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じゅういち話

じゅういち


「.....」


ふぁ...と、オルトは木の上であくびをした。


彼の視線の先には、フィランド王より課さられた試練に挑んでいる勇者達がいた。


(......連携込みで、下級魔人くらいか)


オルトは勇者達の戦力分析をしながら、今後のことを考え、そしてため息をついた。


(.....あと十年ほどあれば魔神討伐の戦力となり得たかもしれないが....期待はできそうにないな)


思考しながらオルトは自分が乗っている木になっている木の実をとり、何となく美味しそうだと思ったらしく、パクパク食べていく。


(....しかし、あのナタリー=バルテアだったか?中々強い上に、見たことがない魔法を使っているな。それに、なんとなくだがまだまだ隠し玉がありそうだ。それにあれは信仰から生まれる概念(イデア)より、理論的な概念(イデア)を用いた魔法だ。領地の者以外に普遍法則を調べている者は少ないはずだが....調査が必要だな)


肩や近くの枝にいつの間にか止まっていた鳥たちにも木の実を分け、オルトは満腹感から満足げに息を吐いた。


(しかし、あの魔法は非常に勉強になる。身体全体に細かく魔力を配分し、より一層身体強化の効率をあげる。しかしあれは....細か過ぎる。普通の知覚ではあれほど細かくはできないはず。ふむ、帰ったら人体の成り立ちを調べ、人体についての知識を上げる必要があるな。死体....できるだけ新鮮なものがあるといいが)


オルトはそう思考していると、ふと妙な気配を捉えた。


空間魔法を発動。オルトの姿が消え、肩や頭に止まっていた鳥たちが驚いたように羽ばたき、体重がかからなくなったことで木の枝がビョンビョンと揺れた。













「? 何者だ貴様」


魔族の男は目の前の存在に警戒の色を滲ませる。


ダボっとした黒い服に、仮面を被った怪しい人物。魔族の男は潜入任務でここに来ているだけに、目の前の人物は即刻殺さなければならないと思い、自身の能力でアンデッドを召喚する。


「.....」


仮面を被った人物....オルトは襲いかかってくるアンデッドの実力を確かめるように、力を抑えて剣を振るった。


スパッスパッと、アンデッドの体に剣が触れた瞬間、アンデッドは真っ二つになった。


オルトは仮面の中で目を見開く。


握った愛剣が、自慢げにブルブルと震えた。


まかせて


「.......」


自身の愛剣の様子に、最近やけに自我が明確になってるな....とオルトは感心した。


(実力はそこそこだが、武器の性能がとんでもない。いや、それだけか?)


魔族の男はそう思考し、さらにアンデッドを複数召喚。先ほどより一段階強いアンデッドたちがオルトに襲いかかる。


「......」


無言で剣を振るうオルト。次はアンデッドたちも剣の性能を警戒したのか、剣を回避することを心がけ、最初のアンデッドが真っ二つにされてる間にオルトとの距離を急速に詰める。


「がぁぁああっっ!!!」


アンデッドが爪でオルトを攻撃する。オルトは横薙ぎの爪の攻撃をわざとギリギリで後方に跳んで回避し、余裕がないように振る舞いながら反撃で剣を振るう。


再び一体のアンデッドが真っ二つになった。


しかしその間にオルトを囲むようにアンデッドは動き、四方八方から一斉に攻撃する。


「.....っ」


まるで追い詰められ、起死回生の一手をうつような様子で、オルトはアンデッドの股下をくぐり抜けるスライディングで攻撃を回避。


ザンッ


また一体。オルトはアンデッドを切り裂いた。


(アンデッド一体、だいたい下級魔人より下程度。まだ何かある気がする。もう少し力を引き出させないとな)


「.....やるじゃないか。ならこれでどうだっ」


アンデッド達に高密度な魔力が降り注ぎ、一気に膨張するように体格が変わる。


これが全力か。オルトは直感し、背を向け逃亡する。しかし逃がさないとばかりにアンデッド達は一斉にオルトに襲いかかる。


ザシュッ!!


アンデッドの爪により、背中から深く切り裂かれたオルト。苦し紛れにといった様子を演じながら、オルトは煙幕を張る魔法を行使。そのままオルトは空間魔法で消える。


「ふん.....逃げたか。まあ、あの毒に人間が耐えられるとは思えん。いずれ死ぬだろう」


追跡用のアンデッドを魔族の男は放ち、任務を続行する。それを少し離れた場所からオルトは見ていた。


「痛い」


ぐすん。と少し涙目になりながら、オルトは自身に解毒と回復の魔法をかける。


オルトが手加減した理由。それは過度な脅威を感じさせては、魔族の男が退却してしまうからといったものだった。


オルトはそろそろ勇者たちに上位の実力というものを知って欲しかった。そういった理由から、オルトはあの魔族の男がちょうど良いものと判断したのだ。


魔族の男の底は見えた。勇者たちがピンチになったらオルトはこっそり介入する気でいた。今回の光剣を巡る騒動は、まだオルトの計算通りに動いていた。

























「拳神」


「なんだ」


「少し勇者たちの様子を見てこい。なんだか誰かの手の平の上で転がされているような気がして、癪にさわる。たぶんその周囲にお前が気にいる者がいると思う」


「ほぉ、それは面白そうだ。それじゃちょっと行ってみるとするか」


























(ひとまず、今回の光剣騒動の裏で起こされた、オルト様vs謎の男のエピソードでオルト様が虚無魔法を使って戦うところを見れば、みんなのオルト様への印象がガラリと変わるに違いない)


(今回の件でオルト様の素顔を見せて、勇者たちにオルト様との和解の一歩を踏み出させるんだ)


(あ、でも確か山が一つ消し飛ぶんだっけ?安全に見学できるかな?)




















(.....何か嫌な予感がします)


ピクリと、猫耳が震える。リナリアは反射的に北西の方向に顔を向けた。偶然にも、それはオルトがいる方角だった。


リナリアは走り出す。嫌な予感という非常にあやふやなものに任せての疾走だが、何故かリナリアには確信があった。


(待っててください。今行きます)
































「どうほうの、けはい?」


「ふしぎ。こきょういがいの、どうほう」


「どうして?」


「たしかめる、べき」


「おおきい、きょむ」


「ここまでとどく」


「とてもおおきい」


「みねるゔぁ、いらい?」


「みねるゔぁより、おおきい?」


「あぶない」


「こころ、もたない」


「ときはなってはいけない」


「いかないと」


「まってて」





飛び出す、真っ白の童女。


彼女の名前はジェノバ。ヴァニタス族の魔人であり、


ヴァニタス族最強の強者である。

フラグ、たくさん

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