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戻ってきた日常・後編


 ―――――pipipipipi・・・・・・


「ん・・・・・・」

 

 朝だ。まだ覚醒しきっていない体を強引に起こすと、後頭部が痛む。首を動かそうとすると痛みで動かないな、これは寝違えたかな?

 ソファで寝るにはまだ慣れが必要かな


「さてと・・・・・・メア、ヒメル。朝だぞ。今日から通うんだろ」


 ベットで仲良くすやすやと寝ている小さい姉妹の肩を揺らした



              ☆



「うう~、眠いよ~・・・・・・ゴシゴシ」

「ヒメル、目を掻いちゃだめですよ。かぶれちゃいます」

「で~も~。ヒメル、花粉症だし」

「あ、ヒメルも花粉症なの?私もそうなんだよねえ――――はい、目薬」

「美夏、ありがとー!・・・・・・んー・・・・・・」

「ヒメル、歩きながら目薬を差さないって、ああ。また外して」

「は、鼻―!鼻に入った~~!!」


 なんていうか、すっごい馴染んでるんですけど。ヒメルはともかくとして、メアがここまで馴染めるなんて予想外だった

 仁に耳打ちする


「なあ、あの2人、馴染みすぎじゃないか?俺の知らない間に何かあったのか」

「知らない間、ゆーてもな。ぶっちゃけ恭弥がいない時間の方が長かったし。しかも修羅場を潜り抜けてきた仲やしの。むしろ、仲良くて当然ちゃうの?」

「え・・・・・・」

「恭弥、メアに会うたのうは撃たれた日と病院だけやろ。まあ、ヒメルはワイの家でも会うとるわけやけど」


 けど、確かに冷静になって考えればそうだよな。俺って拉致られたり、寝てたり、逃げたりで、ゆっくり話もしてないし。

 そうか、むしろ仁たちと仲が良い方が自然なのか。


「何にせよ良かったな。やっと平和になったって感じだ」

「せやな。のう、お前、もう体は大丈夫なんか?」

「ああ。動いても問題ないってさ。なんか自然治癒力が異常なほど強くなっている、って言われてな。たぶん、鬼の影響だよな」

「おそらく。まあ、皮肉にも鬼のおかげで早く復活できたわけやな」

「まあな」


 ――――この鬼とは一生付き合わなきゃいけないかもしれない

 メアの言葉が脳裏によぎる。定期的に沈静させて凌いでいくしかないと言われてしまっては、俺は簡単にここを出て行けないし・・・・・・なんか、参ったな

 せや、と暢気な声で仁が声を掛ける


「お前が寝とった間に、新しいことがわかっての。まあ、どうしてもちゅうなら教えたるわ」

「お?おお」


 なんか語り始めたぞ、こいつ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・


「恭弥さんが入院して、早2日。一向に意識は回復しませんが、黒体化の兆しは見られず、落ち着いています。経過は良好だといえます」


 はあぁぁ・・・・・・

 安堵のため息が3つ、病室に響いた。姫川医大附属病院の個室には心配そうに恭弥を見降ろしていた。

 ワイと美夏とヒメル。そしてメア。市長や学生会、警備隊組は後始末に勤しんでいるみたいや。というか、ワイらが出しゃばっても何もできんし。いや、の。決して面倒だから押し付けたってわけやないんよ?


「いや~、まあ。やっと一段落ってとこかの」

「そうね・・・・・・はぁ、長かった」

「美夏に関しては2週間くらいバトって無事やったんやろ。ホンマ、人間じゃないな、お前」

「失礼ね。これでも16歳の現役女子高生だっつの。それに、ほら」


 右手の松葉杖をまるで腕をあげるように持ち上げた。その時、捲り上げた制服の裾からは、包帯が見え隠れしていた。先の戦闘の傷跡が生々しい。

 ま、ワイも似たようなもんなんやけどな。ちょうど学ランで隠れとるけど、下には・・・・・・まあ、ええやろ。関係あらへん


「ヒメルは怪我、平気なんか?」

「うん、全然平気。でも美夏・・・・・・怪我、大丈夫なの?」

「そうね、もう痛みは無いし、普通に歩けるわ。今日だって学校に行けたし」

「その体で、ですか?よく登校できましたね」

「これくらい余裕よ」

「よく言うで。ワイがおらんかったら信号も渡れへんかったやんけ」

「そ、それは・・・・・・まあ、事実だから認めるしかないけど。それよりも、さ」


 美夏が神妙な面持ちでベットに腰掛けた。美夏はこのところ・・・・・・そう、ちょうど病院で青柳と戦った後からか、しょっちゅう小難しい顔をしておった。それは、たぶんメアやヒメルに対する何か、ちゅうことは予想できたけど・・・・・・せやな、聞くならこのタイミングがちょうどええんかの。

