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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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襲撃、赤の魔女

 クロノの世話とか呪病の根源の捜査とか連携とかについて領主のマッテオ=ロッヒ伯爵と対話していると突然襲撃があった。なんだよいきなり。表で、たのもー、とか言ってる。まあマイルームの射程内に入ってるものは直接観察できるので見てみる。うーん、ちょっと日焼けしたむっちり美少女がいる。赤い髪に赤い目ってこの国でもなかなか珍しいな。


「あああ、あれは赤の魔女!?」


「知っているのか領主」


 いや私も知ってるけど。あれが赤の魔女リディアね。長身の美少女である。まあ出ていって遊んでこようかね。なにをしに来たのやらわからんし。だいたい予想つくけどね。脳筋そうだし誰かに変なこと吹き込まれたんじゃないかな〜。めんどくさ。マイルームを通って会いに行く。


「はいはい、今忙しいからまたね」


「またね!」


 マイルームを通じて顔だけ出して引っ込んだら娘も一旦帰ろうとして近くのおっさんに止められた。あのおっさんがそそのかしてる……ってわけでもなさそうだな。


「たのもー!」


「はいはい今忙しいからまたね」


「またね! じゃなくてえ!」


「なんだい。チョコチップクッキー食べる?」


「いただきまーす!」


 食べた。餌付け成功だな。めっちゃ嬉しそうにチョコとかクッキーこぼしながら食べてる。どこかで見た光景。赤の魔女って貴族のお嬢様じゃなかったっけ? 情報は当然集めているけどやたら戦闘狂な印象があったのにそうでもないみたいだな。本能に忠実なタイプだろう。星のんが好きなヤツだ。私は話が通じないやつは基本スルーだな。嫌うことはないけど関わりたくもないだろ。誰にでもなんでも教えてまわるなんて面倒なこと誰がやるんだよ。だから自分で学ばないと駄目なんだよな。他人に施すにはひいきをするしかないしそれをする理由なんて肉親以外にはないんだよな。だからまあ教師なら教えても問題ないと思ったんだが。


「えーと、とにかく病気を流行らせてる悪い魔女を倒しに来たんだよ!」


「誰にそんな話聞いたんだい。トーナインのおっさんの敵対派閥ってわけじゃないだろ?」


「え、派閥? トーナインさん?」


 だめだこいつ会話できないヤツだ。下調べとか人の言葉はまず疑うとかしたらいい。自分の考えもまず疑う。人付き合いでそれをやるヤツはバカだけどそれができないヤツはなんでも鵜呑みにするだけのバカだ。相手の話を肯定するのは相手にミスを気づかせる上でもいいんだよな。なので普通に話すぶんには肯定から入るといい。鵜呑みにならないように。人当たり良く見せつつ相手は困る。考えるというのは流動的だ。さてさて、赤いのでは裏はわからんようだし、そっちのオッサンに聞くか。


「それで、誰にそそのかされたのこの娘」


「いえ、どうしてもと言うから連れてきたのですがまさか魔女と戦おうとするとは……」


「手詰まりかーい。おい赤いの、誰に魔女が病を振りまいてるって聞いたんだ?」


「お城にいたおじいさんだよ」


「あー、エンリコ=ゼーバルースだな。拡大解釈しやがったか」


 要するに魔女に対する対応を各領地に任せるとしてあるのを逆手に取ってあのおっさんは魔女ごと(・・)に対応を変えることにして赤の魔女は貴族として扱い白の魔女以下他の者を駆逐させようと考えたというわけだ。アホだな。自分ちの領民じゃあるまいに赤の魔女を私物運用したら辺境伯に喧嘩売るようなもんだ。ゼーバルースのオッサンもアホだがコイツはそこまで考えてなさそう。親の胃が心配になる。


「まあ面白いからやってみるかね?」


「やってみよー!」


「軽っ」


 殺し合いだろ、やるの。まあ誰も死なずに終了だけど、だといいな。インフィニティについて気になってることがあるしコイツが制御しきれてるのかも見ておかないと宇宙焼かれても困るし。


