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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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白魔女の救済

 さて、ツンデレではないが呪病が流行るトーナイン公爵領内マッテオ=ロッヒ伯爵領に行く。その前にちょっと魔王に呼び出されたんだけど。首都に出るたびに呼び出すのなんなの。なんつーか逆らえないわけじゃないんだが言うこと聞いておこうかなってなる相手だよな。それくらい魔王は権力もあるんだけど顔が広かったりするし、この先は偽神のことにかかわらないと話しにならないことにもなりそうだから味方に引き入れておきたいんだよな。その中で一番偽神のことに詳しくて権力があって話が通じそうなのが魔王なんで。それで魔王の話の内容は……うーん、まあ今すごい入るべきポジションだったと言えばいいか、学園の教師に誘われたので乗っておいた。なんでも人員にいくつか空きができたらしく、なぜか水野こと青の魔女も誘われてノリノリでやると言い出した。他にも前にあったリリアーナってSランク冒険者もやるそうだ。あいつドラウブンの十二神将なのにいいのかね。もともと多国籍学園だからいいらしい。なんつーかアナナスにあるけど独立してるんだよな。魔王のダンジョン。


 さて、トーナイン公爵領は今現在王の他では最高権力を持つ貴族家だ。その領地。広い。広いから。うーん、全土に病気が広まってるらしいことはすぐに冒険者ギルドで話を聞けた。そろそろ近隣にも病は広がっているらしい。全部対処するのは無理だが……どうしたもんかね。多分根源になってる黒の魔女を止めても無駄だ。呪詛にはそれを放ったヤツのマナが染み付いているはずだがそれが切れている。要するに誰から出たものか辿れず呪詛返しも効かない。だけど呪病としての機能は残ってるっていうね。つまりまあ黒の魔女犯人じゃない説まである。


 人を使おうにもブロッサムの力はもう国中に広がっているが主に冒険者方面だからな。ミネルバ商会のツテも使ってるんでブロッサムの手はすごい速さで広がった。ミネルバ商会使うのはチート過ぎないかとも思うがあんまり時間をかけたくないからな。タラタラやってたら一枚噛ませろだの対立して起業だの問題が増えるからこういうのは速攻が大事だろ。ミネルバ商会だってこの一年で盛り上がってきたんだろ、と思うかもしれないがミネルバは天使なんで千年前からいるんだよな。商会自体はずっとあるんだわ。それを私が好きに使うことはできないが同業者の妨害とかは防げる。ネームバリューだけ借りてる感じかな。それでまあ商業ギルドも冒険者ギルドも私には好意的。そもそもギルドって貴族から金に権威を移してる部分はあるよな。貴族に使われないための組織だし。なので金があると寄ってくる。かんたん。だけどまあ疫病対策では使えないんで、囚人(うさぎ)たちを使うことにした。


 うーん、とりあえずひとつ村を訪れてみた。全身に黒斑が浮いて腐ってる。ううん、黒死病みたいな病気なのは人体の反応だから仕方ないのはある。熱病や下痢ってたくさん種類があるけど症状が大きく変わらないのはそれが人間の反応だからなんだよな。焼けば燃えて炭が残るくらい当たり前のことで幾種類か別の物でも特定の毒素だったりして同じように反応する。これもそのたぐいだ。なんつーか呪いと病気が関連づけられていた時代には本当に呪いもあったのかもしれないな。宇宙が膨張して無くなったのかも。そんなわけないな。


 まあ人間の肉体がウイルスや菌に対して反応した結果見た目同じ作用が起こっているってことなんだけど。こういうの説明して喜ぶ人いるのかな。異世界に行ったら人間の細胞の反応が違った、とかあり得るからな。


