神様と巫女?
主人公である、中村源太のセリフは広島弁なのですが、作者は広島に行ったことが無い民なので広島弁はわかりません。なので、広島弁翻訳機を使ってセリフを書いています。
誤字脱字等あればコメントで教えてください。
神様は、いる。
少なくとも僕は、会って、話して、触れたことがある。
(ここは何処じゃろう…?)
ふわふわとした意識の中、完全には開かない目を開ける。理想上の雲の中にいるみたいで、自分は夢の中にいるのだと思った。
(心地ええ…悪うないのぉ…)
体は痛くない、気分も悪くない。永遠にも此処に居たいと思ってしまう。
(母さんと源治も此処に連れて来たいな…)
大切な家族のことが頭をよぎる。もう顔は覚えていないのに、思い出は山ほど溢れてくる父親、体も心もいつまでも元気で、いつも微笑みかけてくれる母親、年相応で、いつも楽しそうにはしゃぎ回っている弟の源治。
(…ここはげに夢の中なのか…?)
何かを忘れている気がする。何かがおかしい気がする。
(…夢なら早う覚めにゃあ)
理想上の雲から起き上がる。到底現実とは思えない空間をぐるりと見渡すと、そこは雲が広がるだけで何もない。帰る道はここにはない。
(…どうするかのぉ…)
誰か…せめて居てくれれば…と少し俯くと、すっと女性の靴が目に入った。
「…?誰じゃ…?」
ばっと顔を見上げると、長い黒髪の女性が立っていた。その顔は逆光でまったく見えなかったが、何故か…見たことがある気がした。
女性に話しかけようとしたが、それよりも前に女性は何処かへ向かって歩いて行ってしまう。
「ちょ……待ってくれ!」
女性を追いかけようと走るが、まったく追いつくことはできない。それだけ走っても、距離は離れていくばかり。だんだん焦りを感じてきて、冷や汗をかきながら追いつきたい一心で走った。
(知らん人なぁずなんに…なんか…離したらつまらん気がする…!)
ようやく女性が立ち止まったので、これで追いつけると手を伸ばす。伸ばして、あと少しで触れられそうなとき…女性はこちらを向いた。
その顔は、赤く凛とした瞳で、どこか悲しそうであった。
「…ん……?」
夢から覚めると、そこは真っ暗な空間であった。真っ暗な空間は、ワインレットの重たいカーテンで囲まれていた。
(夢から覚めたのに…また夢に来たのか…?)
自分が最後に眠った場所は、寮の固い布団だったはずだ。なのに、どうしてこんな場所で目が覚めたのだろうか…?
(やっぱり何か忘れとるのか…?)
重たい頭をフル稼働させて、記憶を遡る。
まず、自分の名前。僕は「中村源太」だ。それから年齢はもう16。生まれは昭和…今ここは、何月何日、何年なのだろうか?
カーテンがふわりと少し揺れると、置くから青く暗い夜のような光が差し込んだ。
(…今はたちまち、状況を確認せにゃあ)
すくっと立ち上がる。
今の服装は黒く決まっている学生服のような恰好にマフラー、靴も頭からなかなか離れなかった帽子も黒で、なかなかいい素材で作られている。寝っ転がっていたのに、誇り一つなく、新品と言うには着心地が何だか知っているような気もする。
(またいなげな…やっぱりまだ夢の中なのか…)
自分なのに、自分では無いような感覚、どこか気味が悪い。
重たいカーテンを開けると、そこは星空の中のような空間だった。さっきの夢が雲の上なら、さしずめここは宇宙なのだろう。
キラキラと輝く白や黄色の点滅、青とも黒ともとれる空、ガラスが張ったように反射している地…一体どうしたら現実の世界でこんな景色が見えるのだろうか?
僕はまだ夢から覚めていないことを確信した。
「…綺麗じゃのぉ…」
何処を見ても星が輝いている。もしかしたら、この星の中には月もあるんじゃないか?景色に浸っていると、後ろからカツカツと、鋭い靴の音がしてきた。
「居ないと思ったら…お目覚めのようじゃな」
それは鈴を鳴らしたような、高くコロンとした女性の声だった。
「誰じゃ…!」
警戒しながら後ろを振り向く。そこにいたのは、声から想像できる容姿をした華奢な女性だった。
黒いロングの髪に、高級そうな外国のふんわりとしたドレス。真っ赤な目と、その顔立ちは到底日本人には見えなかった。背中には、白と黒の鳥類のような羽根をはやしている。人間ですら無さそうだ。
「そう警戒するでない。私は汝に危害を加えたいわけではないからな」
女性はじっと、こちらを舐めるかのように眺めてくる。
「……お前さんは誰じゃ…?」
「あぁ、自己紹介がまだじゃったな!」
ふふっと自信満々な様子でにっこりと笑う姿は、少々子供みたいで思わず拍子抜けした。本当に彼女は何者なのか?彼女がもし、この空間に住んでいる人だとすれば、僕は何故ここに連れてこられた?
