19、小説を書いてみて面白くなかったという人は……。
さんざん、「面白く書けばいいんですよー」と力説してきたこのエッセイですが、これから三回ほど、そうとは言っていられない話を三つほどさせていただければと思います。今回、これからお話しするのは、小説というものを趣味にしようとしている皆さんにとっては、もしかすると死刑宣告に近いものになってしまうかもしれません。
もしも、「小説を書いてみたんだけど何が面白いのか判らなかった。苦痛でしかなかった」、という人は、小説を書くことから離れた方がいいと思います。
これはあくまでわたしの考えなんですが、趣味っていうのは、「楽しい」という感覚によって支えられている活動なんではありませんか。
ぶっちゃけ、小説を書くことであなたのお腹が膨れるわけでも(あなたがプロの小説家ならば膨れるでしょうが、このエッセイはそういう方向けに書かれたものではありません)、世界の恵まれない子供たちが救われるわけでもありません。趣味っていうのは、他人から「なんでお前はこんなものに興味あるんだよ」と後ろ指を指されながらも好きでしかたがないからやっていることです。
小説も、同じです。
もちろん、小説を書いていると辛い瞬間っていうのは確かにあります。でも、それを越える楽しさが確かにある、と確信を持って言える人が、小説を趣味に出来る人です。
もし、面白さが分からなかったという人は、小説を書くという作業に向いていなかった、ということなのです。
でも、そんなに卑下することはありません。
小説を書く、という行為は、難しい言葉で「自己表現」といいます。でも、世の中には自己表現の手段で溢れています。
たとえば、ギターとかベースを持ってバンドを組むのもいいでしょう。絵筆を持って写生に勤しむのもいいでしょう。はたまたブログを開設して小説の批評をするのもいいでしょう。最近ではニコニコ動画なんかでゲーム実況をするですとかWEBラジオやショート映像作品をUPするという道も用意されてます。
最近では、自己表現の敷居は低いんです。
小説を書こう! と思い立った人というのは、この自己表現がしたくてうずうずしている人です。なので、そういった自己表現の方法に当たってみて、自分に合ったものを探すというのも一つの考え方なんですね。
私事で恐縮ですが、わたしもけっこう迷走した挙句小説に落ち付いています。
若い頃は音楽とか詩をやっていましたし、また大学に行く時には学問で自己表現しようとしてました。でも今は小説という自己表現の道具を見つけることができました。
小説が駄目だった、というあなた、あまり落胆することはありません。もしかしたらあなたは、音楽で伸びる人なのかもしれません。演劇で伸びる人なのかもしれません。はたまたわたしの思いのよらないような何かで伸びていく人なのかもしれません。
あなたはきっと、何かを表現したい人なんです。そして、その道具を探しているところなんです。だったら、小説にだけ固執しないで、色んな方面に目を向けてもいいんではないかなと思います。




