一日目
カツン…カツン…
硬い石の階段を誰かが降りてくる音がする
今日が何月何日なのかヴェリアはもうわからない。そのくらいここの景色は変わらない。
どれだけの傷を負わされただろうか。
無抵抗でいるしかないヴェリアはそれでも一向に仲間の事を口にはしなかった。
また今日も苦痛の時間が始まるのか…
そう思うと心が暗くなるがそれを表には出さずに音のなる方を睨みつけていた。
「『反逆の英雄ヴェリア』機嫌はどうだ。」
少し小太りな男が声をかけてくる。
「ご機嫌伺いとは珍しい趣向だな。捕虜への配慮が行き届いているじゃないか」
嘲笑を含んだ彼女の低い声が地下牢の壁を打ち、幾重にも響いた。
彼の手中でクルクルと回る鍵束がカチャリ、と鈍い音を立てた瞬間
彼女の指が無意識に鎖を握りしめた。
壁際に置かれた松明がぱちりと爆ぜ火花が一瞬闇を染め上げる。
その閃光の中、彼女の眼差しが一瞬だけ鋭さを増したことに、果たして男は気づいていたのだろうか。
「前の男はどうした?アイツが相手だと私も殴られるだけでラク出来たのだがな。」
そう言って小太りの男を見る。
小太りの男は見た感じ新しめの軍服に身を包んでいるが、首元は緩めていて真面目に勤めているわけではなさそうだ。
「前任の者の事は良く知らん。
拷問…か。まだ若いな。」
それを聞いてヴェリアは更に警戒心を深める。
「尋問なら無駄だぞ。お前たちが知りたい情報は全て墓場まで持っていくつもりだからな。」
語尾に滲んだ覚悟は墨のように濃く、揺れない。
冷たい石畳に膝をついたままヴェリアは己の鼓動のみを感じ、数えるように瞼を閉じた。




