十一日・後編
「そっちは?」
男を見る。
「答えはないのか。」
男は少しだけ肩をすくめた。
「色々ある。」
「濁すな。」
「状況による。」
「便利な言葉だな。」
男は少し姿勢を変えた。
椅子が小さく軋む。
「仲間が死んだ時。」
そう言った。
ヴェリアの目が少し細くなる。
「復讐か。」
「そうなる兵士も多い。」
「なるほど。」
ヴェリアは小さく息を吐いた。
「単純だな。」
「単純だ。」
男は否定しない。
「だが長く戦う兵士ほど、単純になる。」
ヴェリアは黙る。
男の顔を見たまま。
少しだけ考える。
「経験談か。」
「まあな。」
短い沈黙が落ちた。
地下牢の空気は重い。
ヴェリアが口を開く。
「もう一つある。」
男の視線が向く。
「兵士が死ぬ時。」
ヴェリアは言葉を探すように一瞬黙る。
「戦う理由を忘れた時だ。」
男はすぐには返さなかった。
ヴェリアを見る。
その言葉を考える。
やがて言う。
「興味深い。」
ヴェリアは肩をすくめた。
「適当だ。」
「そうは思えない。」
男はゆっくり立ち上がる。
椅子が石床を擦った。
「今日はここまでだ。」
ヴェリアは少し顔をしかめる。
「また短いな。」
「十分だ。」
男は椅子を元の位置に戻す。
扉へ向かう。
足音が規則的に響く。
扉の前で止まる。
振り返る。
ヴェリアを見る。
「君は」
少し考える。
「面白い答えを持っている。」
ヴェリアは小さく笑った。
「退屈しのぎだ。」
男は何も言わない。
扉を開ける。
廊下の灯りが差し込む。
男は外へ出る。
扉が閉まる。
鍵が回る。
足音が地上へと上っていく。
静けさ。
ヴェリアはしばらく動かなかった。
石壁を見ている。
やがて小さく息を吐いた。
「……兵士、ね。」
鎖がわずかに鳴った。




