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ミモザを君に  作者: 水槽の中の脳(腐り気味)
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八日目・前編

牢の扉が開く。


ヴェリアは壁に背を預けたまま、視線だけを向けた。


男が入ってくる。

いつもと同じ歩調。

同じ椅子。

同じ位置。


八日目。


男は椅子に座ると、机の上に両手を置いた。


「今日は戦術の話をしよう。」


ヴェリアの眉がわずかに動く。


「ずいぶん専門的だな。」


「君なら答えられる。」


男はそう言った。


ヴェリアは鼻で小さく息を吐く。


「買い被りすぎだ。」


男は構わず続けた。


「小規模部隊で正規軍に対抗する場合」


少し間を置く。


「最も重要なものは何だ。」


ヴェリアは男を見た。


視線を逸らさない。

探るような目。


(試している)


だが、悪い気はしない。


彼女は足を少し動かした。

鎖が小さく鳴る。


「奇襲」


短く答える。


男は頷かない。


ヴェリアは続けた。


「正面からやれば終わりだ

 だから崩す。」


「補給、連絡、指揮」


指を机の方向に向けて動かす。


「全部。」


男が言う。


「つまり後方か。」


「そうだ。」


ヴェリアは肩を壁に預ける。


「軍は前線ばかり見る。

 後ろが崩れると簡単に倒れる。」


男はしばらく黙っていた。


考えている様子だった。


やがて言う。


「では聞こう」


視線が少し鋭くなる。


「補給線を守る側はどうする。」


ヴェリアは口角を上げた。


「簡単だ

 守らない。」


男の眉がわずかに動く。


ヴェリアは続ける。


「動かす

 固定するから狙われる。」

 

「流せば追えない。」


男は黙っている。


ヴェリアは男の反応を見る。


怒らない。

否定もしない。


むしろ、目が少し深くなっている。


(理解している)


ただの尋問ではない。


男は小さく頷いた。


「理にかなっている。」


ヴェリアは少し驚いた顔をした。


「否定しないのか。」


「なぜ?」


「帝国軍の教本とは違うだろう。」


男の口元がわずかに動く。


「教本は理想を書く」


「戦場は現実だ。」


その言葉に、ヴェリアの目が少し細くなる。


(この男……)


軍人だ。


ただの役人ではない。


ヴェリアは腕を組み直す。


鎖がまた小さく鳴る。

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