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Night Talk ①  「テストは1週間後」

舞台設定②「西街地区」

研究区画に対して西側に位置する地区。中・高の教育機関が集中しており住民の約8割はティーンエージャーである。主に学生寮が立ち並ぶ住宅街であり、メインストリートである「駅前通り」から根が伸びるように細い道が伸びている。

基本的に西街地区が主な舞台です


 美夏との間で勃発した第1次神竜戦争は「ゲームを売っても不足した金額分俺がファミレスでおごる」と、いう条件で終結した。明らかに俺に不利な内容ゆえに、美夏には何のペナルティもないのか、と口出ししたが真っ赤に光る拳を構えて

「な・ん・か・文・句・あ・る?」

 と、言われたので泣く泣く条件を飲むことにした。さすがに3度目のノーロープバンジーはご勘弁願いたい。ちなみに「神竜」というのは『「神林恭弥」と「竜胆美夏」だから』と仁が勝手に名づけたものだったりする。

  

 と、いうわけで現在PM7:32、俺たち3人は学生街にある行きつけのレストランに向かっているのだが・・・・・・


「さあここで質問です。今日は何日でしょうか?恭弥くん」

「なんだ唐突に、4月17日だろ」


 いきなり敬語を使って、そんなことを訊いてきた美夏にぶっきらぼうに返すが、美夏は続けて、


「じゃあ、明日は何の日でしょう?はい、恭弥くん」

「4月18日」

「それはそーなんだけどー、そうじゃなくて~」

「あ~?分かるか、仁?」

「ん~~憲法記念日やったっけ?」

「それは5月3日だな」

「じゃあ、文化の日かの?」

「それは、11月3日。そろそろ真面目に答えろ。右を歩いている竜胆さんが青筋立ててニコニコ笑うという漫画みたいな怒り方をしてるのですが」

「んにゃ?ヒントは出したから後は自分で答えてみ」

「って、お前知ってんのかよ!しかも、分かってんならちゃんと答えろよ」

「さっきの仕返しや。自力で出せや」


 こ、この似非関西人め。さっきのダメージからかだんだん標準語に戻りつつあるくせに、なんか生意気だ。

 とはいえ、ヒントはあるらしい。ゆっくり考えよう


「と、ガチで考え始めたあのバカはええとして、そいや美夏、来年の選択実習ってどうすんの?」

「あぁ、投影実習か身体強化実習で選べるんだっけ?まあ、言わずもがな私は身体強化だけど、でもどうしていきなり?」

「いや、それがな。この学年って他の学年より2クラス多いやろ。だから実習クラスの先生が足りないらしくってな~。もしかしたら人数制限するかもって」

「ええ!?じゃ、もしかしたら私が投影クラスに飛ばされるかもしれないってこと?投影なんてできないんですけど!!」


 仁たちが何か話しているが、まあ気にしない。それよりヒントか・・・・・・11月3日、5月3日・・・・・・

 ん?3日・・・・・・みっか・・・みか・・・・・・!!


「まあ美夏みたいに名前が売れてるやっちゃ、通り易いやろうが、ワイや恭弥みたいな一般学生はもしかしたら・・・・・・ってことや」

「そっか・・・・・・」

「そんなに心配せーへんでも、通称『紅拳』の会計殿なら余裕やろ。ワイらも身体強化のクラスに入れるよう頑張っとるし、それに、恭弥やったら筆記で行けるんちゃうかな?」

「はぁ・・・・・・それを学年首席の仁が言うと嫌味にしかきこえないって・・・・・・でも今年はクラス同じだったけど来年は違っちゃうかもしれないんだ・・・・・・なんか、寂しぃ」

「せやな・・・・・・さて恭弥、いい加減答えがでたかい?」


 仁が答えを聞いてくる。美夏も期待した面持ちで俺の言葉を待っている。ふふ、ならばここは高らかに宣言してやろうではないか!!


