表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミモザを君に  作者: 水槽の中の脳(腐り気味)
14/41

六日目・後編

ヴェリアは小さく息を吐いた。


「質問が下手だな。」


男の眉がわずかに動く。


「そうか?」


「軍人なら分かるだろう。」


ヴェリアは肩をすくめた。


鎖がまた鳴る。


「理由なんていくらでも作れる。」


指を一つ立てる。


「復讐」


もう一つ。


「正義」


三つ目。


「祖国」


そこで指を下ろした。


「どれが聞きたい?」


男はしばらく黙っていた。


ヴェリアは男の顔を観察する。

目。呼吸。姿勢。


ほとんど変わらない。


(興味、か)


そんな気配だけがある。

ヴェリアは少しだけ視線を外し、天井を見た。


それから言う。


「仲間だ。」


男の目がわずかに深くなる。


「部下か。」


「そうだ。」


ヴェリアは視線を戻す。


「私が死ねば困る。

…だから生きてる。」


それだけ言って口を閉じた。


男はしばらく黙っていた。


やがて頷く。


「合理的だ」


「そうか?」


「多くの軍人は、もっと大きな言葉を使う。」


祖国。栄光。


そんな響きが言外にある。


ヴェリアは鼻で笑った。


「士気の道具だ。」


男は否定しない。

むしろ、わずかに頷いた。


ヴェリアはそこで確信する。


(やはり妙だ)


尋問官の反応ではない。


男は立ち上がった。

椅子を戻す。

姿勢は崩れない。

元エリート軍人の動きだ。


扉へ向かう。


そこで一度だけ振り返る。


「君は」


少し言葉を探すように間があった。


「思っていたより現実的な軍人だ。」


ヴェリアは肩を壁に預けたまま言う。


「失望したか?」


男は首を振る。


「いや」


短く言った。


「興味深い」


扉が閉まる。

重い音が牢に残った。

足音が遠ざかる。


静けさが戻る。


ヴェリアはしばらく動かなかった。


やがて目を閉じる。


(興味深い、か)


普通の尋問官はそんなことを言わない。


彼女は小さく息を吐いた。


「…妙な男だ。」


独り言のように呟く。


鎖がわずかに揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