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世界は平和

俺が16歳になったその日、世界は平和になった。


聖職者見習いの女の子が地球の真裏にある魔族本拠地に向けて放った光の矢は魔王の城に直撃し、その爆風で敵の大軍は魔王もろとも1匹残らず消滅した。

衝撃波は地球を4周した。


俺のささやかな誕生パーティーは魔族絶滅の盛大なパーティーに変わったのであった。



2年後



バキリ

バキリ

バキリ


『ふぅ、薪割りはこのくらいかな』

持ち手の部分に布を巻いたいかにも年季の入った愛用の斧をどすりと置き、薪割り場のすぐ横に置いてある手作りのイスにこれまたどすりと腰掛けた。

時間は正午前。平和な世界に特に必要とされていない俺はお手伝いとして教会の前で薪割りをこなすのだ。

教会の中からは孤児たちの楽しげな声が聞こえてくる。お昼ご飯はカレーか(腹減った)

周囲には薪が散らばっているのでキチンと整理しなければなのだが、かなりちょっと少し結構疲れたので休憩ー


自慢じゃないが俺は力が無い。

ヒョロヒョロだ。

薪の数もだいぶ少ない。



「あら、ソーマお疲れ様。今日もありがとね」

ガチャリと教会の入り口から女の子…いや女性が出てくる。詳しくは知らんがザ・シスターと言わんばかりの服装、セミロングの金髪に落ち着いた立ち居振る舞い、物腰穏やかとは言わんが誰からも好かれる言葉遣いは人々に安寧を抱かせるだろう。


そう、彼女こそ比喩抜きで「一撃で」魔族を滅ぼした女性。

マリア=サマである!

マジで自慢じゃないが俺は幼馴染である彼女の為なら火の中水の中である!


『いやーこれくらいお安いご用よ。ここ片付けたらすぐ教会内の掃除に行くんで。あ、俺のカレーも残しといてね❤️』

軽く返事をしたものの正直腰が限界だと絶叫し、まだ次に行くべきでは無いと体が悲鳴を上げている。

でも好きな子にはヘタレなところは見せたくないよね。


「………」


っていうのにマリアったら深刻そうな顔なんかして…(可愛い)


「やっぱりもう一回天啓の儀式を受けてみたら?

どう考えてもおかしいわよ、ソーマだけ天啓を受けれてないなんて…」


ズキリと。胃を下から持ち上げられたような感覚に落ちる。

…正直なところ、この手の話はキツい。


俺たち人類は16歳になると偉そうな人から「天啓の儀式」と言うものを受け、何かしらの能力を持つ事ができるようになる。

それは凄く農作業が得意になったり、凄く超発明のアイデアが浮かんだり、凄く一撃で魔族を滅ぼしたり…


俺だけ何もなかったんだよな。


まつ毛の数よりシワの方が多い儀式してくれたバーさんが何回も確認してくれたけどやっぱり何もなかった。


だからキツい。好きな女の子にアピールする為に男が誰しも隠し持つ「自信」という名の剣が、折れるどころか無いのだから。


『分かっちゃいるけどどうしたものやら…

20歳になってもまだ何も持ってなかったら俺を養ってくれ。ハハ…』


おぉソーマよなんと情けない。

ハハって言っちゃう辺りに自分の自信というものがとんでもなく薄っぺらいことが分かる。


分かるんだ。

誰でも経験を積んで自分を信じられるようにならないと何も出来ないって。

だから神様は16歳の天啓の儀式でちゃんと生きていけるように天啓をくれるんだって。

でも俺には無かった。酷いよ神様。


「もう…バカね…」


ゾワリとした


マリアも分かってるんだろうな。

これから先、天啓を受け取る事が出来ないって。

それでもチャラチャラと明るく振る舞おうとしたピエロな俺を包み込んでくれる。

貴女が神か。好きすぎて困る。


「あ、もうこんな時間だわ。ソーマも掃除は後にして先にご飯食べちゃいなよ。知ってるとは思うけどカレーね」

『掃除終わらせようと思ったけどそんなに言うなら食べてから掃除だなー』

「はいはい、時間を取らせてすみませんでした。

ちびっ子達もいるから手を洗って綺麗にしてから食卓についてね」


掃除を後回しにしてもいいとお達しがあったので、まだ戦えるんだモンと思ったが腹が減ってはなんとやら、ヒョロヒョロの体はヒョロヒョロと教会の中へ吸い込まれていくのであった。


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