4、でも、最低限の文章作法ってあるよね、という話
文章作法っていうのは、昔と今では随分様変わりしてますよ、というのが前回の話でした。
初めて小説を書かれる皆様においては、文章作法なんていう堅苦しいことを抜きにして小説を書いていただければなあと願っています。
でも、それだけじゃあ、「どんなふうに書いてもいいんだな!」と誤解されてしまいかねないので、どんな小説の形であっても共通する決まりのようなものを、今回は皆さんにお伝えできればと思います。「え? そんなもん、あるの?」ですって? あります。だって、ラノベを書く人もケータイ小説を書く人も普通の小説を書く人も皆日本語を使っているわけで、日本語である以上は、相手に物事を伝えるために、まったく同じルールを使っているんですよ。
というわけで。
皆さん、「主語」と「述語」ってご存知ですか?
小学生の方ですともしかするとご存じないかもしれませんが、中学生以上の方だと英語なんかで口を酸っぱくして叩き込まれることなので、名前くらいは聞いたことがあるかと思います。
あれこれと説明するよりも、まずは例文を出しましょう。
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明日は晴れだと聞いたので、僕は今日、遠足のおやつを買いに駄菓子屋へと行った。
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この文章の、一番大事な個所はどこでしょう? というのが、主語述語のポイントです。
大事、というと誤解を受けそうなので、言い換えましょう。
この文章を削りまくって、最低限、意味が通じるところまで削って下さい。
そうすると、主語述語が現れます。
さあ、ちょっと時間を取りますのでやってみてください。五分間程度お時間を取りましょう。
(五分後)
では、答え合わせです。
まず、「明日は晴れだと聞いたので、」というところはこの文章においては削っても意味は通じます。それが証拠に、「僕は今日、遠足のおやつを買いに駄菓子屋に行った。」と読んでみても、最低限、意味は通じますよね。
同じように、「今日、」というのも削れます。また、「遠足のおやつを買いに」も削れそうです。そして、「駄菓子屋に」というのも、削っちゃって大丈夫そうです。
ということは、残っているのは――。
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僕は、行った。
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です。
このうち、「僕は」という部分が主語、「行った。」という部分が述語となります。
(少し難しいことを言うと、主語というのは、その一文の中での主役に相当するもので、述語というのはその主役が何をしたか、どういう状態かを端的に示した言葉のことです。)
実はあの例文、結構長い文章ですが、「僕は、行った。」ということを相手に伝えたい文章なんです。
で、なんですが、文章を書いていると、時折、主語と述語がちぐはぐになってしまう場合があります。
たとえば、こんなの。
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花屋に行くと、僕はきれいな花が咲いている。
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なんか、文章としてなんとなくムズムズしませんか?
これをよく見ると、「花が咲いている」という主語述語があるようにも見えますが、「僕は」という主語に対する述語が見当たりません。なので、文章として変なのです。結局、僕は何をしたのかが分からない! みたいな状況なんですね。
これ、「述語が行方不明」などと笑われる現象です。なんとなく意味が取れなくてイライラする文章なんです。
なので、皆さま、文章の主語と述語を意識なさると、随分と文章が安定すると思いますよ。
P.S.
なお、日本語はかなりいい加減な言葉で、主語を省略してもいい(たとえば、「僕は○○した」という文のあとに「僕」の行動が続くのであれば、そのあとの文章に「僕は」とことわる必要がない)うえ、その他の言葉の順序に確たる決まりがないという性質があるので、主語述語が迷子になってしまいやすいんです。でも、逆に主語述語のつながりさえしっかりしていれば、割と意味が通じる言葉でもあります。