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平和になり損ねた世界

太陽が落ちていき暗くなる前のひとときの紅い空。

俺は教会の前に立っていた。

窓の中では外の世界に寄り添うように暖かみのある紅いロウソクの光がユラユラと揺れ、子供達の声も聞こえてくる。


<そういえばソーマ明日誕生日だったよね>

昼食の時にこんな話があったのだ。


話があっただけではない。ちゃーんと祝ってくれると言ってくれたのだからこりゃ困った。超嬉しい。

俺はそこそこの礼儀を知ってるつもりなので、そこそこの服装とそこそこの顔で突撃するつもりでいた。

つまりまぁこんな場合なので普段の服装のまま気楽にやって来たという訳よ。


マリアは優しい。

こんなヒョロリン(ヒョロヒョロの隣人)でも関係ない。多分幼馴染じゃなくても同じようにしてくれる。

だから近くに居たいし守っていきたいし、一緒に歩いて行きたいと思わずには居られない。

全人類そう思ってるんじゃないかな?飛び抜けて俺が1番思ってるだろうけど。


などと考えつつヒョロリンがさぁ行くぞと足を踏み出した瞬間、世界を絶望が襲った。



突如、空を見ろと言わんばかりの雷が鳴り響き渦巻く暗雲が紅い空を禍々しい黒に染める。

ごうごうと芋虫の如く脈動する空にはうっすらと、しかし時間をかけはっきりと浮かび上がるおぞましき男の顔がそこにはあった。

しっかりとした眉に切れ長の目、現代美学においてよもや正気を疑う顔面入れ墨は、町の人間の心に畏怖をもたらした。そんなイレズミ男が口を開く…



「「初めまして人類の皆様」」


(ッ!!意外に美声!)


「「私はこの世界における真の魔王という者です。」」



「な、なんだってー!」

「真の魔王じゃと!」

「魔族は滅んだハズじゃ…!」

町の住人の叫び声が乱立する。

そうなのだ、魔族は滅びたはずなのだおかしいのだへけけ、と。


空の男は続ける


「「皆様の声届いております。分かります。

何故魔族がまだいるのかと。

単純明快、出かけていたのです。」」

「「しかし帰って来た時には魔王城は跡形もなく、何やら人間が開拓を始めておりました。」」

「「もし?ここに魔王城はありませんでしたか?」」


「そんなもん聖女様が吹き飛ばしてしまただ。」




「「ええ、聞けば私の髪の毛先ほどの力しかないカスが魔王を名乗っていたらしく、そのカスも人間の女に滅ぼされたと。」」


「「私は同じ場所に城を建て人類への復讐を待ったのです。」」

「「そして!今この時をもって!人類の虐殺を!」」


「「開始いたします。」」


最後のセリフはゾッとするほど冷ややかであった。


イレズミの演説が終わると同時に急な攻撃が始まるかと思われたがそうでは無かった。

そもそも人類の領土にはマリアの絶対守護防壁なる立ち入り禁止のバリアがある。そのバリアは薄い衣のようで、半円となる形で大地を覆い敵の侵入を防ぐ役割を持っている。


その数50枚。

人類の偉い人に3枚あれば充分じゃろうと言われておいてその数である。


マリアには人類の敵となるようなモンに対して、最強の切り札となる天啓が与えられている。

真の魔王だろうが何だろうが関係ない。

人類の敵になった時点で既に勝ち目はない。

ないはずなのだがーーー



バッターン!


教会の中からマリアが飛び出して来た。

頭にはとんがり帽子、手には俺を祝う為であろうかクラッカーが握られている。可愛い。

だがその眼は見開き、見えるはずの無い遠い魔王城を見ている。どうした?マリアのバリアは凄いんだろ?


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