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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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病毒

 その後、ムルベイ公爵が領地の経済が好調であることを報告する。クリフト公爵はなにやら思案している模様。ふふふ、今度は私の工作だな。実はムルベイ公爵家に独立の動きがあるとクリフト公爵に情報をたっぷり渡してある。どう使うかは知らないがここで使うか考えているね? ちなみにリベルトのおっさんは私が資料を渡したのを知ってる。そもそもリベルトのおっさんも噛んでる。バレたらヤバいんじゃないのって? うん、まあ見ているといいよ。ちなみにツテになってるのは闇ギルドだの暗殺ギルドだのブロッサム傘下だったりする。もう王都の大きいとこも潰してる。どうせ弱い者いじめにしかならないからサラッと終わらせてある。いくつか潰したら喜んでーとか言いながら傘下に下ってきた。間違いなく女神のせいでゆるい。そんなわけでブロッサムは順調に拡大中であっちこっち裏から手を回してある。表立って王様とかってガラじゃないけどまあ権力や配下の組織だけあるのはいいよね。便利。そして伝えたデータだが当然だが独立の動きとは伝えていない。それとわかるようなデータではあるが。そこが引っ掛けなんである。


「少し待たれよ、ムルベイ閣下」


「む、なにかな?」


「皆様、こちらの資料を。失礼ながら好調なムルベイ領に経済を学びたいと考え資金の流れや物資の流れを調べさせていただきました。最近で最も大きな取引は真竜のオークション。そしてその素材がどこへ流れたかを調べたのですが……他にも……」


 けっこう長々と資料を読み上げているのでぼんやりと見ている。補完データをいくつか独自に調査してあるのでクリフト公爵が有能なのはわかるな。若くして公爵となった人らしい。


「……これによりムルベイの戦力は前年比で二百五十%以上も拡大していることになります。ここにモッセレン領の軍事力を足せばすでに我が国全体の戦力の半分を超えています。これだけの武力が一地方に集まっている。更にムルベイ閣下が独自にアールバイエン、ピーアと交渉を重ねていることもわかっています。敵国ですよ?」


 ……眠くなってきた。第一王子辺りはワクワクした顔で聞いてるがアリーチェはよくわからん顔をしてるな。第二王子はなんか興味なさげ。そういえばこの王子は未だ婚約者がいないんだよな。時勢の流れ次第で敵国に婿入りさせたりする可能性があるんでキープ状態というか。第三王子の方を辺境に出してるのも保険だしな。敵国に出すとしたら第三より第二だし辺境と結びついているのが第二王妃の息子の第三王子なのは結びつきがそう強くはないがしっかり結びついている、というアピールにもなる。外交としても内政としてもパランスのいいところだ。まあアールバイエンはかなり強硬な姿勢でアナナスを攻めていて小競り合い規模では済まない戦いが起こってるので実質第二王子婿入りのその話は凍結しているわけだけど。ちょっと第二王子のラファエロくんが可哀想になるな。


「よく調べたなあクリフト公。そんで?」


「……はっきり言ってしまいましょう。よくわかっていない方もおられるようですし。これはムルベイ閣下の……謀反、独立の動きではないのですか?」


「ブフォ」


 あ、リベルトのおっさんとなぜか王様も吹いた。いや王様は吹いたらダメなとこよ? いいけど、どうやら下手な策略だったかな。


「ラウロくんよぉ」


「ら、ラウロくん?! 失礼ですよ!」


「まあ失礼なのはお前さんなんだわ。それ魔女にも言われたんだけどよぉ、辺境で敵国とやり合ってんだから調略も仕掛けるし軍備も固める、当たり前だろうがよ」


「そ、それは、しかしこの規模は」


「アールバイエンの動きがちょっときな臭いんだわ。どうもアールバイエン帝国の女神、正義の女神エリシア様がよお、ソフィア様が不遇な状況に追い込まれていることを見過ごせぬってんでアナナスに強硬な姿勢を見せてるっつーかすでに大軍を構えてるわけだわ。そこで軍備を固めつつ平和交渉も進めている、ってわけよ。わかるよな?」


「う、それは……」


 まあ普通に考えたらどっちとも取れるように配置してるんだわ。ムルベイ公爵であるリベルトのおっさんが簡単に割れるような方法で反乱なんて企てるはずがない。そこに気づかなかったのは多分配下のバカとやり合いすぎてそのあたりが基準になっちゃってるんだよな。友達は選べってことだよなあ。私の友だち? 神とか天使とか魔女とか? ろくな友だちがいねえ。泣けてくるよな。


「ま、今回のことはよく調べたなーってことで流しておいてやる。戦力差の話があったが広大な平原を挟んでるとはいえ隣り合ってんだ。仲良くやったほうがメリットも大きいと思うんだがねえ」


