Start 「神林恭弥の長い一日」
人生初の小説投稿です。
まずは「自分の書きたいように描く」をスタンスに書いていきます。生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
――――――4月17日 姫川第2学園西街区男子学生寮の一室
今日は学園都市にある全ての学校で一斉の入学式が行われた。
満開の桜、新品の制服に戸惑いながら、緊張した気持ちとこれからの学園生活に心躍らせている新入生。どこか街全体が浮き足立っているこの季節。
去年だったら俺も新入生の一人として歩いていただろうが、今年は2年生に進級するだけの俺たちにとってはラッキーな休日程度なものだ。それに今日は珍しく特に予定も入ってないからな。久しぶりに遅めの目覚めを享受したわけだが、時刻は10時30分。いい加減起きてもいい時間だ。
体を起こし枕元に置いたリモコンを押す。
『では、続きましては学園長先生の挨拶です―――起立っ』
「・・・・・・・・・・・・」
とりあえず完全に覚醒するまでテレビでも眺めてようとスイッチを入れたら、なぜか見覚えある体育館がライブ中継されていた。
「あれって、ウチの体育館か?」
雛壇の上でハキハキ話す女教師の声が寝ぼけた体に響く。
当然、せっかくの休日の朝なのに自分の学校のスピーチを聞くような趣味を持ち合わせているわけもなく無言でチャンネルを回す。
『・・・・・・新入生諸君、入学おめでとう。ワシがこの学園の長をやっとる酒場董源(さかばどうげん)だ。さて、これからワシによる諸君への挨拶とのことだが、長ったらしい話は好かぬのでな。手短に済ませよう。―――姫川研究所が日本で、いや―――』
番組が全く変わってない。しかも今度は見覚えのないおっさんが偉そうに演説していた。
話の流れから学園長らしいが・・・・・・全く知らないな。まあいい。学園長だろうと何だろうと朝からおっさんのドアップが映されていることでテンションが下がるのに変わりはない。
さっさと番組を変えようと、急いでチャンネルを回す。
『・・・・・・干渉プログラム」を開発してから10年の月日がた――』
「・・・」
急いでチャンネルを・・・・・・
『・・・・・・や「次元干渉プロ―――』
チャンネルを
『・・・・・・RGは世界中で利用されており開発当初は世界を震撼させたものだが、まあ諸君らは覚えていないだろう。だが、この発―――』
「なんでだよ!?」
どのチャンネルもおっさんだらけだった。っていうかなんだこれ。新手の嫌がらせか?朝からおっさんのドアップ動画を見せつけて学生の気力を削ろうとするテレビ局の陰謀か?
そんな俺の心の叫びを知る由もなく、おっさんの話は続く。
『と思う。だが、その本質は無機物を任意の場所に投影することか?―――否!身体を強化して人間の限界を超えること?―――否!
D・PRGの本質は世界を『創る』ことだ!!
・・・・・・諸君は携帯電子機器を改装したことはないか?PC所有者ならデスクトップを変えたことくらいはあるだろう?女生徒諸君なら自らを着飾ったことはあるだろう?そして、D・PRGはこの世界を彩っている。そういうものなのだ。
この言葉の真意を理解している者はおそらく一人もいないだろうな。この学び舎での3年間を通してワシが諸君らに伝えたこの言葉の真意を理解できること、そしてD・PRG研究において最前線で活躍する人材となることを期待しておるぞ。―――以上!!』
『学園長先生。ありがとうございました。次は、在校生挨拶です―――新入生、着席!』
おっさんと入れ替わるように今度は女の子が壇上に上がっていく・・・・・・さて、そろそろおきるか。
『新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。次期生徒会長の2年、須藤です――』
「・・・・・・起きよっと」
ちょうどきりが良かったのでテレビの電源を切った。無意識のうちに学園から支給されたスマートフォンを見るとほぼ正午の時刻を映していた。それとメールを受信したアイコンがある。
寝ぼけ眼をこすりながら二度寝からの目覚めで半覚醒のままベッドから這い出る。さっさと顔洗ってくるか
「でも、その前に・・・・・・おお、12件もメールが入ってら」
こんなに来ているとは。予想外だ。早速メールを開いてみる。
