圧倒的
「そんな…絶対守護防壁が…!」
『バリアがどうかしたのか?』
「ダメッ!割られてる!29枚!?嘘…こんな簡単に…!」
とんがり帽子にクラッカー持って顔面蒼白で「こんな簡単に…」って言われてもハタから見たらギャグであるが、どうやらマリアは俺を笑わせたいわけではないらしい。本気だ。
しかし皆んな忘れたのか?マリアにはアレがある。
『マリア!ここから光の矢で狙撃できないか!?』
そう、2年前カスと言われた魔王その他諸々を一撃で屠った光の矢。神から与えられし天啓でおよそ人類が考え得る最強の一手。
「そ、そうだわ。あんまり簡単に破られるものだから動揺しちゃったけど私にはまだ…!」
マリアは左手を前に出し拳を握り込む。
するとそこからマリアの身長と同じくらいの光の棒がとんでもない風と共に現れた。
周囲の空気が震えるとはこの事か、棒の中心の弦に右手を添えると矢が現れる。それをゆっくりと掲げ、さらに右手を後ろに引き絞りつつ左手は前へ。
俺2年前はささやかな誕生パーティーしてたからマリアが頑張って光の矢撃ってるところ見た事無かったんだけど本当に弓矢みたいなんだな、とのんびり感想をしているとマリアはいよいよ力を込め出した。
マリアを中心にいよいよ爆風が渦巻き、ギリッギリッ…と聞こえそうなくらい弓を引いているマリア。
敵の位置を見据え真剣な眼差し(頑張れ)
その細い腕で弦を引き絞る右手(頑張れ)
本人は気付いていないが顔には汗が凄い(可愛い)
そして時は来た。
「今だ!!」
瞬間、矢は光となった。
限界まで引いた弦は爆ぜ、矢を光速で撃ち出す。
渾身の光の線は暗黒の空を切り裂き、遥か遙か遠くにいる敵の頭部に一瞬で辿り着き、敵は絶命した。
はずだった。
終わらなかったのだ。
ホント簡単に言うと右手で弾かれて矢は空の彼方へ消えた。
だってアレだぜ?2年前魔王を一撃で葬ったんだぜ?
射出の瞬間の爆風で尻餅ついてイテテと思ったけど、心の中で
『よし、これで終わるな』
って楽観視してたんだぞ俺は。なのに…。
「ウソ…」
俺もそう思う。でもマリアの悲観度は俺の比ではない。
攻守共に最強。それがマリアなのだ。
どちらか一つなら欠けても良かっだろう。
矛盾とは違う確実に成果の出せる話だ。
だが二つ同時にとは…
「「言い忘れたが…」」
矢の残像で未だ光の線が残る夜空にイレズミの顔が再び浮かびあがった。
しかしちょうど目の所に光の線が入り切れ長の目が消えていた!
「「そちらでも観測できているとは思うのですが、現在人類領土へと向けてヨロヨロと飛んでいる魔族は、2年前の魔王の10万倍は強いから覚悟しておいて下さい」」
などと、とんでもない事を…
「「ちなみに魔族の中で最弱です」」
流石に心が折れそうになった。