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第18話〜ワイルドハントとの戦闘〜





二人は昼食を食べた後、また散策をすることにした。


家に戻ってマナー講座を受けてもいいが、たまには息抜きが必要だ、と先輩が言うので、それに甘えることにした。


「デザートのケーキ、とても美味しかったです」

「貴方が好きそうだと思って、予約していたのです。気に入ってもらえてよかったです」

「はい! とても気に入りました!」


二人で腕を組んで歩いていると悲鳴が聞こえてきた。


私と先輩は顔を見合わせて、走り出した。


「貴方はゆっくりきなさい!」

「大丈夫、です!」


ドレスの裾を捌くのは大変だが、マナー講座が役に立つ。前よりもよっぽど走りやすい。


ーー淑女が走るのはよくないとか、今は言わないで欲しい!


現場にたどり着くと、肩で息をしている私とは違って、先輩はしれっと涼しい顔で立っていた。


「ーーワイルドハント!?」


悲鳴の先にいたのは、少数ではあるが間違いなくワイルドハントだった。


民が逃げまどっている。幸い、怪我人はいないらしい。


私は考えるよりも先に詠唱を始めて、防御結界を広く張る。先輩もほぼ同時に結界を張り終えたらしく、かなり強固な結界が出来上がっていた。


「我々の後ろに!」


先輩と私は最前線に出て、ワイルドハントと対峙する。


慌てふためいていた人々は安堵の息を吐いたらしかった。


ーー流石、私の先輩!


はしゃぐ気持ちを押し込めて、私は戦闘モードに移行する。


ワイルドハントとの戦闘は、マラカイトの街で戦った時に慣れた。


「数が少ないですね……」

「隣の街から流れ着いたのかもしれません。先日、ワイルドハントの出現が報告されましたから」


私が詠唱を始めるよりも早く、先輩は詠唱を終えて剣を作っていた。王都での武装は王に許可がいるが、例外もある。その一つがワイルドハントの出現だ。


「リア、貴方は、民を守りなさい」

「はい、先輩。ご武運を」


お互いのやるべきことはわかっている。


私はさらに防御結界を広げて、ワイルドハントを囲むように結界を張る。


何処にも逃さない、行かさない。


先輩は軽く剣を振った後、勢いよく踏み込んだ。


風が巻き起こって、私の髪が空を舞う。


先輩がステップを踏む。ステップを踏んだ地面は、割れ、陥没する。力強すぎる踏み込み。


先輩は重心を滑らかに動かして剣を振るう。


その姿は酷く美しい。


「あれが、龍騎士様……なんて、お美しいの……」


逃げていなかった令嬢の一人がうっとりとした口調で言った。


そうなのだ。とても美しいのだ、先輩は。


ちくり、と胸が痛んだ気がした。


「魔力の、使いすぎの、不整脈」


集中を切らさないように、私は結界と自分を同調させる。魔力を使いすぎないように、結界が薄くならないように。


先輩は、あっという間にワイルドハントを倒し切ると、深く息を吐いた。


「無事ですか、リア」

「はい、先輩こそ、お見事でした」

「このくらいは。龍騎士ですから」


先輩は詠唱して剣を片付けると、結界を解いた。私もそれに倣って結界を解き、周りを見渡す。


「怪我した方はいらっしゃいますか!」


治癒魔法を使えるのは私だけなので、先輩はチラリと私に視線を向けて合図をする。


返事をしたものはおらず、怪我人はいないらしかった。


「騎士団に現場を引き継ぐまでは、しばらく待ちましょう。リア、騎士団に連絡をしてくれますか」

「わかりました」


私は詠唱して小さな鷲を作る。その鷲を放つと、近くの騎士団の駐屯地に行くように指示を出す。


「鷲ですか、珍しいですね」

「私の名前、アーネットは鷲が由来だって、知ってから、なんだか、馴染み深くなっちゃって」


昔は鳩を使っていたが、今ではもっぱら鷲を使うようになっている。造形が難しいから魔法の練習にもなる。


しばらくして、騎士団がやってきて、私と先輩を見て勢いよく礼をした。


「龍騎士様と宵花の魔術師様にご挨拶をさせていただけます栄光に御礼を申し上げます!」

「ひぃっ!?」


その勢いに怯えて先輩の後ろに隠れた私とは違って、先輩は呆れた表情を浮かべていた。


「頭を上げなさい。我々よりも先に現場の片付けをしなさい」

「はっ」

「ワイルドハントの狩り残しは騎士団にとって失態。名誉回復に努めなさい」

「はっ! 返す言葉もございません。原因解明並びに改善に誠心誠意努めます!」


騎士団の人々は落ち着いた様子で現場の調査を始めた。


「私達の義務は果たしましたね。行きましょうか、リア。疲れてはいませんか?」

「い、いえ、少し、だけ。魔法をこんなに使ったのは久しぶり、です」


少し眠たい。魔力が急に減ったから、体が休息を求めているらしい。


「それなら、戻りましょうか。貴方の体が一番ですから」

「でも、私、何もやってないです、から」

「そんなことはありませんよ」


だめだ、瞼が落ちそう。


先輩は、私を抱えると額に優しく口づけをした。


「せ、先輩!?」

「よくできました。褒美ですよ」

「ご、ほうび……?」


それなら、いいか、な。


私は落ちていく瞼に従って、眠りの国へと入っていった。


「おやすみなさい、リア」

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