「私の名前は『アリス・グレゴリウス』じゃ!そして私は…全知宇宙の神様なのじゃ!」
じゃじゃーん
と効果音が付きそうな勢いでそう告げられた。
正直に言おう、まったく神様には見えない。誰でもわかるような嘘を、このアリスと言う女はついているのではないか?
「…おい…何故じゃ…?何故驚かん…?」
「だってそりゃ…嘘じゃろそれ…」
「む…なんじゃ信じてくれんのか?」
ぷく~っと頬を膨らませて、あからさまに不機嫌な顔をする。そんな顔しないで、さっさと出口を教えてほしい…
「それより此処が何処か教えてくれ…」
「…では、どうしたら信じてくれるか?」
アリスはここが何処かより、自分が神であることを認めさせる方が大切らしい。
(…たいぎいのぉ…どうするか…)
「それなら‥‥草木を一瞬で成長させてみぃ」
今この空間には草木どころか雲も太陽も見えない。到底普通の人間では、この状態から無い草木を一瞬で成長など不可能だ。これで観念したかとアリスの方を見てみると
「そんなのお安い御用じゃ」
そういってぎゅっと祈るように手を握ると、その手の中から土があふれ出してきた
「は…?」
アリスがその手をゆっくり開いていくと、土から植物の芽が出てきて、それが徐々に上へ上へと成長してゆく。成長した植物はやがて枯れ、何事もなかったかのように散ってしまった。
「どうじゃ?これでわかってくれたか?」
「…」
認めざる負えない。世には手品なるものもあるそうだが、どうしてもこれは、手品で済ませられる芸当ではない。
「わかった。認める…われ(お前)が神であることを…」
そういうとアリスはふふんと自慢げに笑った。
「われが神なんはまぁええ。なんでわしがここにおるんじゃ?」
「あぁ、その話をせんといかんかったな…」
急にアリスの雰囲気が真面目なものとなる。真面目に出来るんだったら、最初からそうしてほしかったものだ。
「汝には、私の手伝いをしてもらう」
「…は?」
「…私の巫女となってもらうぞ、中村源太」
「ちいと待て…!どがいなことじゃ!急に手伝いをしろなんて…それに、仮にもわしは男!なんで巫女なんじゃ!」
「まぁそう取り乱すでない」
アリスが自分から視線をそらすと、何処からか映像フィルムのようなものを取り出してそれをぼんやりと見つめた。
「巫女と言っても名称がそうなだけで男女は関係ない。言い表す他の言葉を私は知らないのでな。…それから、手伝いについてなんじゃが…」
アリスはちょちょいとフィルムを覗くよう手招きをしてくる。フィルムをこっそりのぞいてみると、それは珍しく色がついており、映像がフィルムの一枚だけでクルクルと入れ替わっていた。
(こんなんがあるんか…もしかしてこれも、神の力で…?)
「…見てみぃ、この悲惨な姿を」
フィルムに移っていたものは
貧困に喘ぐ親子、集団リンチを受けている男性、金に目がくらんで破滅へ向かった若者、理不尽にもいじめられている女学生
この世の醜さを集めたようなこれを見て、見ているだけで一体何がしたいのだろうか?
「私は、この人間達を救いたいんじゃ」
「救う…?」
「そうじゃ。‥‥‥私には、いろんな場所、時間に転移することのできる力がある。これを利用し、様々な世代の、様々な人間を救いたいんじゃ」
「…」
アリスの言葉に息が詰まる。彼女の思いが分かったからこそ、何処か引くに引けない気がした。
でもそれより前に、ちょっとだけ確認したい。
「…ちいとええか?」
「なんじゃ?」
「…この映像に移っとる場所は何処なん?」
さっきから気になったこと、それはこの映像の綺麗さでも色味でもなく、これが何処であるかだった。
「あぁ…これは…東京じゃな」
「…東京…トーキョー…???」
「そうじゃよ。これは汝の時代よりずっと未来の東京の姿じゃ」
そこでアリスはにやりと…いたずらを思いついたかのようにほほ笑んだ
「そうじゃ…汝は今の東京の姿も知らぬ世代じゃったな?フフフ…」
「な…なんじゃ…?」
「…私についてくるが良い!」
急にアリスが腕をつかみ、走り出すとまるで戦闘機が浮上していくように、徐々に体が軽くなり、空へと上がった。
「ちょ…ま、待っ」
「安心せぇ!死にはせんし、私が他の人にはバレんようにしてやろう!」
「うわぁ!!!?」
アリスはこっちの心配や不安をよそに、速度を上げてどこかへ飛んで行く。
読者に分かりやすく例えるなら…某駄目小学生が猫型ロボットと生活する漫画でタイムマシンを使ったみたいな感じでどこかへ向かっていた。
「よーしついた…あ、安心せぇ、汝の姿は見えんようにしてやったからな」
「つ…ついたぁ?」
恐ろしさで瞑っていた目をゆっくり開いてゆくと、そこに広がった景色に心奪われた
「………」
「どうじゃ?汝の居た時代に比べたら随分と変わったもんじゃろう?」
