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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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学園の魔女

「アルティメット・ココロビーム!」


「なんだよアルティメットココロビームってわざとかゴラァ!」


 立石とか笑い転げて死にそうなんだが? なんかピンク色の光線が王城を破壊していった。足元の虫たちにミサイルの雨を浴びせかけたり球体ユニットを数百も展開して追いかけ回して光線を打ちまくったりしてる。わざわざ見えるレーザー打つ意味あんのか? まあ長時間加熱して融解して貫通するんだろうが。なにが言いたいかというと非常に演出がアニメ的!!


「巨大なハートで敵を打つ! ラブリーココロフラーーーッシュ!!」


「殺せ!」


 恥ずかしすぎんだろなんだよラブリーココロってふざけんなゴラァ! 立石が笑いすぎてうつ伏せで泡を吹き始めた。窒息してしまえ。それくらいじゃ死なんと思うけど。


「もう少しハートがたくさん出る演出を加えるべきだったか?」


「そんなとこに神の本気見せようとすんじゃねえ!」


 星のんの無駄にハイスペックなテクノロジーで重力や空間も思いのままらしい。そしてかなり真剣に改良計画を練っている。笑ってたほうがまだマシである。まあわざとやってんだけど。遊ぶのは好きだが遊ばれるのは好かん!


 結局三心合体とか言って合体ロボをやりたかっただけらしい。マリーちゃんが楽しそうに目をキラキラさせているからいいけど。この子感性が少年。


 まあスクルドたちの遊びが終わったので戦いは終わらせることにした。別に賠償金出せとは言わないが政策の転換ができないようなら夢では終わらせないぞ、とメッセージを送っておく。


 これでとりあえず虫帝国にチョロチョロされるのは防ぎつつ自分たちのやりたいことをやれるだろう。戦争反対ってより無駄なことすんなって感覚のほうが強いかな。


「さて、だいたい終わったけど赤の魔女さんはどうするかね?」


「え、ボク? うーん、もうちょっと遊んでいっていい?」


「いいけど?! 喧嘩売ってきたのに?!」


「うーん、魔女さんみんな悪い感じじゃないしな〜」


「どこが?!」


 善悪の意味だったら悪も悪、最悪だと思うが自分にとって悪い印象でなければいいらしい。結局自分の感情でしかないもんな。見えるわかりやすい結果は好きなくせに本質的に必要なことに目を向けようとしないより良いのかもしれんけど。自分の目を信じるには馬鹿すぎるやつもいるけどこいつなら本質は間違えないか。そういうとこが星のんに好かれてるんだろうし。


「まあ遊んていくといいや。もうすぐ学校だけどな!」


「あ、そうだった!?」


 マリーちゃんも学園に送るからな、一緒に送っていけばいい。ちなみに一緒に来てたハート子爵とかいうおっさんは一人でテレポートで帰った。便利だよなテレポート。迎えにこれるように白のベルは渡してあるけど。え、私のほうが便利? 神のギフトだよ?


「一旦病気の鎮静を見るために帰るか。それから入学準備で私らも学園に行かないとダメだしな」


「ぎょうさんやることあるけんしゃんしゃんせんといかんね」


 たくさんやることあるからシャキシャキしないと駄目、って翻訳させんじゃねーよ! 私は実戦魔術を、水野は理論魔術を教えるらしい。教えられるの? なんか勉強は好きらしくこの世界の関連書籍をミネルバに取り寄せさせているらしい。マイルームの天使ミネルバというより本職の売買の天使のようである。一旦魔女同士は休戦ということになるな。


