Detarmination 「ヒメル・フリードブルク」
舞台設定⑥「D・PRG」
Dimension Proguramの略で恭弥達が学んでいる科学技術。C原子に働きかけ様々な現象をおこすが、安全装置に引っかかる事は出来ないようになっている。多くの場合、処理速度を速くするためコンパイラ言語(C/C++など)が用いるがインタープリタ言語(JavaScript、Perlなど)を使うこともある。初心者ならそれで十分だが、当然研究者やメアは専用の言語やライブラリを開発している。
「はぁ、はぁ・・・・・・」
あの少年―――神林君と別れてから、ヒメルの心の中には疑問が渦巻いていた。
・・・・・・どうして私を助けてくれたの?どうしてなの!?
メアに撃たれてぼろぼろになってた。走ったときに銃声が聞こえたけど、何も起こらなかった。これって、神林君が庇ってくれたってことだと思う
「なんで・・・・・・なの?」
私を助けるため?―――いや、それはないだろう。だって今日、今さっき会ったばかりなんだよ。私を助ける理由なんて無いし義理も無い、なのにどうして自分が傷つくだけの行動ができたの!?
心の中で問いかける、が当然答える声も無い。今はただ、逃げるだけだ。
メアの反応が500m以内から消えた。たぶん、本当に時間稼ぎしてるんだ。そう思い、素直に驚く。そして、少し落ち着こうと足を止める。
「・・・・・はぁ・・・はぁはぁ・・・・・・」
ヒメルはどうするの?このまま逃げてるだけなの?神林君を見捨てて、自分一人だけ助かるの?
「・・・・・・やだ、そんなのやだ」
ヒメル、神林君と会う前、誰か助けてって言った。そうしたら神林君が来てくれて、助けてくれた。
「ヒメルには力は無いけど・・・・・・きっと、神林君も助けてって思ってるはず。だったら今度はヒメルが助けるんだ」
勇気を出せ、ヒメル・フリードブルク。なんてったって研究区画から出れたんだ。きっと、助けられるはず!
「よ~~~っし!!まずは人を探して―――」
「お嬢ちゃん、大丈夫か?」
「うにゃ~~~~~~!!!!!!」
いきなり声をかけられて、思いっ切り飛び跳ねてしまった。
・・・・・・ななな、なんで私のセンサーに引っかからないのこの人!?っていうか金髪?日本人っぽい顔してるのに金髪ってことは、この人は不良さん!?ひ、ひえぇ
金髪の男の人にいきなり声をかけられたことと、ヒメルのセンサーに引っかからなかったことで一気にパニックになっていたら、近くにいた赤毛の女の人が金髪の人の頭を殴っていた。
「こら!!女の子を驚かせないの。・・・・・・まったくもう~。って、あぁ~あなた、大丈夫?」
「は、はい。ちょっとビックリしただけです」
そういえば、この人もあの金髪の人の近くにいたんだよね・・・・・・ぜ、全然わかんなかったよ。やっぱセンサー壊れちゃったのかな
「ん?なんかガックシしとるようやけど」
「・・・・・・気にしないでください」
「まあ、その点は流しておくけど、さすがにさっきの言葉は流せないかな」
「ふぇ、さっきの言葉って?」
「お嬢ちゃん、さっき『・・・・・・やだ、そんなのやだよ!!』とか、『今度はヒメルが助けるんだ』とか、真剣な顔で言っとったからな。なんちゅーか・・・・・・頭打っておかしなったのかと思うてな」
「・・・・・・ああ!!」
「どないする?いい医者紹介したろうか」
そうだ、今は神林君の一大事なんだ。こんな胡散臭い人はどうかと思うが、隣の女の人なら
「あ、あの!!助けてください!!」
「ちょっ!?どうしたの、いきなり頭下げたりして」
「うわっ、ついに暴走しだしたか」
「~~~~~~」
「わ、わーった、とりあえずワイが話し訊いたげるさかい、事情をはなしてくれーな」
「・・・・・・・・・・・・」
「無言!?」
「じゃ、じゃあ私に話してくれるかな?」
「はい、お願い、です。助けて・・・・・・」
「なんでや?!なんでワイはだめなんや?」
「うっさい!!仁は黙ってて・・・・・・・えと、まずは名前を聞こうかな」
「ヒメルです。ヒメル・フリードブルク」
「ヒメル、か。ということは外人さんかな、私は竜胆美夏。よろしくねヒメル!」
「あ・・・・・・はい!!よろしく、えっとー・・・・・・みか!」
美夏が差し出した手と、手で握手をする。
・・・・・・あったかい。いままで逃げていたのか、それとも神林君のことが不安になったからかな、すっかり冷え切ったヒメルの体には美夏の温度がじんわりと広がる。
美夏の暖かさが緊張の糸を解したのか、だんだんと落ち着きを取り戻す。
と、同時に、
「え・・・・・・」
「・・・・・・あ、ごめん・・・・・・あれ、なんでかな?涙が全然、ヒクッとまらな」
「いいの、ヒメル。落ち着いたらでいいから、ね」
「・・・・・・いえ、大丈夫、いま、ウゥ、泣き止むから」
「そう?じゃあ、ヒメル、ゆっくりでいいから何があったのか話してくれる?」
「うん・・・・・・」
いままで我慢していた思いが涙となって溢れ出す。美夏に手を握られていたからか、
どうして逃げたのか、その経緯は説明できないけど、
「ヒメルね・・・・・・こわい怪物から逃げててね」
「そうなの・・・・・・ちなみにその怪物って?」
「投影使いのメアって女の子」
「そう・・・・・・ごめんね、つづけて」