「じゃあ、青いの、お前さんも参加しな」


「うん。楽しそう」


「コイツはコイツで変に脳筋なんだよなあ」


「見学していいですか!」


「いいよマリーちゃん。マリーちゃん観戦好きだよね」


「はい! 勉強になります!」


 星のんと立石は対戦ゲームしてる。それは置いといて、マリーちゃんは王国軍とやり合った時も当然モニターで見ていたりする。あとで滅茶興奮して感想言ってきて可愛かった。


「そういえばマリーちゃんも学園に通うからリディアちゃんと同級生だねえ」


「そうですね、よろしくお願いします」


「え、そうなの? よろしくね!」


「これからやり合うのわかってんのかなあ……」


 まあどうせ遊びに過ぎないんだけど。このあとこの病の元凶を抑えないとダメなんだけどねえ。


 ふふ、まあ魔女とじゃれ合うのはお約束みたいなもんだしな。普通に魔法だけでやりあうのはきつそうではあるし。向こうもなんか精霊連れてるし。スルト? なんというか……星のんは節操がないな。名前つけたのベルは私だしそこはいいんだけど精霊王何体も魔女につけるなよな。まあ本来そんなつもりなかったのかもしれない。ギフト持ちがそんだけヤバイって話だよな。でもインフィニティ、使えてるのかねえ?


「じゃあマイルーム・マイワールド。今ここは私の空間になってる。あんたが世界を壊しても外にはなんの問題もない。全力でおいで」


「わかったぁ!」


 すげー素直だな! 言いながら周りにファイアショット、炎の初級魔法を浮かべている。一発一発の規模が魔法限界値の大きさになっているな。やはり足し算はできるがかけ算はできないようだ。もっともかけ算したらした瞬間に世界が終わる。そんなアホな調整してたら星のんも流石にやり直しするだろうしな。でもたまにミスするらしい。人間の感性を抜け過ぎたら全知全能なんてまるっきり面白くないからな。個を磨き不完全を愛するのも大切なことだ。ただ不完全に甘えなければいい。上を目指す情熱も大切だ。そりゃ変わらないより変わるほうが面白い。だから世界を作ったんだろうし。


 攻撃を受けるがまあドミニオンで飲み込んで消せるレベルだな。そしてそれでは何万発撃とうが意味がない。ドミニオンは体内で循環するマナを体外でも循環する程度の技で仕組み自体は難しくない。半端なマナだと霧散するしコントロールしきれないだけだ。ただしコントロールしきれるならそこに侵入するものを腕力でねじ伏せるようなことができる。炎の魔法、ファイアショットは最大威力でも私の壁を超えられない。ならどうするか。さて、私が教えてもいいんだけどさ、教えたら頼りきりになるだろ? 甘えるのは駄目だ。それは自分の成長を著しく阻害する。損だぞ。自分の人生のぶんを楽しめないじゃないか。


 さて、何回か頑張って工夫して地面に当てたりしてるけど無駄だね。


「インフィニティを使いな」


「使ってるよお〜!」


「そのマナだけ無制限なのはインフィニティじゃないよ。そもそもなんでマナが無制限に使えてると思ってる?」


「無限だから?」


「インフィニティとアンリミテッドは違う。あんたの使ってるのはインフィニティじゃないんだよ。本質的に無限というのは数学上の概念でしかなくて物理的には存在しないんだ」


「でも宇宙って無限に広いんじゃないの?」


「光速の限界により果てが決まってるだけで果てがないとは思われていないね」


 説明するとクソ長くなるが真空は定量的なものだ。なので宇宙の果てでは真空は薄れ時間が進まなくなる。エネルギーがあるから時間があるんでエネルギーがない場所に時間は流れないからだ。真空は真空でエネルギーを持つ。なので宇宙の果てはあるがそこにたどり着くには空間を支配しないと無理だろう。まあそんなのははるか未来の話なんで今どうこう言う話じゃない。問題は物理的には無限は存在しないが神は無限も操作できる。世界をデータとして扱えるってことだな。


「難しい話してもわかんねーだろうから、例えばそのファイアショットのスピードをインフィニティで加速してみな」


「え、光速って出せるの?」


「光速の上限って絶対零度とおんなじで理論上はあるんだけどたどり着けないこともわかってる。ただ理論上はあり得るので構造的には負の温度とか作れるんだけどそれはまあいいや。つまり質量のある物体が光速に近づくには無限のエネルギーが必要だけどインフィニティにその制限はない。理論的に光速を出せる。ただ……」


