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十日目・後編
男は言った。
「戦場で一番重要なものは何だと思う。」
ヴェリアはすぐ答える。
「冷静さ。」
男は頷く。
「私もそう思う。」
ヴェリアは少しだけ目を細めた。
「意見が合うな。」
「珍しいか?」
「敵だからな。」
男は何も言わない。
少しだけ考えるような顔をする。
やがて立ち上がった。
「今日はここまでだ。」
ヴェリアは眉を動かす。
「また短いな。」
「十分だ。」
男は椅子を戻す。
扉へ向かう。
そこで少し止まった。
振り返る。
「君は」
言葉を探すように一瞬間がある。
「戦場を知っている。」
ヴェリアは肩をすくめた。
「そっちもだろ?」
男は否定しない。
そのまま扉を開けた。
外の光が少し差し込む。
男は出ていく。
扉が閉まる。
足音が遠ざかる。
静けさ。
ヴェリアはしばらく動かなかった。
やがて小さく息を吐く。
「……なるほど。」
鎖がわずかに鳴った。