「メアから逃げてたら、男の子に会ったの。その子、ヒメルと一緒に、逃げてくれて、ウゥ、ヒメルを助けてくれたんだけど、でも、メアに撃たれちゃって・・・・・・グズ・・・・・・ボロボロになったのにヒメルのこと逃がしてくれて――――」
「!!!」
「・・・・・・あっ」
美夏がぎゅーって抱きしめてくれた。ヒメルの溢れ出てきたこの感情ごと包み込むように、そんなくらい、強く抱いてくれた。
「美夏、そのままにしたってな」
「分かってる」
なんでだろう、こうやって抱いてもらうと落ち着く。神林君のことで不安だったのに、美夏に抱いてもらったら安心してくる。
優しいな・・・・・・うん、美夏ならヒメルの力になってくれそう。
「それでね、美夏」
「なあに、ヒメル」
「美夏に、その男の子を助けて欲しいの、お願い」
「うん、わかった、絶対助けるからね。・・・・・・ねえヒメル。その男の子の名前って」
「えっとね、名前は忘れちゃったんだけど、名字はね、」
「神林っていってた」
「―――――へ?」
「だから、神林君、メアと戦って、今怪我しちゃって―――」
「なあ、そいつの特徴って」
「えっ?」
さっきから静かにしていた金髪の人が突然口を開いた。その代わり、今度は美夏が固まってしまった。抱いていた腕も外して、「うそ・・・・・・」とつぶやき、わなわなと震えてる。
あの金髪の人が「洋服とか、覚えてる範囲でいいで」と促してきたけど・・・・・・
「確か、白い洋服に黒い長ズボンを履いてたかな。あと、髪が真っ黒で――――――」
「もうええで・・・・・・ふぅ」
美夏が顔を青ざめている。金髪の人――仁さんは溜息をついて、眉間に人差し指を立てている。
「ヒメル、やな」
「はい」
いきなり声をかけてきた時とは違い、あまりにも真剣な雰囲気につい敬語になってしまう。金髪は続けて、
「それ、ウチらの友達かもしれへん」
「――――え」
今度は、ヒメルが固まってしまう。
な、なにを、言ってるの。頭の中が真っ白で何も考えらんない。
じ、じゃあ、私を守ってくれたのが美夏達の友達で、ヒメルはその友達を怪我させちゃったわけで・・・・・・
美夏の友達を傷つけてしまったことによる罪悪感が体を締め付けてくる。
「あ、あああ、ああああ、ヒメル、大変なことを、ごめんなさい、本当にごめんなさい」
苦しい。胃袋がわし掴まれた感覚が襲う。
痛い。全身の至る所が刺されたような感覚だ。まともに美夏達の顔が見れない。
許してもらえる、とはおもってないけど、謝らなくちゃいけないよね、最悪土下座とかもするのかな
なんて、悲観な考えとは裏腹に、美夏たちは強張ったひょうじょうだけど、怒った素振りは全く見せず
「なんで謝るんや?あいつが怪我しおおたんはアイツのせいや。どーせ、困ってるお前さんをみて助けたくなっただけやろうし、気にせんでもいいで」
「で、でも、ひどい怪我させちゃって」
「でも生きてるんでしょ」
「は、はい。D・PRGの銃だから死なないけど」
「じゅ、銃やて!!それほんまか!?よし、美夏急いでいくで」
「ちょ、ちょっと!どうしたの急に――――――ってああ、あんたガンマニアだっけ」
「う~んどんな銃にあえるんやろうなぁ・・・・・・いまから楽しみや!!」
「あ、あの・・・・・・」
「わかってる?恭弥救出が最優先だからね」
「だから・・・・・・」
「わーっとる、美夏が恭弥担当、ワイが銃の子担当ってことやろ」
「あ、あの!!」
ヒメルの大声にしん、と鎮まる
「・・・・・・」
「・・・・・・どうしたの?大きな声出して」
「ヒメルのこと、責めないの?だってお友達を怪我させちゃったんだよ!?ヒメルのせいで!!」
自分で言って心が締め付けられる。嫌。苦しい。辛い。様々な負の感情が渦巻く。
金髪の人に怒られるよね、美夏にもぶたれちゃうかも、唇をきつく結びこれから起こるであろう事に覚悟を固めていたら、穏やかな声が掛けられる。
「あのね。ヒメルも私の友達なの」
「と、友達?」
「うん、名前呼び合って、ちょっとだけだけどお話もして、これからもっと仲良くなっていこうと思ってる、新しい友達だよ?」
「え、でも」
「それともヒメルは私のこと嫌い?友達はいや?」
「そ、そんなことない!!ヒメル、美夏とお友達になりたい!!」
「うん。じゃあ、いまから私とヒメルは友達。友達が困った時は助けてあげなきゃね」
「つーことや。恭弥とワイと美夏とヒメルは友達やろ?恭弥が大変なんや。友達のワイらが助けなあかんやろ」
「うんうん♪そゆこと」
「・・・・・・・・・・・・」
わからない。いままで友達なんていなかったからその言葉の意味を理解できない。
でも、
「じゃあ、助けに行きますか!!ヒメル、案内よろしくっ」
「う、うん!!」
何でだろう、すごい気持ちがいい。気分が高揚とする。
「行くで!!」
「うん!!」
ヒメルは、先に走り出した2つの背中に付いていくように走り出す。
どうしても、友達というものが分からない。それでも、今やるべきことは決めた。
もう逃げない、今度はヒメルが助けるんだ。確固たる意思を瞳に宿して金色の少女は駆け出す。
ということで、第7話です。・・・・・・さて、ようやく美夏とヒメルが出会うとこまで書けました。長かった、超長かった、そしてここまででようやく4分の1くらいという事実。
・・・・・・処女作なのに長すぎたかなぁ、なんて思っています。ただ、書き溜めはあるのでこれからもコンスタンスに週1で更新していきます。では、次回は8月19日です。