3、文章作法って何さ! という話
WEB小説の世界をふらふら歩いていると、よくこんな言葉が飛び交っています。
「文章作法を守れ!」
「文章作法から勉強した方がいいんじゃないですか?」
でも、これを読まれている第一作目、第二作目で悩んでいる方からしたら、「文章作法ってなんじゃい!」ということになりますよね。
今回は、そんな文章作法の話です。
ざっくり言うと、文章作法というのは、文章を書く際の細かい決まりのことです。
小学校の時、原稿用紙の使い方って教わりませんでしたか? タイトルは三マス下げてから書く、とか、文章の書き出しの際には一マス空ける、とか。あれは、原稿用紙を使う際の文章作法です(なお、出版社の多くもあの文章作法です。というか、出版社の文章作法だったものが、国語で教えられるようになったんですけどね)。
昔の「文章作法」とは、まさにこの出版社由来(国語で教わった)文章作法のことでした。なので、二十年くらい前、もしわたしがこのエッセイを書いていたなら、「じゃあ国語の教科書を読んでねー!」の一言で済んだんですが、今はそうもいかなくなってしまいました。
最近、この文章作法が随分と枝分かれしてきたなあ、という感覚があります。
たとえば、少し前に一世を風靡して今では市民権を得た観のある「ケータイ小説」。あれを読むと、
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あたしは、ひとりだ。
カレシだっていないし、友達だっていない。
面白いことなんてない。
だから、あたしは夜のシブヤに行くんだ。
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のような(文例がヘタクソなのはごあいきょう。わたしの腕に期待するのが間違いというものです)、学校で教わるような文章作法に則らない作法で書かれています。
でも、ケータイ小説がこういう書き方になったのにはそれなりに理由があって(あとで書きます)、この書き方はこの書き方で支持された書き方なのです。つまりこれは、ケータイ小説における「文章作法」なのです。
また、ライトノベルの世界でも、最近は新しい書き方が出始めています。
たとえば。
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「「「「「「「「「ななな、なんだってーーー!」」」」」」」」」
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「多重かぎかっこ」と呼ばれるやり方ですね。これは、色んなキャラクターたちが声を揃えて同じことを言った時に使われるものです。でもこれ、これまでの出版社の文章作法では、かぎかっこは重ねちゃいけなかったんです。でも今では、ライトノベルの世界では普通に使われている表現です。
普通の小説(言い方が変ですけど、ライトノベルに対した言葉だと思って下さい)でも、最近はかなり文章作法に変化があります。
たとえば、森見登美彦さんの小説「太陽の塔」という作品の最後の辺りで、地の文(セリフではない文章のことです)がキャラクターたち(エキストラたち)の放つ言葉によって遮られて全体像が見えない、という演出がありました。あれも厳密には文章作法には則っていません。
何が言いたいのかというと、今では「文章作法」なるものは、小説の種類によっても変わってくるし、常に形を変えているんだ、ということを言いたいのです。
じゃあどうしたらいいの! という話になります。
さて、ここで生きてくるのが、「2」でお話ししたことです。
自分が好きだと思った小説の文章作法を使って書けばいいんです。
ケータイ小説が好きなら、その方法で。ラノベが好きなら、その方法で。普通の小説が好きなら、その方法で。
あれこれと細かくわたしから言うよりも、そのほうが作法を覚えるのも早いと思います。
P.S.
ぶっちゃけ、文章作法というのは、自己満足に近い部分が大いにあります。プロになりたいのであればそれなりに気を払わなくてはなりませんけど、第一作目、第二作目を書こうというあなたにとっては、もしかするとあまり意識する必要のないものなのかもしれません。