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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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ムルベイ公爵の罠

 そんでその場は一旦解散となるが貴族議会が開催される運びとなる。まあ当然覗く。リベルトのおっさんにはそのまま参加すれば?って言われたけど暗躍ムーブしたいじゃん? そこはわかってくれた。いやわかるなよ。中学生か。まあやるんだけど。楽しいから。


 さて、会議の場にはなぜかアリーチェもいるが当然なんかリベルトのおっさんが仕込んでるんだろうな。詳しくは聞いてないが楽しみだ。どうでもいいが第一から第三王子まで来てるぞ。第一王子クリスティアーノはおっとりした感じだけど色々強行するらしい。イケメンだな〜。恋愛ゲームとかにいる腹黒王子系かな? 第二王子ラファエロは無口クール系だけど家族大好きなんだとか。見えない。王子様は金髪と黒髪のどちらかだな。王妃が二人とも黒髪だけど王子は第二王子だけ黒髪だな。瞳は全員青い。


「魔女はこの場には来ないのですか?」


 急に第二王子が動いた。あれ、事前情報だとこういった場で話すことはないと聞いたんだけど。ああ、王族も貴族も全員面食らった顔をしてるな。ラファエロ王子はなぜか赤い顔でモジモジしている。クール系イケメンが台無しである。


「魔女は必要なら召喚するが、まあ今回の話し合いには必要ない。代理人もいるしな」


「そ、そうですか。代理人とは」


「私よ、お兄様」


「アリーチェ?」


 そう、今回はアリーチェは私の代理ということになっている。本人は弟子として参加したいと言っていたがそれは仕込みに使うことにした。なんか計画してるのかって? 当たり前だな。リベルトのおっさんとノリノリで計画を練ってある。この場では先の遭難でアリーチェが私の世話になって、その関係で今回は私からアリーチェに交渉の窓口として依頼したと話している。とくに世話はしてないけどまあ問題はない。


「このような話し合いなど必要ありますまい! 事は国家の主権に関わること! 魔女など不要! 魔女に断罪を!」


 お、例の侯爵のおっさん、エンリコ=ゼーバールース侯爵が騒ぎ出した。おっさんだらけだな。まあ王子とか王女とかもいるけど。まあこの人は権力志向でうるさいだけの人だ。地獄に送るのも馬鹿馬鹿しい。そのうち厄介な犯罪とか犯すようなら地獄へ送るだけだ。監視もリベルトのおっさんの手の者がしてる。公爵家だし元王家だからその手の駒はたくさんあるらしい。貸してくれや。


「ほう、つまり我が娘に仇なすということであるか。貴殿が領地を持つなら攻めとるものを」


「国軍を打ち破る魔女と敵対するならご勝手に、個人でどうぞ」


「ぎぎぎ……」


 あれ、イケメン兄さんとアリーチェに言われただけで黙っちゃうの? この兄さんが赤の魔女リディアの父親、モッセレン辺境伯か。若いね〜。そもそもこの会議は先の私の大暴れについての話し合いだからね。


「今回はそのための話し合いであろうが」


 おっと、リベルトのおっさんが止めに入る。この会議はムルベイ公爵主導だからな。わざとそうしてる。クリフト公爵派閥を釣り上げたいんだがクリフト公爵は冷静に見ているな。ラウロ=クリフト公爵。こっちも若い。早めに代替わりしたようだな。貴族の中ではリベルトのおっさんも若い方だからさらに若い公爵は発言力とか低いんだろう。血筋や立場的にも今は少し王家から離れてるし。確か前王のいとこがクリフト公爵なので二つ前の王弟の血筋だな。代わりとばかりエンリコ=ゼーバールース侯爵が話してる。エンリコ爺さんでいいな。六十後半くらいらしい。この国では十分に高齢だし味方にも敵にもさっさと退けやって思われてるタイプだろう。八十代で妖怪みたいなのもいるけど伯爵だ。この人は身内を早く亡くして養子を取って退こうとしてるんだが領地がまあまあ美味しいらしく後釜に誰を送り込むかで各派閥が揉めているらしい。うーん、権力闘争。貴族っぽいよな〜。