「3日だけにみっかみかにしてやんよ!とか?」


 返事代わりに紅拳が腹に突き刺さった



 喫茶店に到着した俺たち3人。

 腹を抑えて仁に肩を貸してもらって歩く俺とは対照的に、「おっごり~おっごり~」と、小走りで美夏は店に入っていった。

 俺はふと、立ち止まってあることに気づく。

 ・・・・・・エロゲ売られて腹パン食らって普通に考えれば最悪なはずなのになぜか楽しいな。

 それはたぶん、いつも以上に上機嫌な美夏の笑顔があるからかな。だから、まあこういう日もたまには良いんじゃないかななんて思ってる自分がいるのかも。最悪っていうよりむしろこっちも楽しいくらいだ。仁も同じ気持ちなのか、訊いてみた


「これも美夏の魅力の1つなのかな」

「せやな、美夏って体ちんまいから子供っぽいし、なんか小動物チックなとこもあるから、体からリラクゼーション物質的なもんがでてるんかもな」

「なるほど・・・・・・よくわからんが美夏が子供っぽいのは同意できる」


 すぐ手が出るし。足が出るし。頭突きが来るし。沸点低いし。


「まあだからこそワイらは美夏を気に入ってるんやしな。そして、そんな俺らを美夏は気に入っておる、この関係が今一番ええんやろ」

「・・・・・・そうだな」


 こんな会話をしたからだろうか、ふと、去年のこの時期のこと――要は美夏と出会ったことを思い出した。

 うん、あれは人生で五本の指に入るくらい衝撃的な事件だったなぁ。まさか下着姿の女の子と密着して、白衣のおっさんたち相手に大立ち回りするとは。できれば二度としたくない。

 感慨にふけってると、美夏は店の入り口から出てきて、


「席とれたよー!はーやくー!!」

「さて、ウチの姫様のお呼びや。はよ行こか」

「おお!」





 『カフェテリアsubterranean』、通称サブテレは学生街の中央に位置するファミレスだ。ファミレスなのにどうして名前がカフェテリアなのかは3年以上ここに住んでいる俺にもよく分からないのでそういうものらしい。

 そんなサブテレの特徴と言えばなんと言っても安価なこと。学食の値段くらいに安いうえ、量は学食よりも上。当然というべきか、部活帰りの学生にとっては必要不可欠の店となっている。

 ・・・・・・この時間だったら満席かと思ってたが、ラッキーだったな。


「席とってあるからーこっちこっち」


 美夏に連れられて窓際にある4人がけの椅子に腰掛けて、「さて」と一拍おいて、


「さて、2人とも何頼むんだ?」

「えっとね・・・・・・私はカプチーノ・フラペチーノ!」

「へ~お前コーヒーなんて飲めたんだ」

「飲めるよ!私もう大人なんだから」


 そんな背伸びをした発言をするが外見はまるっきり子供な美夏。

 それに対して、パツ金さんは


「ほんなら、ワイも同じの貰おうかの。あと、このイタリアンバジルのカルボナーラとデザートにミルフィーユも頼もうかの」

「・・・・・・あれ、お前っていつもラーメンとかじゃなかったけ?」


 ラーメンとジンジャーエールがデフォルトの仁がなぜかお洒落なメニューを頼んでいたので少し驚く。

 というか、なんか心なしかさっきより背筋が伸びてるし、だらしなくジーンズからはみ出ていたシャツもしまってあるし、明らかにきりっとした顔をしてる。


「なんのことかの~?ワイはいつもの料理を頼んだまでや」

「だからいつもは―――モガッ?!」


 と言う前に仁に口を塞がれ「あれ見いや」と仁の指差しているので、その方向を見る

 と、学園都市では珍しい緑髪の女の子が隣のボックスシートに座っていた。


「(あれって隣のクラスの須藤ってやつだっけ)」

「(せや!1年最強の投影使いでありながら、その美しさから若干16歳でミス姫川に選ばれたうえ、会長推薦で学生会の次期生徒会長に就任することが決定した名実共に学園のマドンナの須藤愛ちゃんや!!おま、そんな娘が今、現在PM8:12に反対側の席に座ってんやぞ!!ここでラーメンなんてすすってみろ。『え~やだ、仁君ってあんな音立ててラーメンすするの~きもーい』って言われてまうかもしれへんやろ!?)」

「ぜってーねえから!!しかもセリフ長いうえなんで説明口調なんだ!!あと、耳元で囁く―――」

「ちょ!声でかいわ!!もうちっとボリューム落とせ」

「ン――!!!・・・・・・ぷはぁっ!!だ、だからって口塞ごうとするな。キモいわ!!」

「・・・・・・あんたら何やってんの?BL?」

「「違うわ!!!!!!!!!!」」


 背筋に悪寒が走る。こいつとボーイズでラブな関係?そんなの死んでもゴメンだ。俺はお友達ではあってもおホモだちになった覚えはない。

 ・・・・・・はあ、最近の美夏はこの手の知識は何処から仕入れてくるんだろうか?