 まあな。それにしてもひとつ気になるんだが、ここにもうひとり公爵がいるんだよな。トーナイン公爵。なんかすごい眠そうにしてる。自分に関係ない話を延々聞かされたらそうなるわな。よく政治家の居眠りけしからんって言うやついるけど校長の話やつまんない授業聞いても眠くなった試しがないってんならわかるけど重要な議題でも要点を捉えてない話や内容のない長話は眠くなる。本当に誰に対してであれ一方的に叩いてるの見ると気分悪い。いじめは大嫌いだよ。いじめっ子が調子に乗ってるのもムカつく。もっと建設的に話し合う時代なんだと思う。それができない揚げ足しか取れないやつはもうしゃべるな。時代遅れだわ。責任追及とか辞めたあとに逮捕でいいわ。まずはやるべきことをやれ。多分多くの人はそう思ってるんだよな。そういう人は黙っててバカの大きい声だけ聞こえてくるんだ。バカって噛み付いてくるからウザいもんな。まともに話す理性がない猿ばっかり。そんなとこに入っていく常識人はいない。議論が一方に偏っていたら裏を疑うべきだろ。基本だな。なのでまあトーナイン公爵にしろリベルトのおっさんにしろ曖昧な対応を取ることはないがどちら向きと捉えられる行動もしない。賢いよな。私なら一方的にぶん殴って終わりだわ。経済力とかで殴るとあら不思議、平和的に解決しちゃう。まあな、金のために命を払うやつなんていくらでもいるわけだ。金は命より大切ってのはそれを肯定するやつにとっては真実だ。家族の治療費を出すために死ぬやつなんていくらでもいるが、結局命にも金で買える部分があるということではある。医療費が高いのは研究開発費も入ってるしそう安くしたら医者なんてブラックの極みなんだからやってられんだろ。必要ないものでもないし少数でいいわけでもない。対立煽りに乗っかる馬鹿になるなよ。大金が動くからには必ず理由がある。特に徴兵とかもそうだが別に金を払って傭兵を買うとかできるわけだ。そいつらは一般兵より命を賭ける。平和な時代の感性で見たら馬鹿に見えるけど食うに困る世界ならばどちらにしろ死ぬ。命の値段は皮肉にも平和な時代のほうが高くなるんだろうな。


 食うに困るやつを作るのが悪いんだが貧困って季節や氷河期みたいな気候のせいを除けば貧乏人を見下す差別主義のせいで貧乏人が声を上げたら叩かれるからなんだよな。まああんまり賢くない声を上げてるわけだけども、そこに乗っかると対立を煽っちゃうのな。こういう構図を理解して取るべき選択を取らないとね。そういう環境でしかたなく貧しくなってる人を叩く奴らはどうせ共産主義になったら自分が働かないんだろう。それはいい。酒を飲んでるとこういう乱暴な対立煽りにわざと乗る話をしたがるんだよな。前頭葉腐ってるから。まずは酒を飲む風潮を無くすべきなんだ。簡単に作れてしまうから社会から取り除けないだけで酒は毒でしかないからな。まあそれはいいや。他人を叩く言論なんぞなんもできねえヤツのやることだし。せいぜい暴動やってよけいな損失を生み秩序を壊すだけ。やめとけやめとけ。


「ま、どのみち魔女と絡んでるし責めるだけ損だぞ」


「ト、トーナイン閣下!」


 お、このおっさん起きてたんだ。この人あの悪役ムーブする王妃様の親父なんだよな。五十少し過ぎ、くらい。すでに十八、十五歳の王子がいる王妃様の父親としてはかなり若いが同年代だわ。黒髪で顔だけは真面目そう。もう一人の王妃のほうが性格似てるな、なぜか。


「そもそもこの話は各領地で魔女に対する対応を変えるってことで落ち着いてるわけだが武力で勝てない上に一国の国主でもある白の魔女を大罪人とするだけで敵対行為なわけだ。それで向こうがなにもしないのは慈悲ってもんだぜ。というかあれだなリベルトのおっさん、どうせあの魔女ものぞいてるんだろ? それでな、魔女さん、トーナイン領にちょっとまずい病気が流行っててな。それに対応してもらいたいんだが」


 おいおい、こいつすごいな。大罪の魔女は本人も否定しないんだよな、って聞いてきたぞ。いや、なんも罪はないぞ。言ってしまえばただリアルな映画を見せただけだからな。ほとんどそんな感じだろあれは。まあ痛みはあるんだけど。こっちが見てるの把握してるのもすごい。どんな諜報能力だ。まあ仮にも公爵家筆頭だからな。その上で私に話しかけてくるんだから勘違いだったら大恥だが確信を持ってるみたいだな。実際見てるし。