「えっとーなになに・・・・・・仁から1件『今日遊ばん?』と、美夏から2件『いい加減金かえせ』『返信が待てないから直接乗り込むわ』って、マジかよ!」
送信時刻を見たら1件目が10:12、2件目が10:15になっていた
ていうか1件目送ってから3分後にもう待てないって短気すぎだろ。小学生かあいつは。ふと、思い出した。
――――そういえば前もこんなことがあったな・・・・・・確かあの時は乗り込むって言ってから2時間後に我が家の鉄製のドアを笑顔で木っ端微塵にしたんだっけな。
「あ、あはは・・・・・・思い出すだけで震えてきやがった」
寝ぼけ眼が一気に覚めた。このままだと修繕費でまた貯金が吹っ飛んじまう。何とか対策を練らなければ・・・・・・
「メール送信から1時間以上経ってるって事は美夏は何時来てもおかしくない。なら今すぐにでも行動しなくては」
完全に覚醒した頭で一度状況を整理する。高校2年生の男子の部屋。女の子には見せられないそのての本が散らばってる床。そんな部屋に美夏(恐らく怒っているであろう)なんていれたら・・・・・・
「・・・・・・良くてゲーム系が全消失。最悪、家が半壊するな」
つい最近、玄関を破壊させた赤毛の女友達の姿を思い出し、ガタガタと震えてきた。よ、よし、いったん落ち着こう。そうだ、まだ見てないメールもあったな。
「さ、さて他のメールは『なんか面白そうな気配がしたから今日お前ん家に行ってええか?まあ、嫌っちゅーても行くけど』・・・・・・仁」
相変わらず勘のいい親友だ。人が困ったときは毎回現れる。ある意味天才だ。
「そんで、残りのメールは、・・・・・・全部メルマガ」
12件中8件がメルマガ、2件は脅迫メール。我ながら悲しくなってきた。とはいえ悲しんでる暇はない。
「とりあえず、美夏がくる前に速攻で防衛準備しないと―――」
――――――ピンポーン
『もしも~し。恭弥くんいますか~10秒以内に出なかったら玄関が火の海になるよ~』
こ、この声は、まさか・・・・・・
非常にも鳴ってしまったチャイムの音。そして去年からずっと一緒にいた凶悪な女友達の声が聞こえた。
いつもだったら耳当たりのいい鈴のように澄んだ声が今日に限っては一瞬のうちに体を強張らせた。おそるおそるインターフォンを手に取る。
・・・・・・作戦はまず丁寧な挨拶から入り当たり障りのない話題を振って行く。そしてこちらの流れを作ったら、自然な流れで明日に持ち越す。よし、それじゃ――――
「ど、どうも、美夏さん。本日もご機嫌麗しゅう―――」
『そんな挨拶はいいからさ・・・・・・とりあえず、中、入れろ―!!』
「なああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
突然、強烈な打撃音と共に、リビングに灰色で長方形の鉄板が吹っ飛んできた。
・・・・・・間違いない、これ玄関のドアだ。
わずか3秒でウチの玄関と俺の作戦を台無しにした張本人に恐る恐る視線を向ける。
女の子が玄関で片足を上げていた。その顔は穏やかな笑みだが目は全く笑っていなかった。俺には分かる。こいつ、めちゃくちゃ怒ってる・・・・・・!!
竜胆美夏(りんどうみか)。
燃えるような紅髪のツーサイドアップにクリクリと大きな眼、休日にも関わらず制服を着てきた元同級生兼現役学生会会計。背が低いことを気にしているぺったんこ。そして、現在俺が最も会いたくない女子が、にこやかな笑顔で俺を見ていた。
さ、最悪だ―――!!この女、人の話し聞く前に乗り込んできやがった。や、ヤバイ、主に俺のゲームと命が。
そんなことお構いなしに、美夏は靴を履いたまま足早にこっちに向かってくる。圧倒されて後ろに下がっていく。
「や、やあ美夏。とりあえず落ち着こう、な。ここは日本だ。土足で家に入っちゃいけ―――グオッ!?」
「この貧乏人・・・・・・さっさと金返しなさいよ!!!!!!」
「ちょ、ちょっと待て、だから、って首、絞めるな。い、息、できな―――」
「暴れんな!!首が絞めにくいでしょ」
「お、おとなしく、首絞められ、たら死ぬだろ!!!」
「大丈夫よ。4分の3殺し程度に痛めつけるだけだから」
75%くらい殺されるらしい。ってかなんだ、4分の3殺しって。意味が分からない。
ってかいくら金を返し忘れたからってここまですんのは理不尽だろ。ああ、だんだん腹が立ってきた。
「つー、か。美夏!なんで、いきなり、来たんだよ!!しかも着いて早々殺しにかかるとか―――意味がわからん」