 老害って言うかもしれないけどこの世代が一番働いてきたのも事実なんだよな。で、この人はクリフト派閥のウーステルス伯爵。第二王妃の父親スケルフィス伯爵も隣に並んでるがこの人は穏健そうだな。やっぱりいい年だが。スケルフィスの娘の第二王妃はかなり遅くにできた子供らしい。それもあって王家に入れたんだろうな。この二つの伯爵家はいわゆるクリフト派閥の東側貴族だが魔女に対しては利権が絡むので沈黙。ムルベイから例のデスワーム草原を挟むが隣接してるからな。昔は辺境を守っていた家だがムルベイを取り込みモッセレン辺境伯の領地を築いた時点で外敵の侵攻はなくなり内政に転換してる。商売で身を立てる領地は私には敵対しづらいわな。モッセレン辺境伯との敵対は大悪手だわ。もしムルベイがおかしな動きをすればモッセレンが鍵になるのは誰から見ても明らかだ。そしてモッセレンは西側ではあるものの王家寄りだ。格式だの伝統だの魔法だのを重んじるクリフト派は当然王家に対して忠実だ。そこで女神。王家に対して忠実な東側では女神にもいい気はしていなかったんだな。それで愛の女神ソフィアがいい具合にいなくなってる。なのに白の魔女台頭。そりゃ全力で叩きたい。だがソリド島は美味い。うーん、悩むな!


 伝統だの格式だの儲かってこそだけどな。歴史は大切にしようぜ、儲かるから。スケルフィスは王家に娘を送ってるんで無理する必要ないしウーステルスも領地の繁栄あればそれで良し、だ。この世界は冒険者がいるので人を閉じ込めておくのが難しいんだよな。個人で村一つ破壊できるようなのがゴロゴロいたりするから。なので人を引き寄せる必要があり、そのためには景気対策は重要だ。金持ちの中には税金を払いたがってる人もいるんだよな。貧乏人が思うほど金持ちはケチではないが母数が違いすぎる。変な対立煽りには乗らないことだぞ。百億の金も一億人に分けたら百円でしかないが百億あれば経済構造を変えるような発案発明もできるだろ。利益ってのは分散すればいいってものじゃない。さて、クリフト派閥は動かないけどエンリコ侯爵を止めるつもりもないらしい。権力争いじゃなく効果のある政策を打ち出すことが本質的に支持を勝ち取る方法だ。選挙に勝つこと大前提になってるから今の日本の政治システム自体が壊れてる。ネットで政治叩きしてるネット弁慶も対案があるわけじゃなくひたすら税金減らせばかり言うからことが進まない。残念ながら日本で石油掘ったりしたらインフラを保てなくなる。残念ながら車があっても道がないと流通は途切れる。さすがに全部ヘリやドローンでやるのは効率悪すぎるしそもそも移動手段が途絶える。消費税とかはその保険の意味もあるので減らすのは無いな。だからそういった総合的な予測を立てた上で対案を出さなきゃいかん。そもそも脱炭素でガスも石油も売れなくなるしな。日本だけノーと言っても仕方ない。だから太陽光発電や量子水素エネルギーも大事だけど電動で工事機械みたいな大きなものを動かす出力を確保する仕組みがほしい。その上でエネルギーが安くなればインフラは守られる。コンクリートから人へと言うが当時インフラが完璧に整ってそれ以上道を作っても仕方なくなってたから言ってただけで、じゃあインフラいらないの、って言ったらそういうわけにはいかない。そこで莫大なお金を使うことで人にお金が回っていたんだがそれが断たれたらそりゃ景気も悪くなる。その結果三十年沈黙だ。結果論でしかないが。なので今の日本で大切なのはインフラをキープしつつエネルギー開発や水素なんかの輸出をすすめることなんだよな。こっちは企業努力が必要。そして現代人は自分優先で社会のために働かない。そりゃ行き詰まるわ。普通に地続きの当たり前が連鎖してるだけだ。止めるには思い切るしかないがそれは賭けになる。全部瞬間的に切り替えられるならそりゃ策はあるだろうさ。そんなに簡単には進まない。


 人生なんて運なんだよな。その運を引き寄せるために当たるかわからないものまで引き寄せないといけない。だから偏った勉強してたら駄目なんだ。……まあ教えたら聞くんなら教えるんだがだいたい耳を塞ぐからな。誰だってお説教なんて聞きたくない。本当は爺さんに聞いてみれば分かるのに老害とか言って排除するしな。年食ったら活力下がるのは当たり前。本やAIでなんでも学べると思ってたら現実に躓くだけだ。自分で経験し考えることは無視できない要因だ。自己の確立なんて自分が悩まなきゃどうしょうもない。


