせいぜい15歳程度の中学生くらいにしか見えない。なおその人の年齢は1000を超えるらしい。
改めてまとめてみると驚くべきことばかりというか、彼女が非常にユニークな種族だということが分かる。
いや、彼女の集落に訪れれば分かるのだが、現状、どうにも幼稚園や小学校などにいるような気がしてならない。蝶々を追いかけてる少年や、花を摘んで遊んでいる童女。見知らぬ人が来ただけで無表情ながらも何々?と好奇心をむき出しに寄ってくる無邪気さ。あまりにも純粋すぎて、なんだか心が洗われるような錯覚すら覚える。
ひとまず今日の日記はここでしまいにするが、最後に一言書くなら、私は彼女に出会えてよかった。
魔族の男
魔王軍の中でも生粋の武闘派であり、実力者。序列も五本指には入る。ラスボス前の中ボスクラスの実力を持つ。
オルト=アウレリウス
変身は二回残ってる人。本気→白い魔力が出る。全力→???。なお、幼少期の影響もあって食べ物への執着は強い。
先代勇者
ロリコン。日本から呼び出された勇者。日本では高校生にして数々の特許や発明、その他学会への影響力、経済力など、あらゆるものを持った凄まじい人。世界的に有名どころかたった一人で人類の技術を一世紀ほど発展させた天才であり、繰り返し言うがロリコン。
彼女
謎のロリ少女。いや、幼女。見た目は保育園の年長くらい。ヴァニタス族の魔族であり、精霊と戯れていたら犯罪者に目をつけられた可哀想な幼女。
たまに合法ロリなキャラがお母さんの話を見ると、どうやって子供産んだんだろう?という疑問に襲われます。やっぱりコウノトリさんなんですかねぇ?