第十四章27 【覇王杯/オーバーロード・カップ/河池 祈清チーム】25/恋愛相談2
【祈清】は、亡き母が、映像に残していた日本の原風景を再現してみた。
合っているか間違っているかは解らないし問題じゃない。
彼女にとって、その再現が全て。
その再現した事が、亡き母を偲ぶ、唯一の手段なのだから。
【母親】は、
『・・・どうしたの【祈清】ちゃん?
顔が赤いわよ。
お熱?
それとも何かあったのかな?』
と言って微笑む。
【祈清】は、
(変なの・・・)
と思った。
何が変か?
それは漢字こそ違えど、自分も母親も同じ【きさや】と言う名前だからだ。
【母親】に【きさやちゃん】と言われたとき、自分の事を言われているのか、母親自身の事を言っているのか一瞬解らなかったのだ。
それはおかしい。
【母親】は、【祈清】に話しかけているのだから。
当然、【祈清】に向けた言葉のはずである。
普通の人はそう思うかも知れない。
だが、【祈清】にとってはそれだけ、【母親】にそう笑いかけてもらう事が珍しかったのだ。
だから、自分の事と認識するのに、タイムラグがあるのだ。
そして、これは、【謎】の力の研究の一環で、【もしも母親が生きていたら?】を再現したものに過ぎない。
つまり、本当の物事では無いのだ。
所詮は偽者。
されど・・・
【祈清】は、
「あの・・・」
とつぶやいた。
【母親】は、
『ん?
なぁに、【祈清ちゃん】?』
と聞いてきた。
【祈清】は、
「母様・・・って呼んで良いですか?
そして・・・今だけ・・・
今だけ・・・甘えさせてもらっても良いですか?」
とか細い声で言った。
こんな事、他の誰かの前では出来ない。
この状況だから出来た事である。
【祈清】は、【母親】の膝の上にちょこんと乗ってみた。
と言う所までが【祈清】達のチームの中継となる。