「なんで?―――そりゃ、あんたのせいで・・・・・・あんたのせいで私がヤバイことになったからよ~~~~!!!!」
「意味わかんねえよ!!」
笑顔から般若の如く怒り顔になった美夏がグイッと、さらに顔を近づける。と、美夏と俺の体はピッタリと密着して体温も伝わってくる位で・・・・・・って
「ダ~~~~揺らすな、絞めるな、顔近づけんな!!」
般若顔とはいえ、美夏は一応美少女の部類に入る女の子。こんな状態とはいえ、吐息がかかるくらい密着すると男の子としては、その、結構恥ずかしい―――――まあ、それ以上に命の危機を感じているが。
「ち、近いって!!美夏近い!!」
「あぁん?何がよ!?」
「だから!!顔!!」
「顔?顔って・・・・・・」
俺の説得が通じたのか、美夏は手を緩め現状を確認する。解放こそされなかったが少しは楽になり、ほっとした。
昼間の学生寮。男女2人きり。互いの息がかかるほどに至近距離。髪からはほのかにオレンジの香りが鼻をくすぐり、今にも心臓の音も聞こえてきそうなくらいの静けさ。
「~~~~~~~っ!!」
「よし、落ち着いたな。それじゃあ話を―――「きっ」ん?」
「きゃ~~~~~~~~!!!」
首を絞めてた両腕がいきなり赤色に光ったかと思うと腕を放す。
解放されるが次の瞬間、美夏は発光した両手は俺の胸に押し付け、足腰で練り上げた力を腕に伝え、一気に押し出す。一瞬の浮遊感。それと同時に体が吹き飛び、そのまま窓ガラスを突き破り室外へと放り出される。
――――――『双纏手(そうてんしゅ)』
「バカ、アホ、金なし、ド変態~~~~~~~!!!!!」
「グハァァァァアアアア!!!!???」
部屋からそんな声が聞こえるが、こちとら胸部強打から10mのノーロープバンジーを現在進行形でやっているんだ。気にしてる余裕はない。・・・・・・あ、なんか視界がかすんできた。
あまりにも打撃が強すぎたのか、俺の意識は朦朧としていき、そして、
「(・・・・・・くそ、せめてエロゲーだけでも生きてくれ――!)」
最後までゲームのことを考え、そして視界が真っ暗になった。
☆
「と、ゆーワケ。仁、分かった?」
「・・・・・・なるほどなぁ。だから恭弥が空から降って来おったんか。はぁ~、美少女が落ちてきたんかと受け止めてもうたわ」
「・・・・・・・・・・・・」
「んで、こいつは美夏の膝で寝てる、と・・・・・・なんちゅーか、相変わらず、美夏は恭弥に対して手厳しいの~。好きなんやったらもっと優しくしたればええのに」
「べ、べつにあんたには関係ないでしょ。と、とゆうか学生寮の3階から落ちて気絶とか。貧弱すぎ」
「いや、どう聞いても気絶させたのは美夏の技のせいやろ。ってか、こんな真昼間の閑静な学生寮で一般生徒相手に『プログラム』を使ってもええんのか?学生会会計殿」
「ふんっ、借金滞納してるやつは公務執行妨害扱いになるからいいの」
「そりゃ学生会費だけの話やろ」
「私のポケットマネー=学生会費よ」
「今、さらりととんでもないこと言いよったな」
「ふんっ、どっちにせよ期限までに返金しないほうが悪――――ん?」
「・・・・・・うっ・・・・・・」
「おっ、そろそろ起きそうやな――――んで、美夏、どうすんや」
「もちろん降ろすけど・・・・・・なんか問題ある?」
「いや、せやからひざまk「な・に・か・問・題・が」―――やれやれ、起きとるときもこんくらい素直ならなぁ~」
「う、うるさいわね・・・・・・うぅ~~~」
「ま、美夏のテレ顔も十分価値があるからええけど」
「って、仁!!あんた、何撮ってんのよ!?」
「ん?そりゃ、『テレながら好きな人のために膝枕する会計』の写真が売れへんわけがないやろ。いや~ありがとうな。次の校内オークションのいいネタが出来たわ」
「こ、こらっ、仁!!!!」
☆
・・・・・・そして俺が目覚めたのは午後3時42分。気絶時間は約4時間。まあ普通の高校生にすれば結構長い方なのかな。そんなこと暢気なことを思っていた・・・・・・そのとき俺は、6時間後に今後の人生が大きく左右されるような事件に遭うことなど微塵にも思っていなかった。
次回から前書きの部分には設定を書いていきたいと思います。
自分で書いてて「設定が懲りすぎじゃね?」と思い、この主に学園都市のことや、D・PRGについて書いていきます。質問は・・・・・・どうやって受け付ければいいのでしょうか?次回までに調べてきます。