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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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大破壊

 インフィニティでなにができるのか。そもそも無限ってなにかというと数直線の外側にある架空の概念なんだよね。無限は実在しないが計算上の便利があるから現れるものだ。リンゴを分割しようと思えばほとんど無限回分割できるけどりんごの数は変わるわけじゃない。無限を用いようとした時には実数を無理に分割しようとしたりすると現れるってことだな。物質が無限大にあると空間が埋まってしまうしそうすると数えられなくなる。無限を現実に引き出そうとすると世界が変わってしまうわけだな。だがインフィニティをスキルとして成立させている以上なにかしら破れる境界があるということになる。


 例えば数直線の直径と面の上に現れる円は次元が変わっているように、インフィニティは次元を超えるのだ。それだけは赤の魔女リディアに教えてある。そしてマイルーム内で何度か世界を滅ぼしつつ大丈夫なラインを見つけたらしい。私の魔力障壁も突き破ってきたぞ。致命傷ですんだ。初級の魔法でも障壁がないと命を取られるくらい威力あるけどな。それで今回はなにをやるのか、ちょっと楽しみにしているのである。


「じゃあいっくよー!」


「こどくろがはりきっていろいろめいでおとましことにならんとえーけどね」


「子供が張り切りすぎていろいろ壊して大変なことにならないといいなって翻訳させんじゃねーよ」


 ホント水野は方言好きだよな。最近マリーちゃんもたまに方言になってることがあるんだよな。なぜか翻訳できるけど。星のんにインストールされてるらしい。


 みんなで観戦してると空に光る壁が現れた。んんん??


「えーい!」


 その壁が振り下ろされる。いや大きさが一キロ四方ある炎の壁がズドン、と地面に落ちていく。大破壊ってレベルじゃねーぞ。町も城も平らになってしまう。砂埃でなにも見えん!


「ねーねー白さんもーいっかい!」


「はいよ」


 私も悪乗りしてなかったことにしてやる。ちなみに住民のほうはダメージをカットしておく。兵士や貴族は戦争の痛みを思い知っていただこう。


「次は〜、いんせき〜!」


 次は平面でなく立体に炎をまとめ上げている。もともと無詠唱で炎を出せたのを一万とか十万とかの単位でまとめて放てるようになったらしい。半端ねーな。そうだよな、インフィニティなんだから本来数の制限はないんだ。ただそれだけをコントロールする精神力が人に無いだけでな。これがリディアの能力ってことだろう。感覚で全体をコントロールしてしまえるヤツはたまにいる。並列思考とかではなく全体を一枚の絵のように操る。たぶんリディアは絵が上手いんだろうな。無限を操れる程度右脳が発達しているんだろう。


 しかしこれだけではインフィニティとは言えないな。さて、どこまで極めているのかな。


「もいっちょー!」


 リディアは目の前で多数の炎の玉をぶつけあわせて圧縮していく。なるほどな。


 結局のところインフィニティは境界を超える力なわけだが物理的にはアキレスと亀みたいに制限がかかっている。アキレスが走って亀に追いつけないのは時間の方も分割しているからだ。現実には時間の進行を分割できないのでそのままアキレスは無限を踏み抜いていくわけだな。数学とか無限が発生する時には必ず人間の操作がある。物理世界には無限はない。しかし超えられないとされる境界はあるし、それを超えたところにある物もある。円周率は無限に続くが直径があれば円を作れる。


「いっけー!」


 そして目の前に魔法のルールを壊さずにその境界を超えている現象が発生する。レーザーか。


 質量がある物を無限の速さで放つと光速になるが現実には質量のある物はその過程で破壊され純粋なエネルギーの塊になる。レーザーだな。ただの炎の玉の魔法がレーザーに変わって瞬間的にターゲットを焼き尽くす。


 レーザーって漫画やアニメと違って光速なので軌道なんて見えないんだよな。パン、と音がしたらターゲットに穴が空いてる。そもそも人間はパンチのスピードくらいでも見えないことがあるんだがたかが時速五十キロでそれだ。光は秒速三十万キロメートルで知られるが時速に直したら三千六百倍。そんなもん人間に見えるわけがない。音も着弾してから聞こえるんで遠くだと建物がバラバラになってからドカンって音が聞こえてくる。ヤバすぎんだろ。