 仁もそう思ったのか、


「それより、美夏ってこの手の知識を何処から仕入れてくるんや?半年前なら『キス』って言葉だけで真っ赤になっとったのに。」


 えっ?!と驚き、一瞬の躊躇。だが、すぐに向き直し


「そ!?それは・・・・・・まあ、次の機会ってゆうことで」

「顔逸らしたな」

「顔逸らしおおたな」

「うぐっ・・・・・・そ、それよりも2人とも学期明けテストの勉強してるの?」

「話逸らしたな。しかも視線泳いでるし」

「話逸らしおおたな。しかも冷や汗ダラダラや」

「ああ!!もういいでしょ!乙女の秘密にこれ以上踏み込むな――!!」


 おっと、キレてしまった。さすがにこれ以上はいじめになってしまうのでここで引いておく。いじりはいいけど、いじめは良くない。そのあたりを心得ているので仁もこれ以上は弄らない。

 肩で息をしているが「そ、それよりも」と美夏が話題を振る


「冗談抜きであんたたち、テスト勉強してるの?」

「ん、いまいちってとこかな」

「い、いまいちってあんたね、この試験で来年のクラス分けされんのよ!もっと本気で勉

強したらどうなの?」

「んんん~せやけど~恭弥は暗記苦手やしの~」

「10割が暗記物のテストなんて点取るって以前に勉強する気も起きないってゆーか」

「ぶっちゃけ何も手つけてないんやろ、お前」

「てへっ!」

「てへっ、じゃないわよ!アホ!!」

「えっ・・・・・・って痛ぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」


 美夏が強引に腕を掴んでくる。ただし、ものすごい握力で。

 何こいつの圧力。ちょっと洒落にならねえんだけど!?りんごどころかスイカが割れんじゃねえか。まあ、折れてないから手加減はしてんだろうけど。―――――あ、だんだん腕の感覚が・・・・・・

 

「み、美夏、そろそろ腕はなしたり。なんかミシミシ聞こえるで」

「まだ平気でしょ」

「いやいやいやいや。この真っ赤を通り越して土気色になってる右腕が見えんのか」

「じゃあ、恭弥が全然勉強しそうにないんやから、今やるしかないんやないか?」

「そうね。まずは、特論から勉強しましょっか」

「いや、だから今腕掴まれてて」

「まあ、完全暗記物の教科の中でもとっつきやすそうやし。ええんちゃうの」

「だから・・・・・・腕が、痛――――――――」

「じゃあ、恭弥。C原子の定義からだけど」

「無視すんなよお前ら!!!」

「「ボケなくていいから(ええから)」」

「ボケてねえ!!」


 俺の叫びに、さすがに悪乗りが過ぎたと思ったのか「まあ、そろそろええんちゃう?」、と仁の声でようやく美夏のアームブレイクから開放される。

 うっ、手形がしっかり残ってやがる。ほんと、あの華奢な体のどこからこんな力が出てくるんだよ。

 俺が美夏の怪力について考察している間に、当人はテーブル中央にホログラムを展開して自動出題システムの準備を終わらせていた。


「特論の勉強法なんて暗記以外ないんだから、とりあえずどこまで覚えてるかテストしてあげる」

「まあ、基本的なとこから出すから、へーきやと思うが・・・・・・せやな、1問ミスる毎に学食のパン1つ奢るっちゅーのはどうや」

「うげっ!?」

  