 会議は数人の内務官僚による武門叩きみたいになってる。それしか責めるところがないからな。そもそもどう責めたって魔女は排除できない。さて、ムルベイのおっさんが動くぞ。


「それでは国として魔女に対し格付けを行ってはどうですか。その上で各領地にて魔女への対応を分ける。地方に分化して対応することで国内で諍うような馬鹿な真似は避けることができましょう」


「で、ではかの白の魔女は大罪の魔女とし捕らえ罰すること、これで良いですな?」


 これは最初から決めていたことだが私は国の敵としての立場になる。ここに仕掛けがある。そもそも今発言したのはロードバースのルイジくんだったりする。全員が面食らうわけである。若さゆえのミスか? そんなはずがない。仕掛けがある。


 しかしこれに反応したのはクリフト公爵だった。


「そ、それではソリド島との貿易はどうする! 君の領地こそソリド島との重要な公益拠点ではないかね!」


「クックック」


 わざとらしくムルベイ公爵リベルトのおっさんが笑う。さて、全部有耶無耶にするぞ。


「そもそもソリド島の管理は白の魔女が行っておりますがその支配圏は、王は別の者が担っておるようですな。つまりソリド島との取引は白の魔女との取引には当たらぬと言うことです」


「お、おお、それならば筋が通る」


 若いねー、クリフト公爵。目先の利益は確保できるとなって飛びついたよ。王ってもちろんまだいないし私の傀儡になるのは間違いないのに。まあクリフト公爵には不利益にはならない。で、白の魔女はどうするの? 例えばロードバースを通してクリフト領が大きな取引をする。ここで魔女が噛んできたらやめるの? そのうち敵対していられなくなるってこと。工作ってこうやるんだよな。リベルトのおっさんは私を大悪人としたものの対応は各領地で決めることとしさっさと自領の行動と魔女への対応を切り分け白の魔女の行動は制限した。これが大事。


 私をどうやって止めるんだよ。無理だ。


 そしてブロッサムは商家に形を変えてツテを作っている。当たり前だけどブロッサムは冒険者たちに対して働いている部分は止めようがないしそちらがメイン、に見えるので、冒険者のやることとなればギルドと貴族王族の微妙な関係があって手を入れられない。冒険者たちって傭兵の群れだからな。敵対できないし、だけどギルドは王侯貴族の無茶を押し通させないための組織である。介入はできない。商業ギルドもそうだがギルドの役割は元々権力者から職人や商人を守るための組織だからな。冒険者ギルドもそう。ここに問題を持っていけない以上ブロッサムの活動は防げないしブロッサムは金貸しもやってる。すでに大きな金を動かしているぞ。原資はソリド島との交易だからな。上手いことできてるだろ。そもそもソリド島との交易を止められないからクリフト公爵が物を言えないんで。クリフト派閥は表立って魔女と対立する手段が物理に限られてしまった。はい、無理。


 こうして上手い具合に白の魔女を大罪の魔女とすることが決まった。あとはじっくりと白の魔女の排除で起こる経済損失とかネタにして魔女の権限を独立させる方向へ進める。


 な、政治って経済なんだよ。


「それでは、白の魔女は排除することに!」


 お、まだ息があったのかエンリコのおっさんは。馬鹿だね〜、まだ気づいてないの?


「それでは白の魔女の弟子である私は排除されるということですわね」


「え、いや、まさか……」


 はい、アリーチェ、とどめを刺しに行きました。弟子であるとここで明かしました。だよな、さすがに侯爵程度が王女にたてつけない。なによりクリフト派閥は伝統とか守る立場だし王族に喧嘩は売れない。クリフト公爵は別に貴族派じゃないんだ。そう、これでゼーバルースは孤立した。手を入れるとしたら領地を持たない政務に携わる貴族中心の貴族派閥なんだろうがそれらを統括してる公爵家はどこも味方になってくれないよ。貴族派を今から立てるにもその頃には経済は私が握らせてもらうからな。貴族が王家の支配構造を潰すには金が必要だ。大金を手に入れたいなら、さて、誰に頭を下げるんだろうな? 私? 今の王家は使いやすいのに潰したりしないけど? ましてや大罪の魔女ですんで〜。ツバを吐いてくるやつに金を出す人なんていないからね。覚えておこうね。






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