決着
ドズンと、臀部に衝撃が走る。
真裏の股間も地面に挟まれ悲鳴をあげそうであったが、ポジションの関係で最悪の展開にはならなかった。
「はぁ…はぁ…」
それよりも見てよ。この光景。
マリアが素手でヨロヨロの爪を掴んでいる。
5本の爪を一点に集めるよう手のひらを窄め、刺すというよりは抉る形のそれは必殺にはなり得なかった。
むしろ一点に集めたお陰で片手で処理されてしまっている。
一体どれほどの握力であろうか。
あの小さな掌で受け止め、ビタイチ動かさずヨロヨロを制圧しているのを見るに尋常ではない事が分かる。
それもそのはずか。
<Mの黙示録>のサポートをガソリンの如く補給され、マリアの身体は燃えたように赤みを帯びていた。
額の汗など既に蒸発している。
溢れ出すエネルギーを留め、圧倒的な力を捻じ伏せるさらに圧倒的な力は万力を彷彿とさせる。
いいぞ、思った通りだ。
俺の羞恥心か屈辱感か、はたまた性欲か分からんがドンピシャだ。
言葉責めよりも肉体責め。
プレイの内容で効果が変わると言われてピンときたが、まさかここまでとは。
これはいずれじっくり検証しなければいけませんな!
とはいえこのままでは終われない。
次はトドメを刺さねば。
俺には何の力も無いので、せめて状況を把握して適切な指示をマリアに送ってあげる事が最大の功労である。
『マリ…!』
と言ってる間にマリアは動いていた。
左手でヨロヨロの腹を突き上げると綺麗に真上に吹き飛んだ。
翼など何の意味があろうか。吹き飛ばされた際の空気の圧縮により、翼の骨は折れ、拡げようにも拡げられない。
腕はどうか。右腕の肘から先が見当たらない。
それもそのはず右手はマリアが捕まえている。
上に吹き飛ばす力と、離さないマリア。
どちらも俺のサポートを受けヨロヨロの能力を遥かに凌駕した2つの力の綱引きにより、限界を迎えたのがヨロヨロの身体なのは必然であった。
故に見当たらない。
打たれた腹はどうか。穴が空いてる。こりゃダメだ。
なのにマリアったら
「ん!」
なーんて言いつつ本日3度目の光の矢を放った。
今度は外さない。3度目の正直とはこの事か。
今日は本当に色々あった。
欲しい欲しいと思っていた天啓は思わぬ形で手に入り、最高の誕生日プレゼントとなった。
マリアにも色々あった。
彼女が持っていた自信というものは一度守護防壁と共に砕け散ったが、すぐさま取り戻した。
崩れ落ちず、最後までもがき続ける様に俺は、彼女の精神力がいかに互い稀なるものであるかを実感した。
「はぁ、はぁ、」
今日は本当に色々あった。
2人して地べたにゴロリと倒れ夜空を見上げる。
俺はヒョロヒョロだからな。もう限界なんだよ。
勝利の余韻は心地良くあったが身体は正直なもので、許される動きは光の矢を目で追う事だけだ。
身動きが取れない(取らない)ヨロヨロは蒸発し、天に昇っていく光はあの日見た勝利の流星であった。