 美夏にアイコンタクトを取る。

 ここは、ワイに任せとき


「なあ、メア。それにヒメルも。ちょうど一区切りついたっちゅうことで、腹割って話さへん?」

「腹割って・・・・・・それって切腹!?腹切りなの!?」

「違います。仁さん達は本音で話をしないか、と誘っているのですよ。要は私達に探りを入れて何か情報を引き出す気ですね」

「んなっ!?」

「情報!?え、えっと・・・・・す、すりーさいず、とか?」

「ジー・・・・・・」

「仁?何考えてんの、あんた」

「いやいやいや!!んなわけあるか!ワイはちょっと腑に落ちん事があったから、聞きたいってだけで―――っていうか、美夏!お前はこっち側やろ!」

「え、ちょっと、何?人のこと巻き込まないでよ。変態」

「え、えええ!?」

「エッチ!スケベ!女の敵!」

「・・・・・・変態さんです」

「金髪!!似非関西弁!!」


 理不尽や!?何で誤解された挙句ここまでボロクソ言われなアカンの!?というか、美夏!金髪とか似非関西弁とか何なんや!アイデンティティーを悪口扱いするなや!こんな、こんなの・・・・・・


「屈辱や!辱めを受けたで!」

「さ、本題に入るんだけど、やっぱ仁の言うとおりでどうも腑に落ちないって言うか納得できないとこがあるのよ」

「はい、できる限りで答えていきます」

「うん、ヒメルも知ってる事は全部言うからね」

「・・・・・・・・・・・・」


 無視は、やめてーな。割と本気で。って、ああ。気にも留めずに話を進めとるんか。


「まずは、恭弥の身に起きたこと。青柳に魔改造されて鬼が埋め込まれて、その結果強くなった。それは分かる――――だけど、恭弥は私の技を使ってきた。戦闘中に学習して使いこなしたのよ。それも鬼の能力だっていうの?」

「・・・・・・わかりません。詳しく鬼を調べたわけではないのでアレがどのようなプログラムなのかはほとんど分かっていないのが現状です」

「早速わからない、か。まあ、しょうがないことか」

「美夏はどうしてそんな事を知りたかったの?」

「決まってるじゃない。また恭弥が暴れた時、今度はきっちり倒すためよ」

「一度倒されたのに、ですか?」

「一度倒されたからこそ、よ。恭弥には誰かを傷つけて欲しくない。ただ恭弥が私の技を盗むっていう事実がわかれば、今度は対応できる。対応できれば、負けることはないわ。・・・・・・じゃあ、この話はお終いってことで――――」


