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1-2 変質者の今後

 フェイリックスは中央大陸の最西端に位置する漁業が盛んで温暖な国であると同時に、国教である聖神デム教―――通称聖教の大聖堂が置かれ、信仰を重んじ、篤信の徒からは聖地として崇敬される宗教国家として名を馳せている。

 通常、国の全権は王が占有し、一部の上位貴族や元老院がこれに与することが出来るのが世の習わしだが、その王が二十年前に退位。現在は国民投票により選出された聖教の大司教様が代表を務め、立憲民主主義?とかそんな国風となっているだとか。

 そう教授してくれたのは赤髪の修道女ことティティ。そもそも此処が何処なのかという問いに面倒くさそうながらも分かりやすく説明してくれた。この修道院はそのフェイリックスの中心部から少し外れた市街地の端に立地し、孤児院を併設した福祉施設だという。

 もしも子供たちが俺の醜態の第一発見者だったらと思うとぞっとする。

 あれからすぐ受け取った服に着替え、部屋の中央で対面しながら座し問答中だ。俺は兎も角、修道服のティティが豪快に胡坐をかいて座っている姿はなんとも異様に見える。

 「で、あんたのこれからの指針だけど、順当に考えれば病院で検査を受けるべき……なんだけど、無一文じゃあ治療は無理ってのは理解出来る?」

 ティティは俺のことを非常識の脳無しだと思っているのだろうか。これまでの過程で否定する材料がないので無言で頷く。

 「経緯は分からないけど、ゴミ捨て場で倒れていた直前まであんたが普通の真っ当なヒトであったのなら、服とか持ち物だとかを所持していた筈でしょ。ならそれが遺失物として騎士舎や自警団の詰所に届け出がないか調べてもらうのが第一だと思う。金銭は期待出来ないけど、あんたが正常で真っ当なヒトであったなら、身分を証明する物くらいは所持していたと願いたいから」

 ティティは俺のことを社会性に乏しい痴れ者だと思っているのだろうか。これまた否定する材料がないので無言で頷く。

 「それも駄目なら当面の事も踏まえて賃金を稼ぐしかないんじゃないかな。だけど身分の分からない記憶喪失の変態を雇用する好き者はそういないだろうし、冒険者組合に行って、依頼を受注する方が賢明だね。服さえ着てこうやって受け答えが出来ている分には正常に見えるから」

 この女は絶対に俺のことを馬鹿にしている。だが迷惑を掛けていることは事実なので無言で頷く。

 「以上。後はあんた次第。最寄りの騎士舎と自警団詰所の場所は私が手書きの地図を書いてあげるから。ちょっとここで待ってなさい」

 「なあ、これだけ世話を掛けたんだ。せめて清掃業務ってやつだけでも手伝わせてくれないか?」

 尻についた埃を払いながら立ち上がり、足早に去ろうとするティティを呼び止める。俺だってただ施しを受けるだけでは決が悪い。

 その申し出にティティは目を丸くしていたが、「ふうん」と品定めするように目を細め、

 「じゃあ、お願いしよっかな」

 と悪戯っぽく笑って受け入れてくれた。

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