 根本的な話として人間、知的生命体と言うのは世界があれば必然的に存在しているんだよな。存在は干渉によってのみ示され、示されればそれは必然情報となり、それを自由に扱おうとすれば知的生命体となる。すべては必然だ。まあその条件が整う可能性が著しく低いわけなんだけども。つまり世界は必然で回ってるってことなんだよな。知的生命体である以上情報に依存しているのだから情報を集め差異を知り尽くすべきだ。もしその土地の者がなんにも知識を積み上げてないとしたらそれは知的生命体と呼べるのか? 地球人もそうだけど天才と呼べるような人間は多分毎年千人に一人くらいいるんだよな。そういう知的生命体の尖ったやつが歴史を作ってるはずなんだからまずはそこを学ぶべきだしそうしたらやはり考えと思考、経験を積み上げて新しい判断を見出す。そうしてやっと文明は成長していくわけだ。なので前提情報がまるでない現象というのはほぼないと言えるし必ず類似の現象がある。そして逆算的に人間が同じ姿をしていられる条件が整っていることは考えないといけない。例えば地球人だって重力や酸素なんかの条件が違う土地で生活すれば違った姿になるからな。人間が成立する条件はそれだけシビアなんだ。なのに異世界転生したら人間がいましたって話ばっかりになるのはそもそもそうでないとお話が進まないからなんだが、現実にそうなっているならその条件が極めてレアリティの高い条件であることを頭に入れておかなければいけない。すべての物は必然としてそうなっているがその条件が整うのは奇跡的でもある。


 要するに物理的にはほとんどこの世界は前の世界と変わらないので肉体の反応として同じ結果をもたらす病があることは不思議でも何でもないということだな。


 問題はこの呪詛による病、黒呪病と名づけよう、この黒呪病は地球のそれとどの程度まで一致しているかということなんだ。例えば感染経路は小動物である、その可能性は高い。なぜなら流行病と言うように人々の間を流行しなければ感染拡大が行われないのでそれをつなぐ物理的要因が必ずあるということだ。しかしこの世界には魔法があるのでひょっとしたら人の心から心に飛んで感染、なんてこともあるかもしれない。研究して対処するのはこの世界の人間に任せるとして。


 マイルームに放り込んで治療、その後はどうするか。


 多分だが治ったとしてもそのまま元の土地には戻せない。感染源が特定されていないし周囲の村町の人間がそれを信じるかも問題になる。悪いことに今はこの世界で流行病が起これば村を焼いて感染を食い止めるということが普通に行われている。


 いくつかの村を調べてるうちにアルスの坊やがそれに駆り出されてるらしいんだよな。参ったね、あの坊っちゃんは知っての通りこの世界に染まろうとしすぎて盲目的にやっちゃいそうなんだよな。前世の知識がマイナスになっちゃってる。


 災害がマメにやってくる日本なのになんであんな呑気な現代人が増えたんだろうな。誰かの策略を感じざるを得ないわ。なにかが起こったらとにかく自分の知恵で状況を回復するように務めなくちゃいかん。それは鉄則だ。馬鹿でいていい道理がないんだよ。だからといって真面目に染まる必要はないが。ファンタジーに夢を見るのはいいが現実は見なくちゃいかん。周りがなんとかなんてしてくれない。日本は昔からそう。


 そしてこの世界、この国は結構全体的にだらけてるのでよくある中世に転生みたいに血みどろでもなければかと言って飢えがないわけでも戦争がないわけでもない。戦争の勝利にのめり込む者もいる。例えば一般人が戦争を勝つことを望んでいたりする。日本は敗戦してからそういうのが一切なくなったので戦争に勝つことが誰にとってもいいこと、というのは異様に感じるかもしれんけど普通に相手を叩きのめして勝つことに喜びを感じるのが人の常だ。クソくだらねえ。その上でこの国は女神が愛の女神を名乗っていたように戦争に対する忌避感はまあまあある。なのでここで魔王もいるし、私も動きやすいというものだ。人からの尊敬だのなんだのは実際どうでもいい。ビッグウェーブを起こして捕まえるだけだ。平和を求める動きを作らなければいかん。そのためには教員ってのはいいポジションだ。思想を塗り替えるつもりはないが。他人を変えるすべなどない。ただ教えることはできるからな。ぶつかり合わなければ石は丸くならない。当たって砕けろ。


 で、とりあえずアルスの坊やのとこに行った。まあ素直に助けを求めてきたので助けてやることにする。うーん、自分のやってることが間違ってると思うなら間違ってると思っても被害がない方を選ぶ。そういうことかもしれないが、案外馬鹿みたいなこだわりで人間は思考停止している。間違いと思う方向に考えることができるのは人間の最大の能力だろう。全部これが正しいと考えて動いて間違いにブチ当たるというのは正解と思うたくさんの考え方の中で間違いにぶちあたるやつを選んでしまったってことなんだよな。将棋と一緒。悪手とかただ捨てみたいな手で状況が決定的に良くなることがある。それを読めるかって言ったら読めないんだよな。現実のサイズだと情報が多すぎるから。でも筋というのはあるし筋は通さないとならない。そこに読み筋も生まれるってわけだな。まあたかが魔女に力を借りたくらいで継承権を無くすとかはない。しっかりと会議で決まってるように災厄の魔女たる私に対する対応はそれぞれの領地で決めることになっているしトーナインの兄さんは魔女に助けを求めてる。