「次はー、これえー!」


 ズガン、と耳を裂くような音がしたと思ったら目の前が平らになっていた。うーん、接触面を無限に詰めて放った感じか。核爆発じゃねーか。


 幸いなのは炎の玉の魔法は炎自体の質量しかないんでそこまで大破壊にならないことか。この使い方のなにが問題かというと相手がなにをされたかわからんまま死んてるとこだな。相手を恐慌に貶めようとしてるんで派手な方がいいんだよな。そのあたりをリディアに説明しておく。このちょっと抜けてるあたりがコイツらしいとは思うけど。


「そっかー。どうしようかな〜」


 どうでもいいがだいぶ楽しんでるんだよな。相手を殺してしまうかもとかそんな躊躇が一切ない。このあたりが星のんが好きなところなんだろう。正義なんて突き詰めればすべて暴力だからな。相手を傷つけずに制圧したら暴力じゃないかと言ったらそんなことはない。だからこそ法の力とは必要悪と考えるべきなんだ。極端な話多くの人が納得するのが正義の条件なんだけど誰もが納得するものがいいものかと言えばそんなことはない。例えば誰もが仕事をしたくないと思ったら仕事をしないことが正義、にはならないように。大衆の意見も必要だけどそれだけでは国は回らないからな。税金だって安くしてほしいとか無くしてほしいとか思うけどもじゃあなくなっていいのかと言えば医療費何十万とか払わされることになってもいいのかって話になる。文化的な生活を守られているのは税金が高いからだし実はアメリカの税金も消費税みたいにわかりやすくはないけど高いからな。それが物価に反映されてるわけだし。


 まあ正義って最終的に世の中がよく動くように、経済活動が活発になるようにするのが大切なわけだ。国に個別案件とか自分の問題でしかないものを解決してもらおうとしても無理だろ。


 リディアの場合とにかく目についたものは叩くという感じだから間違いはするだろうが思い切りがいいので瞬間的な判断ができるわけだな。人の話を聞かないなら困るけど人の話は聞くし。素直だからな。


 正味善悪なんて人様の都合でしかないんで身内の都合が悪いから守るのが情だろう。要するに情が厚いタイプのほうが星のん好みだ。私はそこは普通だろうな。仲間が悪いことしたらかくまう方だわ。その人が大切なら訴えるべき、なんて正義側の言い分でしかない。情を許さない正義はただの暴力だしそこが分かれるところ。国が情治では間違うし個人が正義を追求し過ぎたら鼻につく。そんなものだろう。結局そこの齟齬で人間は何万年もいがみあってるわけだし。治らないね。


「うーん、じゃあこんなのー!」


 まだなにかあるらしい。炎の玉をチャクラみたいな輪っかにしていくつも浮かべ始めた。なるほど、始まりと終わりを無限でつなげたわけだ。超えられない壁を超えられると言っても世界が滅びるようなのは意味がないので星のんもブレーキかけるだろうが質量やエネルギーの総量が維持される限りそれは許されるらしい。本来この世界のマナはエネルギーを持たないから無限のエネルギーというのは世界を割らないと出てこないんだよな。


 まあ結局のところインフィニティとは、自由なんだ。


「えーい!」


「どうでもいいけど楽しそうだな!」


 楽しそうなんである。まあ可愛いからいいけどね。


 飛んでいった輪っかは建物をズタズタにしながら町中を飛び回っている。市民にはダメージが入らないようにしてあるので楽しそうにしているやつまでいるが貴族とか兵士には当たるので泣きながら逃げ惑っている。うーん、これだけやったらいいだろ。あの輪っかは切断力まで操作してるのかなにも障害がないかのようにすべてを切り刻んでいった。


 国との交渉? リディアにできるわけないので私がやったけど?