 魔女協定なんて大したものでもないがお互いに役割は決めておかんといかん。この先神ともやりあわんとダメだしそのときのことも話しておこう。まあ誰が誰とやりあうかみたいな話。ひとりだけ私が関わりたくないのがいるのでそいつは立石に任せることにした。権力で言えばこの世界だと立石が一番デカいんでアナナスの対魔女の話なんかでは立石の名前はぜんぜん出てこない。というか魔女といえば教会の魔女は、と口に出した下位貴族がいたんだが全員ににらまれてたわ。アンタッチャブルなんだよなあ。当たり前だけど偽神たちなんかよりずっと古くからこの大陸で権勢をふるってたわけでなんなら偽神たちも立石には世話になってるわけだ。そのへんは一度聞いておいたほうがいいかもしれん。私はなんか相手が話さないならそれでいいだろうと思ってしまうんだよな。他人の本心なんて知る必要があるかね? まあ調べなきゃいかんことは調べるし聞き込みもするんだけど。


 とりあえず学園に三年ほどはこもる予定だ。魔王への義理もあるし。偽神たちと魔王は一時期一緒に旅していたらしいんだよな。魔王が魔王であることをやめた辺り、偽神が神を名乗る前辺り。そこに今に連なる謎がある。


 誰が愛の女神を殺したのか。色欲のギフトを持っている以上星のんの管理下にあるはずの女神が死んだ理由……実は心当たりがあるんだよな。この世界の偽神たちは神のステージに上がれるのか、ということなんだ。散々考えていたことではあるがわざわざ転生して人生をやり直させているのはなぜなのか。人間としてのステージを上げる以外にないと思うんだよな。もし私が神だとして人の魂を弄ぶためにやるんだとしたら魂そのものじゃなくコピー品を使って絶望させたりする。もし歯向かってきたらその時点でリセットするだろう。魂を扱える権限というものがあるならそれはそれなりに大きいはずだからだ。その能力を使って魂を弄べるとしたらそれで人に敗れることはありえないからな。人が神になれる法があるとしたら世界の真理を見出している。苦難もただの現象と組み合わせに過ぎず運命の渦中と言うようにただ渦を巻くだけだ。そこにいる人間には当然義務がある。生きている限りあらゆる義務から完全に独立する術はない。自由を求める私の本能もそこに必ず自由にならないことがあると受け入れていなければならない。人は個では価値を創出できないから。価値ってのは結局誰かにとってのものだからな。多くのこの世界の人間と関わることを通じて世界の成熟を早めること、それがひとつの目的ではある。まあ楽しいことしかしないけど。そのために次のステージへ向かう。


 さてさて、魔王の学園にはなにがあるのかね。いちおう学園の図書室とかコピーして勉強しておこうかと思う。マイルームの中で数年勉強したらだいたい全部読めるだろ。


 歴史とかは実体験をしてるやつがここにいるしなんとかなるだろ。魔術理論とかは水野も勉強するつもりらしいし一緒にやるか。学生時代に戻ったみたいで楽しいな。




(アルス視点)




 魔女や病に関わる諸問題はおおむね解決した。まあ魔女については疫病を抑えたことにより敵対的対応を取らない方向に話がまとまる。


 いろいろ考えてみたんだけどこれって予定調和だよね。はじめから国も、つまり父王たちも魔女たちも内部でつながって予定を組み上げ、一旦の魔女の全面否定から逆転、講和へと話を進める。茶番といえばそうなんだろう。規模が大きすぎるだけで。


 結局個人での凄まじい武力を見せつけた白の魔女に対応はできず赤の魔女も対抗して向かわせたがどうやら和解して戻ってきたらしい。リディアはあんまり考えないからいきおいで喧嘩を売ってまったく歯が立たずパワーアップの方法のヒントをもらい修行の場も貸してもらったらしい。


