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三日目・前編
今日も足音は同じ速度で降りてきた。
石段を踏む速度は均一で、迷いがない。
この地下に慣れている者の歩き方だ。
彼はいつもの距離で止まる。
ヴェリアは笑った。
「今日も処刑の日取りは決まらなかったか?」
唐突に切り込む。
彼の瞼がわずかに動く。
「決めるのは私ではない。」
「だろうな。お前は伝えるだけの男だ。」
侮蔑を込める。
彼は椅子を引く。
音が乾いている。
「焦っているのか。」
「焦る?何を」
「時間だ。」
ヴェリアは肩をすくめる。
「私は革命軍だ。死ぬ覚悟ぐらいはある。」
わざと強く言う。
感情の揺れの糸口を見つけたい。
だが、彼の表情は動かない。
「覚悟と現実は別だ。」
淡々とした返答。
面白くない。とヴェリアは思う。
崩れない。
なら、別の角度だ。
「帝国は退役者まで引っ張り出す程人手不足か?」
わざと踏み込む。
今度は、ほんの一瞬沈黙が落ちる。
「なぜそう思う。」
問い返し。
否定しない。
ヴェリアは目を細める。
「現役の匂いがしない。」
それ以上は言わない。
彼は何も言わず机に書類を広げる。
逃げた。
話題を切った。
ヴェリアは内心で舌打ちをする。
なら、見せてもらう。