 美夏が強引に話を終わらせる。息つく暇も無く次の話題をはじめる


「ヒメルの正体、これも教えて欲しいな」

「―――――!!」

「美夏・・・・・・」

「ちょっとした違和感なんだけどね・・・・・・ヒメルって敏感っていうか、そう!センサーっぽいのよね」


 センサーっぽい・・・・・・確かに、言われて見ればそんなこともあったような―――ってそうや、


「美夏、あれやろ。初めて会ったとき、恭弥が無事ゆーたことか」

「それもあるわ。後、病院の時に恭弥の居場所を教えてくれたのよ。それもかなり正確に」

「う、ううぅぅぅ・・・・・・」

「ヒメル、あなたそんな事を――――はぁ。分かりました」

「話してくれるの?」

「全ては話せません。ただ・・・・・・ヒメルは普通の人ではない、と今はこうとしか言えません」

「ふーん。今は、ね。必要になったら言ってくれるのかしら」

「必要となったら、です」

「で、でもね!ヒメルは友達でいたいの!こんなヘンな子だけど、隠し事いっぱいしてるけど、美夏達は大好きだからさぁ」

「・・・・・・はっ、聞くまでもないやろ。ヒメルはワイらの仲間や。別に隠し事くらいあって当然やろ?そないなことでハブにしたりせえへんよ」

「そうね、むしろ胡散臭さでいったら仁のほうが上だし」

「な、なんやと!?それ、どーゆうことや!」

「あんたって結構隠し事するじゃない?恭弥がいないことも隠してたし」

「あれはしゃー無いやろ、そういう作戦やったんやし!というか、美夏やておかしなとこがぎょうさんあるやないか!」

「ああ!?この完璧美少女の何処がおかしいってのよ!」

「列挙したろうか?A4わら半紙にびっしりと箇条書きで書き出したろか!?ああン!?」

「怪我、増やしたろうか!?」

「っぷ、ふふ・・・・・・あははははっ!!みんな・・・・・・ありがとう!!」


 満面の笑みを浮かべた。メアも顔がほころびた、ように見える。何にせよヒメルはワイらと同じでちょっとワケ有りって思っとけばええっちゅうことや。

 でも美夏、胡散臭いちゅーのは納得できんで。けど、まあ。この議論は今夜に持ち越すにして、


「今度はワイが質問してもええか?」

「ダメよ」

「美夏が決めるんかい!じゃあ、質問するで」

「じゃあってなんですか。接続詞が仕事をしていませんよ」

「ええやろ!じゃあ、メアに聞きたいんやけど・・・・・・病院で恭弥を倒した時や。ワイらとの決闘でボロボロになり、青柳との戦いで限界だったはずや。その状態にも関わらず、何で列車砲なんちゅうモンを作れたんや?それに、ユグドラシルって言葉も・・・・・・それなりに情報通なんやけどそないな言葉は聞いたことがあらへん」


 捲くし立てるように次々と質問を繰り出していったが、メアは表情を変えず、そして「うん」と頷いて言う


「そう、ですね・・・・・・端的に言えば代理演算を利用したから、というのが答えになります」

「代理演算?それって?」

「本来ならば私の身体でC原子を生成、それをD・PRGで加工して投影を行うのですが、この一連の作業を機械に行わせたのです」

「・・・・・・それが、ユグドラシルか」

「はい。ユグドラシルは研究区画にある演算装置のことで、姫川学園都市創設以前に存在していた機械といわれています」

「創設以前ってどういうことや?人間が造ったんやないのか?」

「元々ユグドラシルは海中に沈んでいました。偶然発見した姫川グループが引き揚げ、解析していき、C原子の発見・D・PRGの発明。今の学園都市ができたと聞いています」

「そ、そんなことが・・・・・・」

「動力無しに無尽蔵にC原子を放出する、ソースファイルを読み込ませることで高速・高出力なプログラムを実行する事ができることなど、わかっていることもありますが、まだまだ未知の領域も多く、3割も解析できていないといわれています」

「解析されてないのに使ってるの?高威力・高出力って理由だけで使ってるならリスクが高すぎる気がするわ」

「――――このユグドラシルの最大の特徴はプログラムによる反動が一切無いということです」

「反動が、ない?ちゅうことは何や。好きな武器を好きなだけ作り出せるっちゅうことか!」

「使い方さえ間違わなければ非常に強力ですが、同時に世界を滅ぼせる能力を持っているのです」


 世界を滅ぼせる・・・・・・そうりゃそうや。一切の資材を消費せず無尽蔵に武器が生み出せるというのならば、それは圧倒的火力で蹂躙することも可能ということ。言うなれば、雨のようにロケットを飛ばせるっちゅうことや


「あまりにも危険な力のため普段は利用制限が掛けられているのですが、非常時だったので5分だけ時間をいただき利用しました」

「・・・・・・」

「さ、私達はこれから引越しの準備と扉の修理をしなくてはいけないので。失礼します」

「あ、待ってよお姉ちゃんっ。えっと、じゃあ、またね!」



・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ヒメルにユグドラシル、鬼のこと。なんていうか、結局何もわかってねえじゃんか」

「そうでもないんやで?大事な事ははぐらかされたけど、1つハッキリしたことがある」

「あ?」

「研究区画や。あそこの存在意義がようやく分かった気がするんや」

「研究区画・・・・・・」


 そういえば、何度も聞いたことがあるのに、結局そこが何の為に作られて誰が住んでいるのかって知らないんだよな。精々怪談のネタにされるくらいなのに

 でも、そうか。俺達は研究区画の人間と接触したわけなんだよな。なんか感慨深いぜ。こう、未知との遭遇的な感じ?


