9、構想について④(筋の練り方)
さて、構想について、最後の要素の説明です。
「筋」です。
でも、筋ってなんでしょうか。よく、お話の筋とか言いますけど、それってなあに?
簡単に言うと、お話で起こる出来事の山や谷のことです。
たとえば、童話「桃太郎」で言えば、
①じいさんが大きな桃を拾う
②その桃から子供が生まれ、桃太郎と名づけられる
③桃太郎が成長し、鬼退治に出かける
④仲間を得て鬼が島へ
⑤鬼退治をする
⑥めでたしめでたし
というお話の流れがあります。
あれ、「きび団子をあげるくだりは?」とか、「おじいさんが柴刈りに行く話はどうした?」とか、「おばあさんは出てこないの?」と疑問を持つ方がいるかもしれませんが、実は桃太郎というお話において、きび団子やおじいさんの柴刈り、おばあさんの存在なんていうのはそこまで重要な個所ではありません(なお、桃太郎原作においては、おばあさんは重要な役割を演じるのですが、ここでは割愛します)。とにかく、このように、お話の一番大きな流れのことを筋と呼びます。
では、筋ってどうやって作ればいいんでしょうか。
実は、世の中よくできているもので、昔から筋の作り方にはいくつかの形があることが知られていて、よく筋の話題の時に持ち出されます。
たとえば、この手の話でよく出てくるのが、「起承転結」です。
つまり、
物語のおこりを説明する「起」。
「起」で語られたことを広げる役割を負う「承」。
「承」から一転、違った様相を提示して驚きを与える「転」。
そして、起承転で語られた物事をすべてまとめる「結」。
この四つでお話が出来る、というのが「起承転結」論ですね。
他にも序破急とか起承鋪叙結とかあるんですが、まあとりあえず置いておきます。もし詳しく知りたい人はググって下さい。
でも、ぶっちゃけた話、こういった分類は、あんまり初心者の皆さんにとっては有益なものではない気がします。
むしろ、初心者の皆さんが気にしなくてはならないのは、もっと別のところです。
筋を考えるときに気をつけなくてはならないのは、小説というものが背負っているあるルールを知ることです。
難しい言葉で、それを「因果律」と呼びます。
何それ難しい。そう思った方、ちょっと待って下さい。そんなに難しい話じゃありません。
因果律とは、「原因があるから結果がある」というだけの決まりです。
え? そんなことなの? でも、これが大事なことなんです。
もちろん、世の中にはいろんな小説があるのでいかんとも言い難いんですが、小説世界にあっては理由もなく空からパンが降ってきてはいけないんです。小説において空からパンが降ってくるという結果があるからには、「飛行機の積み荷が落ちてきた」「神様が下してくれた」「宇宙人の贈り物だった」という原因が必要なんです。
ちなみに、わたしたちの住むこの世界は、実は偶然でした、ということがたくさんあります。でも、小説世界の場合、実際の世界よりも少しだけ【原因と結果】の結びつきが強いように見受けられます。
まーそんなことはさておきまして、実は、筋というのは、この【原因と結果】をつないだものなんです。
先の桃太郎を例に出すと、
①じいさんが大きな桃を拾った(原因) → 桃太郎がこの世界に生を受ける(結果)
②桃太郎が生を受ける(原因) → 桃太郎が成長する(結果)
③鬼が人々に乱暴を働く(原因) → 鬼を退治しようという風潮が生まれる(結果)
④鬼を退治しようという風潮が生まれる(原因) → 桃太郎が鬼退治を志すようになる(結果)
⑤桃太郎が鬼退治を志す(原因) → 鬼退治に出かける(結果)
⑥鬼退治に出かける(原因) → いろいろあって鬼を退治する(結果)
という風に、ずっと原因と結果で説明できるんですね。
世の中で言う「筋が通っている」という言葉、ありますよね。あの言葉はそもそも、この【原因と結果】が上手く数珠つなぎになっていることを指す言葉なんですね。
とにかく、初心者の皆さんは、この【原因と結果】の数珠つなぎをイメージしながら筋を練ると、割と上手くいくのではないかと思いますよー。