 そんな感じで大陸中の国を独立させていく。戦争するなら勝手にやってくれ。こっちの大陸のことまで手を出してられないからな。そのうちなんとかするかもしれないけど。立石と星のんは圧倒的だったけどカット。いや、理不尽が服を着て歩いてるやつらだからな。ひどかったとはほめておこう。


 そして物は試しなのでスクルドに戦わせてみることにした。ヤドカリのウルドと風の精霊王ベルの三人で戦うらしい。ゴーレムのボディをヤドカリのウルドが背負う。


 他人の宿を借りながら強気なのが私の過去らしいところ。結局のところ他人に守られてるから強かった時代だな。面白いことにベルは自由が大切な今の私そっくりだしハマってるんだよな。スクルドは私の未来のために囲っているわけだし。スラム出身とは思えないほど身奇麗にしているし変にかしこまったセリフで私の神経を逆なでしてきたりするしなかなかに曲者に育っている。まあ可愛いからいいんだけどな。


 スクルドはゴーレムに乗って出撃する。敵は中枢に近づいたためか大型の虫の魔物を出してきた。強度とかどうなってるんだろうな? 虫の殻は人間の大きさになるととてももろくなるんだよな〜。小さいから頑丈なだけで。二乗三乗の法則で有名なやつだな。なのでこの世界の虫がデカいのはマナが形を保つために強く働いているんだろう。ドラゴンとかと一緒だな。なのでまあ魔法にもある程度は強い。


 スクルドは人型のゴーレム……というかロボに乗ってる。なんでもウルドの宿ゴーレムと合体するようにしたらしい。それを見てベルも合体したいと言い出した?のでベル専用戦闘機を用意して合体できるようにしたそうだ。その他にも私が修行で作ったユニットとかを放って攻撃するようにしてあるらしい。魔法陣のように空に配置して広域魔法をベルのマナで放つ仕組みだとか。うーん、なんというか世界観を全力で捨てに行ってるな! まあ設計したのはスクルドなんでなんにも言わん。


スクルドの機体がビームサーベルのようなものを振り回して建物を破壊していく。市民にはダメージが当たらないようにしているのでものすごく喜ばれて?いる。せんそうなんだけどな〜。まあこの大陸ずっと戦争してるからあんまり国民が貴族とかを慕ってないので反感が起こりにくいようだ。流石に嫌戦感強くなってるみたいだな。民衆が戦争を望んだりしてたら本当に厄介だけどこの大陸はそうでもない。元の大陸もアナナスとかでは戦争反対派が多いけどアールバイエンなんかは好戦的な国で民衆まで大陸統一を望んでいる。


 正直民衆はコントロールされすぎているんだよな。あの大陸は上にいるのが神だから仕方ないのかもしれないけど。


 スクルドとあわせてウルドが殻ゴーレムからミサイルを放ちまくっている。そしてベルの乗った戦闘機がミサイルで城を破壊していく。虫たちは空を飛んで応戦しようとしているがほとんど撃墜されてるな。まあ本体のベルだけで勝てるはずなんだけど楽しそうだからいいや。


「ベル、ウルド、行きますわよ〜!」


「きゅー!」


「ウオオオオオン!」


 ベルは普通に鳴いてるけどウルドはなんかわざわざ声を放つ仕組みにしてあるらしい。嬉しそうにハサミを振り上げてはウオーンウオーンと鳴いている。楽しそうだからいいや。


「今ここに心と魂をひとつに合わせるとき! 合体!」


 スクルドの機体が空を飛びウルドのゴーレムに着地するとウルドの殻が変形して脚が出てくる。こってるな〜。これ設計段階で立石がいろいろぶっこんでそう。機械好きだからなあいつ。自分でやると壊すけど。


 背中にベルの戦闘機が組み込まれどんな変形したのかわからんが頭が兜をかぶったように大型化する。完全に合体メカなんですが。リディアとマリーちゃんも喜んでるぞ。


「風と海と大地の心をひとつに変える! 超魔導合体戦士アルティメット・フュージョン爆・心・王(バク・シン・オー)!!」


 誰だネーミング考えたやつ。これは水野も混ざって作ったな。いや、ここまで精巧になってるのは星のんも混ざってるはずだ! バクシンオーってなんだよ心って付けたの絶対わざとだな!! スクルドの声が嬉しそうだもん! 星のんたちもワイワイはしゃいでんじゃねーよ!





 完全に趣味。まあこのお話は全部そうですけど。

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