第十四章69 【覇王杯/オーバーロード・カップ/浮重文 笙虚チーム】17/存在錬成1
【24作の新ボードゲーム】の中継を早めに切り上げたのには理由がある。
【笙虚】のチームにはまだ紹介するべき事柄があるからである。
その1つが、【存在錬成】である。
分かり易い表現は【人体錬成】である。
【錬金術】でもおなじみのこれは、【金の錬成】と同じ様に禁忌として扱われる事柄である。
その【存在版】と言えば良いのだろうか?
つまり、【人】ではないのだ。
ただ、【人】では無いのなら創り出しても良いのか?と言われるとこれも問題である。
悪戯に【命】を生み出してもそれは不幸の始まりとなる。
例えば、【怪物】を生み出したとする。
その【怪物】が暴れれば討伐の対象になるだろうし、暴れなくても実験の対象として狙われたりもする。
そのため、人の世では隠れて生活する事を強いられる。
そんな感じで【人の世界】では、珍しい物は生きにくいのだ。
軽い気持ちで作ってはならないもの。
それが、【存在錬成】となる。
【存在】を【錬成】するからには、その生み出した【存在】に対する責任を取る必要がある。
自身も【祈清】と言う超天才科学者のコピーとして生まれた運命であるからそれがよくわかるのである。
なので、【笙虚】は決して軽い気持ちで呼び出したりはしない。
作り出したものに対する責任を取ることを考えている。
それは、彼女の子供とする事である。
【笙虚】は、【祈清】の【コピー】として誕生したが、【絢】と同様に人間ではない。
例えば、性行為をする事が出来ないのだ。
相手を愛して、身体を重ねる事が出来ないと言う不幸がある。
その代わり、【笙虚】の【子宮】は、【存在錬成】したものが普段、住むための【歪み空間】となっている。
そして、【笙虚】が望むなら、【存在錬成】したものを彼女の【子供】として【出産】する事が可能なのだ。
つまり、【笙虚】は、ツガイとはならずに【単独】で、【人間以外の存在】を生むことが出来る能力を有していると言うことである。
人間の子供を作れない彼女にとって、【存在錬成】は我が子を作る事が出来る唯一の手段なのである。
人間の子供を産むには妊娠期間がある様に、【笙虚】も【存在錬成】した【存在】を自分の子とするには、自分の【子宮】の【歪み空間】の中で、10月10日・・・では無く、ちょうど1年間、暮らしてもらう必要がある。
それを【滞在期間】と呼んでいる。
【滞在期間】が妊娠期間より長いと言う代わりに、【笙虚】の【子宮】は【歪み空間】になっているので、人間の女性の様に、お腹が膨れたりする事は無いのである。