 マイルームって本当にいいスキルだよな〜。僕が欲しかったんだけど。まあ神様にしたら僕はリディアのオマケらしいんだよね……。


 まだまだ政治の勉強は続けなくてはならない。僕の考え方が甘いのがよくわかった。子供の考え方としてひとつの結論を見つけたらそれが全てと考える。しかし現実はそんなに単純化された物ではない。悪も正義も人間なので持っているんだ。そこで何を正義とするかは個人の思惑だけでは絶対に動かせない。前世の日本の偉い人たちだって例えば米の価格を下げたら農家に嫌われ米の価格を上げたら消費者に嫌われる。そして両方から叩かれる。これで政治家をやりたい人なんて本当に国の為を思ってるか仕方なくでないとやれないと思う。お金がもらえると言っても政治資金はたくさん必要だしその線引きをきつくしすぎると貧しい人は政治の中心には入れなくなる。一個しかない物を右にやったら左が困り左にやったら右が困り、それを失政だと詰られる。なにかを生み出すには大きな力が必要だけど税金を渋ればその力は弱くなる。やることはひとつではないのだから底力がないと駄目だけど日本人自体が国にそんなに権力を与えていない。例えば何十兆円をひとつのプロジェクトに、なんてことをやったらパンクするだろう。借金で補えというがそんなことを繰り返したら確実にインフレ経済崩壊だ。誰もがご飯を食べられなくなる未来は来るだろう。


 GDPが下がっていても外貨とか国外の資産とかは莫大で実は上の方はそんなに資金を減らしてはいないし貧しくなってないらしいし。競争に負けてるところはもちろんあるけど。貧しさと言うなら昔のほうが確実にコンビニなんかもないし小さい商店が中心で、つまりあちこちに備蓄がある状態ではなく貧しかったし道路インフラも整わずエネルギー生産量も低く貧しかったのに今の人たちが貧しいと言ってるのは消費が減り生産も合わせて減ることで価格が上がり欲しいものが容易に手に入らない構図であることや楽しみが増えてあちこちにお金を使うことになっていることなど複合的に理由があるらしいが、精神的には最低限生きていられたらいいと考えられなくなっているのが大きいらしい。


 楽園ネズミは生活に困らなくなったら滅びるだけだ。あの実験実はいい加減なやり方だったらしいけど。最初に八匹で近親交配してたらしい。まあありもしないなにかを求め続けるのは生物に仕組まれた生存本能が誤作動を起こすため。生きていくための欲望がすり替えられているからだ。


 これから学園へ行って僕たちは魔女たちから教えをこうことになる。果たしてそこで僕は政治家として成長できるんだろうか。


 上から見たことと下から見たことでは景色が違うし切らなきゃいけないところを切り捨てるのも政治家の仕事だから恨まれるのは単なる必然だ。だとしても、自分で少しでも前に進められたと思えたなら、いいな。


「新入生代表、アルス=アナナス!」


「はい!」


 ここから、僕の新しい挑戦が始まるんだ!


 なんとか挨拶を終えて帰ってきたら在校生代表の兄上、ラファエロが歓迎のあいさつをする。それが終わると今度は新しい教師たちの紹介が始まった。


 兄上は白の魔女カーラのファンらしくそちらをチラチラ見て顔を赤くしている。普段はクールなのだが……まあ情は厚い人らしくよく構ってくれている。その時もこっちをチラチラ見て反応をうかがう感じなんだよなあ。性格かなあ。


 いよいよカーラが壇上へ上がる。彼女から教えてもらわなくてはならないことは多い。感情的になって道理の合わないことを叫ぶだけなら馬鹿でもできるがそれでは世の中は良くならない。だからいろいろ思うところはあっても飲み込むことにした。カーラは僕のために村々を救ってくれたんだと思うし。虐殺なんかに加担していたら僕はこの世界で生きていけなかったかもしれないな。ただ甘いから。ひょっとしたら僕はカーラに甘やかされているんだろうか。そうかもしれないな。


「あー、こういうの実は何度か経験あるんだよな、壇上に立ってみんなに話すの。もしあんたらがやることになったら結局やることをやるだけの機械になってやるといいよ。あんたらが先生になって壇上に立つ順番が来たらそうするといい」