 結構重いペナルティーだな。こりゃ、間違えられねえな。

 俺が気合をいれなおして、美夏が「いくよ」とシステムを起動させる。空気中のパネルを指でスクロールし問題を選択。そのまま音声を再生させる。


「よし、じゃあ第一問!」

「おう」


『地球上のどこにでもあるとされるC原子、さて、その原子はどのようにできるでしょうか?』


 スピーカーから無機質な声が流れる・・・・・・うむ、確か、


「空気中にある窒素が、体内の・・・・・・えと、『アルターコア』だっけ?そこでC原子に変化するんじゃなかったけ」

「正解、まあ、基本よね・・・・・・一瞬詰まってたけど」

「じゃあ次はワイな」


 仁も同じように選択して、再生させる。


『アルターコアが発見されたと同時にC原子というものが発見されましたが、そのC原子の特徴はなんですか?』


 これは簡単だ。むしろこの技術を学びにこの学園に来てるもんだしな


「意図的に変化させられること!」

「なんかえらい抽象的やな。そんなんじゃ読者の皆様には分からんから、もうちーと分かりやすく」

「発言がメタいなおい」

「ええから、はよ」

「うえぇ~、えっとー・・・・・・プログラムすることでC原子を運動させたり、色をつけたり、くっつけたりして物質を作ること、でいいのか」

「50点ってとこかの。美夏、まだできることはあるよな?」

「ええ、いい?人間の体内にアルターコアがあるってことは必然的に体内にもC原子は存在するということ。つまり、」

「つまり?」

「体内にあるC原子を硬化させろことで体を鉄より硬くさせえたり、神経系を強化して、五感を高めたり。応用すればジャンプでビルを飛び越すこともできるわね」


 そういやこいつは今朝ドアを蹴り破ってきたよな


「ということはC原子ができることは『身体強化』と『物質投影』の2つってことか」

「せや、ただしまだ研究段階。これから別の利用法も見つかるかもしれんから、この事も書けば減点はくらわへんと思うで」

「そーなのかー」

「その返事はどうかと思うで」

「そーなのかー?」

「・・・・・・まあええ。美夏、次の問題いったり」


『さて、C原子を意図的に変化させる技術の総称をなんというでしょう。日本語と、アルファベットで答えなさい』


 ぬっ?!こ、この問題、わ、わかんねえ。と、とりあえずここは落ち着いて、ゆっくりと考えて・・・・・・


「・・・・・・え、・・・・・・えっとー・・・・・・」

「あんたマジで言ってるの」

「むしろなんも言ってへんけどな」

「誰がうまいこと言えっていったの」

「まあまあ、わかんないものはしゃーないんやから、とりあえずヒント出すで」

「おぉ!!」


 助かった!これで罰ゲームは回避されて――――――


「去年の入学式で学長が言った言葉」

「んなもんおぼえてるか!!」

「えぇ~んなこともおぼえてへんの~?」


 う、うぜ――!!まったく使えないヒントのくせにこのどや顔。かなりむかつく。さてはこいつ、俺に答えさせる気ないな。くそう。

 問題そっちのけで仁の処刑方法を考えていると、待ちきれなくなったのか、


「はい、時間切れ~。正解は『次元干渉プログラム』通称、Dimensions Programよ」

「うっわ―――!!そうだったな」

「マジで忘れておったか。・・・・・・はぁ、わが友人ながらあきれるで」

「と、ゆうことで明日の昼は奢ってもらうから」

「あれっなんかレベル上がってない?確か、パン1つだった気が――――――――」

「それは仁のときだけ。私の問題で間違えたら、昼飯の奢りよ」

「理不尽だ!!」

「ふん、敗者に口出しする権利はないわ。おとなしく私に奢りなさい」


 くそ、今日の晩飯を奢ったあげく明日の昼飯も奢るなんて!!こっちは明日の昼も食えるかわからんのに!!な、なんとか回避する手立てを考えなければ――――――


「あ、じゃあ次の問題やけど」

「うぉい!?」

「うわ!!いきなりなんや。いきなりでかい声だすなや」

「いまこっちは美夏の罰ゲームの回避方法考えてんだよ!後でにしてくれねえか」

「アホか。そもそもお前の勉強不足のせいやろ。あきらめや」

「んなこと言わずにさ。俺も財布がすっからかんなんだよ。明日の晩飯が食えるかどうかもわかんねえのに、美夏の食事代なんて出せるわけねえだろ。だから―――って美夏?」


 さっきから静かにしている友人に、何か嫌な予感がしたので恐る恐る見ると、


「とりあえず、あんたは」

「ひい!!」

「勉強しろ――――――!!!!!!」


 や、ヤバイやられるっ!!と思ったら「お、おきゃくさま~店内で暴力沙汰は困ります」

と、ちょうどいいタイミングで注文した料理を持ったウェイトレスさんがきたので、い

ったん落ち着いて料理を食べることにした。


D・PRGについて少し触れてみました。ただこれ以上このことを深く言及するつもりはありませんので。

次回「Night Talk②」は7月22日の投稿です。基本的に話は全く進まずに新キャラが登場します。お楽しみに

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