「で、未知なる研究区画の何が分かったって?」

「あそこってどの街区からも連絡してへんし、外から見たら白い窓なしのビルが一本建っているだけ。それは排他的であると同時に秘匿的でもあるわけや」

「秘匿?何を秘密にしたいん――――ああ」

「そういうことや。奴らはユグドラシルを外部に漏らしたく無いから、あんな建物を造ったんやないか?世界を滅ぼせる力、あんなんが青柳に渡ったら・・・・・・の?」

「なるほどな。そうすりゃ、青柳がここに来た理由も分かるな」

「ユグドラシルが狙いってわけか――――なあ、そうすると青柳はまた来るのかな?」


 ああ、間違いなく。仁は肯定した。


「だったら、なんとしても捕まえなくっちゃな。もしかしたらこの鬼を壊してくれるかもしれないし」

「せやの。ま、そういう意味ではワイらとメアの共闘関係はまだ続いとるって言えるわけやな――――にしても」

「あん?」

「昨日はどうやったんや?初めての共同生活やろ?何かエロいこととか無いん?」

「――――っ!!!」


 少し前を歩いていた美夏が一瞬で顔前に迫る。まさしく般若の形相といった感じだ。

 ヒメルとメアも駆け足で戻ってきた


「恭弥・・・・・・?何かあったの?答えなさい」

「な、何もありませんでした、よ?」

「お風呂で鉢合わせた?」

「は、鉢合わせてない!」

「転んで“ToLoveる”な感じになったりは?」

「あったかも・・・・・・メアが転んでヒメルの胸に飛び込んでたな」

「なら許す。寝るときに布団を間違えて、添い寝しちゃったとかは?」

「~~~~~っ!!!」


ああぁ、あった気がする。確かヒメルが俺のソファに入り込んできて、しばらく寝ちゃってたんだっけ。足と手でホールドしてくるから引き剥がすのに手間取って、最終的にヒメルが起きてどうにかなったけど・・・・・・

 頼む、ヒメル!黙っていてくれ


「ヒメル?」

「そ、そそそそ、そんなの、にゃいよ!?全然ないよ?」

「・・・・・・ヒメル?」


 超ドモってるじゃねえか!これはなんかあったって言ってるようなもんだろ!頼む!これ以上何も喋るな!!


「べ、べべべべ、別に神林君と、一緒に寝て、ぎゅ~ってしてた事なんて、ないんだからね!?ホントだよ!?」

「ま、まさか本当にあったとは・・・・・・」

「恭弥、やりおるの。せやけど、ここでお別れや」

「い、いやいや!これは何ていうかノーカンだから!お互い同意の上では無かったっていうか――「でも、寝たんでしょ?」・・・・・・はい」

「ああああ、あの!神林君は悪くないんだよ?全部ヒメルが寝ぼけたのが悪いのであって・・・・・・」

「ううん、違うの。そういうことじゃないの」


 そうだな。どんな事があろうと、例え俺に非がなくても、美夏は俺を殴る。とりあえず殴る。まず殴ってそれから考える。それこそが竜胆美夏なのだから。

 だから、俺は来るべき衝撃に歯を食いしばる。ああ・・・・・・やっと退院したのになぁ



「このぉぉぉおおおおおお!!!!ばかあああああああああ!!!!!!!!!!!!」



 晴天の空。桜が舞い落ちる通学路で、少年の叫び声が響き渡る。

 次の嵐を予感させながらも、姫川学園都市は今日も穏やかな時が流れていった


「あ、ちなみに美夏が確認した事って、昔、美夏がやったことで――――ぶっふぅぅぉぉおおおおおあああああああ!!!!!!!!」


 


これにて世界樹の光は終了となります。

去年の7月4日から連載を始めて隔週更新を目標に、書き溜めを切り崩しながら補充していくような9ヶ月でしたね。当初の予定では15話くらいの短編を想定していたんですけどね・・・・・・如何せん、初めて書いたものなので。結果的に2倍強の39話になってしまいました(笑)


さて、語ることも多くは無いのでこれからの話をしますと。

次回作ですが、当然ながら作りたいと思います。だって完結してませんし。主人公が不遇すぎますし。絶対に作るのですが、時間がかかってしまう事になります。それは今実況動画の方を手掛けていまして、そのシナリオ部分を作っているのですよ。しかもそろそろ就活が始まってしまうという状況でして・・・・・・ぶっちゃけ手が回りません。

話も全然作っていないので、書くに書けない状況なので一時休業して、ネタが出来次第連載しようと思います。

ちなみに、次回作ですが今のところゆるーい日常系の話を考えています。世界樹の光から戦闘+暴力を取ったような作品ですね(あれ?エロしか残らない気が・・・)

戦闘が好きで読んで下さった方には申し訳ないです。けど、毎話笑えるような話を作っていければと思っています。そして、恭弥君たちですが、残念ながら登場させる予定はありません。匂わせる事はあれど、はっきりとは出ません。


って後書きが長くなりましたね。まだまだ書きたい事があるのですが、まあ、次の楽しみとしておいて、今回は閉めたいと思います。

最後に、この作品を読んで下さった全ての読者の皆様。あなた方がいなかったら完結まで書けなかったと思います。本当に、本当にありがとうございました!!


では、伊吹先生の次回作にご期待下さい! (一度やってみたかったの)


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