 それに病気か。この世界浄化魔法は治癒師系統の天職持ちなら問題なく持っててほとんどの病気は対処できるんで勢いがあるとやはり抑えきれないが流行病は起こりにくい。起こるとしたら多いのは呪術にからむ病とかガンはある。ガンは流行病にはならないからな。なので呪術、いわゆる瘴気を発生させて呪いで健康を損ねてくるんだがベースにウイルスを使ってるらしく普通に流行病と同じように振る舞う。ウイルスが魔法を使うことはないがシステムバグと言うべきか魔術的な作用が働いたりする。簡潔に言えばウイルスサイズの魔術がウイルスが増えるのにあわせて増えて広がる。元の世界の流行病と同じように広がるわけだ。こういうの一口で説明するの難しいよな。


 うーん、そっちは見てなかったぞ。トーナイン領の近隣で黒の魔女が現れてそれから呪いを放ったらしい。いったいなにがあったからこんなことしたんだ、黒の魔女。魔女に無差別殺人を好むヤツはいないのでその辺りの村人がなにかやらかしたんだろうな〜。まあ調査かね。


「緊急事態じゃねーか。カーラ!」


「はいよ。あんたらの問題はあんたらで解決するんだね」


「あー、ズルはやめとけってことか」


「そうだね。なんせ大罪の魔女だし暴虐の魔女だしケチな魔女だからね」


「おお、これが白の魔女……」


 おう、姿を見せたら初見さんが目をキラキラさせてる。いやまて対応おかしいから。今敵認定してるとこだからあんたら。これほんと上っ面だけの対応だな。政治的な時間稼ぎだわ。私がどうするかもあらかた読まれてるな。まあ悪いようにするつもりはないし。ただ黒の魔女の動向がちょっとわからん。


「トーナインのおっさん、黒の魔女に地元民が何かしたとかないの?」


「近隣の住民は慕っていたがそこから離れた街の住民が結託して焼き討ちをかましたらしい」


「死んどけば?」


「だよなあ……まあこっちで対応するわ。じゃあ魔女の話はここで置いといて対策会議に移行していただきたい」


「うむ、そうしよう。では引き続き……」


 もちろん対処するわけだがそう思って動かれても困る。魔女に頼るのは色々理由はあるが無しだ。まあ一番は面倒くさいからだけどね。言われなくてもやるのに命令されるのって一番ムカつくだろ? さて、この場にはうるさい悪役風のおっさんエンリコ=ゼーバルース侯爵もいるわけだが冷や汗流して口をパクパクさせてるだけだな。ガチでやりあう気ないなら張り合うなよな。口先だけってやつよくいるけど。恥ずかしくないのかな。私は口だけだして寝ていたい。さっさとマイルームに帰ってこっちの監視はスクルドに任せて私はトーナイン公爵領に移動することにした。さてさて、黒の魔女が何をやってるのか見に行こうかね。


 あ、ちなみに私は大罪の魔女認定だけど対応は領地に任せるというまさしく玉虫色の判決を受けた。笑える。玉虫色って生きてるうちに使うと思わなかったわ。退場しようとしたら話しかけてくるヤツがいた。


「白の魔女殿!」


「あん?」


 なんか第二王子に止められた。無口クールって評判は間違いだったんじゃないかな。顔を真っ赤にしてるけどあれかね、可愛いからほれた? うへっ、笑えねえ。


「こ、今度個人的に会談を、会談の場を設けたい!」


「怪談は苦手なんだよなあ」


「えっ?」


「えっ?」


「その、内密に話をしたいというか」


「怪談を? 明るいうちに?」


「え?」


「え?」


 なんかお約束の展開になってる気がする。怪談好きなんだなこの王子様。まあ見た目ちょっと暗い感じはするけど。


「まあ普通にお茶会なら誰でも誘ってくれたらお菓子持って行くけど」


「ぜひ!」


 うん、なんか第二王子様とお茶会が決定したらしい。詳細はリベルトのおっさんと詰めといてね。


「俺を伝言板にするな!」


「四角いからちょうどいいじゃん」


「マジで? 伝言板向いてる? 天職な感じ?」


「イケてるイケてる」


「ってちょっと待てそれすげー忙しいヤツだろ!!」


 このおっさんなんでこんなノリ軽いんだろうな。まあいいけど。これからお仕事ですよ〜、ってことでこの場をあとにした。あんまり長居したらあちこちの貴族からの申込みで予定がふさがってしまうだろう。いったいなんなんだ。






 まあお茶会のシーンはカットですけどね。ラファエロがモジモジするだけです。戦争の結果を聞いて憧れる、少年ぽい理由ですね。

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