第14話
山岡さんと食事の約束をしていた私は今ものすごく後ろの視線が気になっていた。
それもそのはず、今日私にロッカーで話しかけてきた、私がよく知ってるあいつなのだから。
「小川?どうかしたか?」「いや、何でもないです。」あいにく、山岡さんは気が付いていないようだ。
私はあいつにどういう風に話しかければいいか考えていた。
「・・・なあ、小川」このとき、私は山岡さんに声をかけられたことに気が付かなかった。
私は反応しなかった。すると、山岡さんは私の顎に手を伸ばして無理やり私の顔を自分のほうに向けた。
「なあ、せめてさ、俺と二人きりでいるときくらいは俺のほう見ろよ。美咲。」
不意打ちだった。きゅんとした。私の目から目を離さないようにしている山岡さんは私の心を見透かしているようだった。
「ご・・ごめんなさい。少し考え事してて・・・。」そう言ってうつむいた私に山岡さんは軽くため息をついた。
「どうせそんなことだと思った。じゃないと俺の話聞いてないとかありえないやつだもん。美咲は。
それで、考え事って?」
山岡さんは私にそう尋ねたが、私は答えられなかった。だって、あいつがいるだなんてたったそれだけのことで話を聞いていなかっただなんて呆れられる。絶対に。
私がだまって下を向いていると山岡さんは私の頭にそっと手を置いて数回頭をポンポンした。
「まあ、話したくないなら無理にとは言わないよ。でも、我慢はするなよ?お前が一人で苦しんでるところなんて見たくないからな俺は。」
その言葉を聞いて私は少し心が痛かった。すでに我慢していることがある。山岡さんに内緒で。
言ってしまおうかと思ったけれど、私は自分に言い聞かせた。「山岡さんに甘えちゃいけない。強くなるんだ。」と。
そうしてあいつのことなんか少し忘れて私は山岡さんとの会話を楽しんだ。
食事も終わり、店を出ようとしたところで思い出した。あいつの存在を。
「あの、山岡さん、お店を出る前にちょっとお手洗いに行ってきますね。」
そう言った私に山岡さんはわかったと軽く返した。
お手洗い行く道の途中。あいつがいるところへ直行した。
そしてあいつの前に仁王立ちした私は横腹に手のひらをついて声をかけた。
「何してるの和美。」そう、私を観察していたのは和美だった。
私に声をかけられて焦りに焦った和美を私は問い詰めるのだった。