20、WEBという場について
このエッセイを読んでいるということは、あなたは何らかの手段によってウェブブラウザを開いているはずです(パソコンやケータイの画面越しに見ているってことです)。そして、小説を書いたあなたはきっと、「小説家になろう」のような小説投稿サイトや、ブログやHPといったページで自作を発表しようとしているのではないでしょうか。
ウェブという場は本当に便利です。
わたしがまだ学生だった頃、ITなんて言葉はどこにもありませんでした。今のようにWEBという場がなかった頃、自己表現の場はすごく限られていました。小説なんかの場合ですと、学校の文芸部に入って季刊誌を作ったり、あるいはサークルに入って同人誌を作る、あるいは出版社に持ち込んでプロデビューを狙うくらいしか手がありませんでした。そう思うと、クリック一つで世界中に自作を発表できる現代は本当にすごい時代です。
けれども、それゆえに、難しさもある場だということを覚えておいてください。
まず、WEB小説は制限を設けない限り世界中に向けて発信されているものです。
これは別にWEB小説だけに限りません。ブログの内容なんかもそうですね。
WEBというのは世界中に張り巡らされたネットワークによって成り立っています。そして、WEB小説はそのネットワークの上にしっかりと乗っかって存在しています。
つまりそれってどういうことかというと、あなたの小説は、世界中の色んな人、もっと言い方を変えれば、あなたがこれまで出会ったことのないような人々の目にも止まるということなのです。
WEB小説を書いていると、たまーに変な人と出くわします。
自分の小説は世界最高のものであるからして批判は許さぬ、お前たちの小説はダメダメだから世界最高の頭脳で以って徹底的に批判してやる……、というような、自分の姿を実際よりも大きいものだと勘違いしている人。ツイッターでわたしの小説を批判するな、するんだったらわたしの目の届くところでしろ……、という「わたしがルール」な人。俺の小説は今後何百億の価値を生むから今のうちに買っておけ……なんて人もいました。『プロを目指してます』という割に、ちょっと小説の不備を指摘しただけで怒っちゃう、なんて言う人もいます。ああ、あとは、小説投稿サイトを出会い系と勘違いしている人もいますねえ。
上の例はぶっちゃけメーターを振り切っちゃってる人たちなので眉に唾をつけて相手にしなければいいんですが、むしろ障害となってくるのはちょっとした考え方の違いです。
前の方に書かせて頂きましたが、小説を書くことの楽しさっていうのは人の数ほどあります。
ただ小説を書くのが好きな人。
上手い小説を書いて向上し、仲間と切磋したい人。
書いた小説を褒められるのが好きな人。
小説を通じて仲間と楽しい時間を過ごしたい人。
本当に色々います。でも、どれが正しいわけでも間違っているわけでもないのが難しいところです。変な話、他人に迷惑を書けない限りにおいてはどんな考えであっても間違いではありません。
しかし、WEBの場においては、その小さな違いが案外見えにくいんですね。そして、その違いがある場面で明らかになると、喧嘩になったり言い争いになったりしてしまい、結果としてWEBでの活動に嫌気がさしちゃうなんてことになったりするのです。
WEB小説の世界には競作企画というものがあります。要は、皆で一定のテーマに沿った作品を出し合って読者さんUPを狙ったり、皆で感想を述べ合ったりする企画のことなんですが、その企画にもけっこうカラーがあります。例えば「小説家になろう」なんかでは、公式企画の「夏ホラー企画」とか「童話祭」などがありますが、あれは参加者がめちゃくちゃ多く、しかも運営の側があまり作者の間でのあつれきが出ないような形にしているので、きわめてノホホンとした雰囲気です。でも、「なろう」有志によって運営される個々の企画の中には、「お互いに切磋琢磨していい小説を書こうぜ!」というガチなものもあります。
ともかくですね、色んな人がいて、色んな考えが渦巻いているのがWEB小説の場なのです。
じゃあ、どうしたらいいの? という話になります。
簡単です。あなたのスタンスを決めればいいのです。
あなたは、どういう小説ライフを送っていきたいんですか? 胸に手を当ててそれを考えてみてください。あくまで正直になりましょう。『切磋琢磨する人たちの方がカッコいいから』なんて言って、本来の自分の声を無視すると、あとで困るのはあなたです。繰り返しますが、小説という趣味において、正解のスタンスなんてありません。
そして、自分の気持ちが決まったら、その気持のままに行動すればいいのです。
たとえば、仲間が欲しいのでしたら、似たような作品を書いている方に感想を書いてみましょう。あるいは、活動報告を利用する手もあるかもしれません。
切磋琢磨したいのだったら、ガチな企画を見つけてアタックしてみるのもいいかもしれません。もしかするとかなり厳しい感想を貰うことになるかもしれませんが、それこそがあなたの目的だったはず。それを糧に頑張ってみましょう。そして、そこで知り合った人と友人になって、切磋琢磨ができるかもしれません。
という風に、WEBの場では自分のスタンスを明快にしておいて、そのスタンスに合う人たちと付き合うようにすればトラブルに巻き込まれる機会が格段に減ります。
WEBという場は、自分の許容範囲に収まらない(あなたから見れば)変な人が隣にいるかもしれない、そんな場なのです。
それだけは、WEBという場を利用するからには覚えておいてください。