「わかった! やってみるね!」


「まてこ」


 すべては吹き飛んだ。当たり前だが質量を光速にするために必要なエネルギーって実は有限だ。質量を崩壊させるエネルギーを加えれば物質はすべて光に変わる。そうでないとアインシュタインの方程式が成立しないしな。その結果なにが起こるかというと質量がエネルギーに変わる。知ってるかもしれないがこれは核爆発のエネルギー源だ。ちなみに広島型原爆では一グラムより少ない質量しか消失していないらしい。まあファイアショットの炎に質量が伴っていたというより炎により空気が圧縮された結果だろう。ちなみにすべてが吹き飛んだ瞬間にリセットされるようにしている。ギフトはギフト持ちに直接干渉できないが環境には干渉できるからな。


「質量が光速になると大爆発を起こす。二度とやるなよ」


「えー、魔女さんがやれって言った!」


「説明してるとこだったろーが。うかつになんでもやってみるんじゃねーよ!」


 なんでこんな危険なやつにインフィニティ持たせてるんだ? 星のんのことだからなにもなかったように修正してお叱りするつもりだった、とかなんだろうな。ホイホイ出ていくつもりってことはこいつ星のんにだいぶ好かれてるんだな。え、うちでもゴロゴロしてる? あれはただのFIREしたニートだ。神より紙に近いペラッペラななにかだ。


「インフィニティはおそらく制限をコントロールできる。無限から無限を引くといくつになると思う?」


「ゼロ? いや、ゼロにならない?」


 答えは不定形だ。定まった数ではない∞は無限に無限をかけることも足すこともできるが答えは無限となる。そして無限に無限を足した結果の無限から無限を引いた時は最初の無限とは違う無限であるためその数がいくつかわからない。無限に定数、例えば5を足したあと無限を引いてもやはりわからない。これは無限が定まった数でないために起こる。


 逆に言えば不定形を操作できるし枠組みを超えることができる。無限大は数直線上に存在しない数のことを指す。例えば負の温度なんかだな。まあそれは説明が長くなりすぎるのでAIにでも聞いたらいい。


「調整するんだよ。インフィニティを。インフィニティは枠組みを超える力だ。それをファイアショットの枠組みに入れてるのは星のんの安全装置だから宇宙を壊す機能はないけど物理をある程度はぶっ飛ばせる。エネルギーが理論的限界でもそれをさらに超える、それがインフィニティ。インフィニティは絶対ではないということだな。絶対を超えるものだ」


「絶対って意外とお安い?」


「当たり前だろ。絶対約束ね、ってこの世界で何回破られてると思うんだ」


「お父さんひどい!」


「それは全国のお父さんが泣くからやめろ」


 つまりインフィニティは神の力でしかない。対抗できるのはゼロだけだ。マイルームに入れてたらなんでも支配してるのと変わらないけどな。このスキルとんでもねーわ。まあギフトは全部とんでもないけどな。制限をつけないと目の前の娘みたいにちょろっと周囲を大爆発させてしまう。


「練習していい?」


「他所でやらせるわけにはいかんからな、想定できるあらゆる無限を実際にやってみろ。無限は絶対を超える物、上手に使うんだね。あとここでやったことないのを外でやるなよ」


 しばらくトレーニングルームを貸して練習させることにした。一緒に来てたハート子爵?とかいうおっさんも終わるまでマイルームの楽園にでも押し込んどこう。私の部屋はまあ女ばっかりゴロゴロしてるからおっさんは入りにくいだろうしな。


「えーと、スピードはインフィニティになる、重さはインフィニティしたらブラックホールになっちゃう。えー、この力使えなくない?!」


「使えなくないよ。例えばだな……」


 いくつか可能性を教えてやった。しばらく練習風景を外の部屋から見ていようかな。勘は超鋭いらしいからなんとかやるんじゃないかね。私も楽しみだ。






 無限とはいうものの制限をつけなければお話にならない話。

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