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ミモザを君に  作者: 水槽の中の脳(腐り気味)
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十一日・前編

今日も少し間隔の空いた一定のリズムで

足音は階段を降りてくる。


男が入ってくる。


いつものように背筋は伸びている。

そしていつものようにゆっくりと部屋の中央まで進む。


扉が閉まる。


鍵がかかる音。


地下牢はすぐに静けさを取り戻した。


男は椅子を引く。

石床を擦る音が短く響く。


腰を下ろした。


ヴェリアは壁にもたれたまま、その様子を見ている。


男が口を開く。


「昨日の話だが。」


低い声が石壁に軽く反射する。


ヴェリアはゆっくり瞬きをした。


「戦場のか。」


「ああ。」


男は少し間を置いた。


地下牢の空気は湿っている。

どこかで水が落ちる音がかすかに響く。


「兵士は、いつ死ぬと思う。」


ヴェリアの眉がわずかに動いた。


「妙な質問だな。」


「答えられないか。」


「答えはある。」


ヴェリアは視線を外した。

石壁を見る。


しばらく黙ってから言う。


「死ぬ時だ。」


男の口元がわずかに緩む。


「それはそうだ。」


「違う答えを期待してたのか。」


「少し。」


ヴェリアは男を見る。


黄色の瞳が静かに向く。


「例えば?」


男は椅子の背に軽く寄りかかった。


「恐怖した時。」


ヴェリアは鼻で笑った。


「臆病な答えだな。」


「現実的だ。」


ヴェリアは首をわずかに傾ける。


「戦場で恐怖しない奴はいない。」


「そうか?」


男は静かに言う。


「君はあまり恐怖しなさそうだ。」


ヴェリアの眉が少し上がる。


「買いかぶりだ。」


「そうは見えない。」


「見たことあるのか。」


「何を。」


「私が怖がるところ。」


男は少し考えた。


地下牢は静かだ。


水滴の音がまた落ちる。


「ない。」


男は答えた。


ヴェリアは小さく肩をすくめる。


鎖がわずかに鳴る。


「だろ。」


淡々と言う。


「戦場で怖がる余裕はない。」


男はゆっくり頷いた。


「それも一つの答えだ。」


ヴェリアは拘束された手をわずかに動かす。


鉄が触れる乾いた音が響く。

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