15、中盤の注意点
小説を書き始めた辺りというのは案外無我夢中のうちだったりします。それはそうで、最初辺りでは案外やることが多いんですね。たとえばキャラクターや世界観の紹介とか。そもそも、紙の上に自分の住む世界ではない別世界を作り出す作業なので、楽しさもさることながら、けっこう気を払う場面が多いのです。たぶん、小説を初めて書かれている皆さまも、なんとなくその楽しさと大変さが分かってきたのではないでしょうか。
でも、いつまでもそんな大変というわけではありません。
もうそろそろ、そういう大変さとは無縁になってきます。
最初辺りの執筆を頑張ると、ある現象が発生します。
途中で詰まる、ということがなくなるんですね。
執筆をするうちに、構想段階であやふやだった設定が煮詰まってきて、形になるんです。そうすると、もはや悩むことは少なくなってきます。
よく、「執筆に行き詰る」といいますが、その理由は三つ程度に分類が出来ます。
①構想上の不備で矛盾が出てくる
②ネタが浮かばない
③言い回しが思い浮ばない
この三つではないかなー、と思うんですが、ぶっちゃけ、①②は事前に構想をしっかり練っておけば解決する問題です。なので中盤から終盤にかけてはそんなに悩まない(はず)なんですねー。そして、③はどれだけ小説向きの言葉を知っているかにかかっている問題で、実はこれも経験がものを言います。
なので、初めて小説を書かれる皆さんは、中盤においてはとにかくガガーッと書いてしまいましょう。
そうですね、でも、皆さんにアドバイスできることがあるとしたら、「あんまり背伸びした言葉を使わないようにしましょう」ということでしょうか。
小説を書いていると、「やっぱり難しい言葉とかを使った方がいいんじゃないか」とか、「かっこいい言葉を選びたい!」という欲が出てきて、国語辞書とか類語辞典をひっくりかえしちゃいがちなんですが、それ、あんまりやらないほうがいいです。
小説っていうのはどういう形にせよ、あなたの心のありようを盛り込むものです。なので、あなたの心に根付いている言葉を使わないと、途端に小説からあなたの心が抜け飛んでしまいます。自分にとってありふれた、自分の心に根付いた言葉を使って書くのが、一番いいのです。
でも、そうすると同じ言葉ばっかりになっちゃいますけど……、というあなた。
最初なので、それでもいいんじゃないですかね。
小説の中で同じ言葉ばっかりになってしまう(難しい言葉で、「語彙が少ない」といいます)のを気にするのは、そうですね、五作目を書く辺りから気にすればいいことなんではないですかね。
むしろ今の段階では、「自分の心に根付いた言葉」を見つけて、それをもとにお話を書くとうまくいくんじゃないかなー、と思っています。