凄そうって事を説明する為に生まれたモブ達の会話
ーーー同時刻、中央王国の監視所ーーー
モブ達がザワザワしている……
そんな中、王国魔道兵による魔道の力で超強化された望遠鏡を覗く若者が震えた声でつぶやいた
「隊長…これを見てください…」
「お、こいつは…もしかしてこいつが人類を虐殺しにくる魔王の手下かー!?」
レンズの先には、産まれたてのトムソンガゼルのようにヨロヨロと震えながら空中を飛んでいる魔族の出来損ないが見えた。身体は痩せほそり頬は沈み込み一生懸命飛んでいる、ように見えた。
「ワハハ!コイツはバリアに触れただけで粉々になってしまいそうなヤツだな!」
「違うんです…!違うんです隊長…!よく見て下さいっこいつ…ッ!」
「へ?」
出来損ないの魔族はヨロヨロと飛んでいた。
しかし真っ直ぐにこっちに向かって来ていた。
時折魔族の周りで光の破片が舞い散る。舞い散る。
もし音が聞こえていたらさぞ脳裏に刺さる音であったろう。
分厚さで鈍くなるガラス音でもなく、かと言って薄すぎて儚く粉々になる音でもなく。
パリンと、美しく、そしてこれから迫り来る絶望に希望が割れる音であったろう。
(モブ達の流儀より)