 ……そんな日は来ないけど。何人かクスクス笑っているからみんなそう思ってるんだろうな。何人か真剣に聞いてるけど。これがカーラのバランス感覚かなあ。


「若いやつはとにかく親がクソだ、社会がクソだと思ってるだろうが親や社会もガキはクソだと思ってるんだ。お互い様だな。そしてクソの社会のクソなガキどもがちょっとマシになるために学園がある。この学園って入試に立ち会ったけどめちゃくちゃレベル高いな。まあ未熟といえば未熟だが騎士とか末端としては立派に勤め上げられるレベルだろう。落ちた皆さんは他の学校で頑張ってください。いないか」


 いないな。この国の学園は王都にいくつかの専門学校的なものがあったりするので貴族ならどこかに入っている。ほとんどの貴族ですらこの学園は落とされる。身分なんて魔王の下では平等だ。もし権力を傘に着たことをやると魔王が挨拶に来るらしい。怖すぎる。ギフト無しならカーラも負けるそうだし。なにそれ魔王。ほんと魔王。


「人生は全部運で決まると言っても過言じゃない。誰に出会うか、どんな言葉に出会うか、それもまた運だ。自分の精神が未熟だと思うならとにかく自分を否定したり周りを否定したりして逆に相手はこんな部分で正しいことを言ってると相手を肯定する方でも考えろ。どちらも大切だ。一方の見方になるな。その一方には何かしらの思惑があるし正しさがあるし、間違いがある。世界はひとつで区分できるものでないからどちらかの立場を持てば必ず欠ける。相対性と言うんだがな、結局は世界はバランス感覚が大切ということだ。私みたいに偏ってると必ず失敗するんだが逆に言えばそういうやつは行き着くとこまで行ってたりするからそれを見て学ぶことは必ずある。よく誰々は教師の資格があるのか〜なんて言うやつがいるけど反面教師もまた教師だからな。いいところ悪いところちゃんと両方評価していくと自分のセンスを磨けるぞ。大切なのは自分が学ぶかどうかでしかない。チャンスを拡大するために学ぶんだ」


 サラッと難しいことを言うよな、カーラは。噛み砕いて学んでいけたらいいんだけど。


「人生ってやつは運だが、だからな、あらゆるチャレンジをし続けろ。百分の一のクジを百万回引いて当たらないことはある。運がなかったと諦めるのも百万一回めを引きに行くのもお前たち次第だが、求めるものを手にしたいならあらゆる角度から挑戦を続けることだ」


 挑戦することが大事。だからここから僕たちの成長のためのチャレンジが始まるんだ。


「それでもわからないことがある。壁にぶつかり、悩み、迷い、この先どう進めばいいのか迷う。ヤブを払い、道をかき分ける手段はないのか探す。高いところにある果実に手を伸ばす手段はないのか見回す。疲れ切り、倒れ伏し、もう前に進めないと思うだろう」


 人生は苦難の連続だ。それでも生きていくと決めたなら。


「ツバを吐き、うなだれ、愚痴をこぼし、誰かを恨み、もう立ち直れないと思うほど痛み、くたびれた時、その時には」


 それでも、僕たちは明日へ進まないといけない。


「その時には、それでもどうしてもどうしても前に進みたいと、そう願うなら」


 だから、この先へ進む。そのために。




「この魔女が、杖を貸してやろう」






 はーい、有り難うございました。ここで一旦完結です。学園編と偽神編があるけどまあこのお話は趣味なので、次の面白いお話を書きに行きます。書き方をガラッと変えますのでそっちは読みやすくなる、といいなあ。そうしたい。リズム感大事。


 ここまで読んでくださった方は本当にありがとうございました。アルコールを抜いたらいろいろ泥の中に沈んでいたことを自覚してもがいてみた感じです。これからは楽しいお話を書きたいと思います。またおつきあいください。よろしくお願いします!




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