 ははは、災厄の魔女と見立てたから国を上げて絶対に敵対する、とか魔女と連携なんてしない、とは決まっていない。


 と言うわけでさて、各町に派遣したうさぎたちから次々に町の浄化と町の人たちの保護が進んでいると報告が上がってくる。いやー、優秀な配下を持っててよかったね。各地に風の精霊王ベルダンディーが白のベルを運んでマイルームの扉を開いているんだな。この白のベルはポインタにもなってるのでお高いがこういう裏技で世界のどこにでも出ていける。町の浄化過程でネズミについてるノミがこの病の感染源であることは特定できた。まんま黒死病だったわけだな。そこに呪いが乗ってしまったのでこんなパンデミックになったわけだ。原因とされる黒の魔女のとこに行ってみるか。まあなんかすれ違ってるんだろうけど。


 黒の魔女ってクロノのことだもの。私が作ったスライムバルキリーの。社会見学がてら最大の公爵領であるトーナインを調べさせていたんだよね。まあ悪いこととかはなかったんだけどどこにでもろくでなしはいるものでクロノとトーナインが対立する構造ができちゃってるらしいのでそこから罪をなすりつけられたと言うのが真相だろうね。白のベルのポインタから黒の魔女クロノのとこに移動する。ちなみに魔女やってみる?って聞いたらめちゃノリノリの波動が帰ってきた。スライム牧場の世話もクロノに任せられるようになってるし私も仕事を増やせるってものだ。


 な、ん、で、仕事を増やしてるんだよぉ!! 私ニートぉ!


 クロノは甲冑の上からフードをかぶって顔を隠している。村人たちはクロノを崇めてるらしくいっぱい集まってた。焼き討ちの話は別の村や街のやつが結託して集まってやったらしいしな。それで逆に村人たちが強く守ってるわけだな。ちょっと焦げてるけど小さな小屋で家具とかもそこら辺の貧民くらいのものしかないが布団とか質が良いしベッドとかも手作りなので少しガタついてそうだが新しいものだ。村人にできる範囲でお礼をもらってるわけだな。ちなみに筆談はできる。私がペットがしゃべるの嫌いだから私とは念話だけだけど。言語中枢持たない生物と言語で会話はできないことになってる。思念はダイレクトに伝わるけど。


 どうもクロノの方でも黒呪病に対抗していろいろ薬草集めたり治癒や浄化を行ったりしているらしい。追いついてないのは単に病原という発想もないし回復するたびに病に落ちる状況を繰り返してるんだろう。


「だ、誰だ?! 魔女様から離れろ!」


「お? 村の子かな? やっほー、白の魔女だよ」


「はえ?! え、魔女様が二人?」


 どうやらこのあたりの村人は黒の魔女はいい魔女と認識してるが領主サイドとしては原因がわからんので取り調べはしないとだめ、でも治療は続けないとダメなので離れがたい、連行するか、となって村と対立することになってるわけだ。領主側としては原因追求を急ぎたいので協力を頼みたい、自分たちが多少評判を落とす形で黒の魔女に話を聞こう、としてるのに焼き討ちがあったせいもあり村人サイドの抵抗が思ったより激しくて硬直しているらしい。正義が二つぶつかると戦争が起こる。はあ、やってられないね。さっさと治療するか。


「クロノはどうする?」


「……」


 村に残っていろいろ助けたいらしい。まあある程度現代知識みたいなものは勉強してるはずだけどね。じゃあこの問題だけさっさと片付けて領主の方は話をつけておくか。


 まあ今回は大して揉めずに終わったよ。領主が正義を押し売りするタイプじゃなくて良かった。近隣の村の対応についてもすでに騎士で抑えてるってさ。随分まともな領主様だな。まあそんなこんなで白魔女の救済によりパンデミックは沈静化することになる。


 まあ、それでめでたしとはならなかったんだが。






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