思わず声が出なかったその景色は、まるで天国のように明るく、空が高い建物群に反射してどこまでも広がっていそうな……未来の景色であった。
「今は令和の時代。汝の生まれた昭和とはまるっきし違うのじゃ」
「令和…?」
「ほれ、見てみぃ…服装から髪型、化粧も違うじゃろ?」
「確かに…到底同じ人間にゃあみえんぐらいに」
すっと地面に降り立ち、首が上がらないほど高い建物のガラスに手を置いてみる。今の自分と比べて未来の人々はずいぶん健康な見た目でさっきも言ったが、同じ日本人とは思えない。
「急な話じゃが…私の巫女をやって貰うにあたって、汝はここで生活をするのじゃ」
「はぁ!?なんでっ…」
「…汝からしてみれば、ここはかなり先の未来じゃろう。じゃが、私達今を生きる者からすれば、現代なのじゃよ」
「…昭和が終わってるからってことか…」
「物分かりが良くて助かるわい」
アリスがパチンと指を鳴らすと、またさっきの場所へと戻ってきた。
「…さっきのが未来の東京なら、ここはなんて場所じゃ?」
「ここは私のような神が住まう場所、『宇宙空間』じゃ」
すっとアリスは僕の前まで来る。その顔はさっきとは違って真剣で、こっちまで緊張感が伝わってくる
「話さなければならんことは一通り説明した。そこでもう一度問うぞ」
「…」
「私の巫女になって…人々を救う手伝いをしてくれんか?」
「…人々を…救う」
ドキンと胸が鳴る
(人々を救う、そりゃあ立派なことじゃ。だが…自分は早う帰って…)
さっきよりももっと大きい音で胸が鳴った
(…あれ…?)
冷や汗がだらりと首を伝う。まるで化け物がすぐ後ろにいるかのような感覚だ。
(…思い出せん)
自分はいったい、何のために帰らなくてはいけないのか?
(わからん…あのカーテンの中で目覚めてから、何処かおかしい…自分の大切な何かを…忘れとる)
ぐるぐると頭をかけるのは自分が何者かだけ。家族構成も友人関係も、学歴も曖昧な気がしてきた。
(わからん…わからん!!!)
「源太!!!」
大きな声でアリスに名前を呼ばれた。
はっと我に返ると、手にはぐっしょりと汗をかいていて、もの凄く冷たい感覚がしていた。
「…アリス……」
「…汝、ここに来てからおかしいんじゃろう?」
「…あ…あぁ」
「…はぁ……やはりこうなってしまったか」
アリスは目をそらしてぽつぽつと語り始める
「汝をここに連れてきたとき、汝は魂だけの状態じゃった」
「魂…?」
「あぁ。魂だけじゃった汝をここまで連れてきて、魂に残っていた記憶を頼りに汝の身体を形成し直したんじゃ。だから…魂に残っていた記憶が擦り切れてしまったのかもしれんな」
「僕…死んどったのか…」
「あぁ、恐らく過去に既に死んでおったろう」
ようやくアリスはこっちをしっかりとみて、ぐしょぐしょの手を握った
「汝をこうして蘇らせたのは私じゃ。汝に不自由はさせんし…汝の無くなってしまった記憶を戻す手伝いも絶対にする」
「…」
「…じゃから…巫女になってくれんか、源太」
「…」
何も覚えていない今、大切なものが分からない今…いつ死んだかすらわからないが、蘇らせてくれた恩は返すべきだ。
(それにもし…アリスに協力して、思い出せるなら)
「…分かった。協力する」
アリスはまた子供のような顔でふふんと自慢げに笑った。
「よ~し!ならば今日より汝は私の巫女…全知宇宙の巫女じゃ!!!」
「えらいご機嫌になりよって…」
「あ、そうそう…」
ぱっと思い出したような顔になって、にやり笑いでこちらを向いてくる
「今から言葉遣いを敬語にするのじゃ。なんせ、私は神じゃからな~普通にフラットに話されてもしゃくじゃ」
「はぁ?」
今のシリアスな雰囲気と一遍、そんなこと言い出すもんだから冷たさもマシになった
「キャラも被るし良いことないじゃろ?だから言葉遣いを直すのじゃ!」
「…」
飽きれながらも、まぁ確かに神であることはわかっているし、今後の手伝いの中で言葉が通じなかったら困るか…と思い
「わかりました…これで満足ですか?」
「ふふ~ん!良かろう!」
「はぁ…」
これから自分はこの謎の神様に連れまわされるのか…なら巫女にならないほうが良かったのか?いやでも…
先の未来を想像して、ため息が止まらない源太であった。
「よろしくな!源太よ!」
「はいはいよろしくお願いしますよ…アリス…様?」
「アリスでよい」
「いやそこは呼び捨てで良いんですか…」
ぐだぐだですが1話を投稿しました。
「神様と巫女、タッグで解決!」の原作は「ポケコロツイン」と言うゲームのノート機能で開催された参加型小説であり、神様や巫女の登場人物が沢山いました。ですが、今回はその登場人物を「中村源太」一人に抑え、原作では出し切れなかった設定等を描きます。
もしここから原作を見に行ってくれた方が居ましたら、作者のフリーノートにお声掛けくださると喜びます。
今後も神巫女をよろしくお願いします。




