王国軍対、魔女
さてさて、貴族間の緊張が高まってきた。元々の争いも加速し子爵男爵レベルの貴族で紛争まで起こり始めた。流石に介入はできないが戦争をなくすために動いてるのに紛争多発なんて、と思うかもしれないがまあ手順として一回は大戦争が起こると思ってる。平和主義なんてよっぽどの戦乱を超えないと根づかないしな。そもそも独裁だと戦争が嫌なんて言えないしな。言ったら殺されるから。だから独裁はクソなんだね。独裁してるヤツが平和主義ならいいって? 人には寿命があるし理性ってのは大概抑圧に反発するもんなのに保つわけない。人間の性質ではあるが理性的であればあるほど混乱を招く。不思議だね。まあ中途半端に賢いのが一番駄目ってことだね。全体を捉えて物を見るには世界を自分の中に構築しないと無理だ。それには相当の努力と時間がかかる。天才だからってできるもんじゃない。世界を見なくてはね。経験値というのはしっかり重さがある。愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶとか言うけど真の賢者はその上で考えるもんだろう。学んで終わりならAIでもできる。思考経験研鑽の記憶の積み重ね。歴史なんて一番始めに来るものでしかない。歴史を学び経験を積み思考し経験を積む。チャレンジして経験を積みそして自分の中に世界を作るんだな。レシピだけで料理を作ってもそれは芸術性を持たないだろ。絵画のコピーは絵画そのものの値段で売れるのかって話。自分の絵を描けるのが賢者。まあゴールなんてないんだけどね。
いろいろとまあ言ったが大勢死んだ。悔しいね。しかも下級貴族が無理やり徴兵した奴隷や農民が中心。せめてもの抵抗というかそれらの貴族家の当主は地獄に送っといた。こっそりね。まあバレバレだけど、いやなら抵抗してみろってことで。戦争すんな消すぞってことだね。
魔女対王国軍。最初に王様に会ったときからの仕込みだがついにやるときがきたようだ。はあ、誰一人殺さないが三回は全員死んでもらうからな。経験がないと学べないと言うなら経験させてやろうじゃねーか。歴史がないと学べないと言うのなら歴史を作ってやろうじゃねーか。おわかり? 愚者共め。やらなきゃわかんないなら全員馬鹿だろ。ちくしょーめ。痛みがないと気づけない。ならはっきりわからせてやろうじゃないか。死を。白の魔女は生と死を司る魔女だからね。
ムルベイの東、王都寄りの場所に大きな平原がある。まあデスワームが群れなしてるんで畑も作れない荒れ地なんだが草はかなり生えてるな。生命力強いのよこの世界の植物。あ~、いい風だ。今日はぶっ殺すにはいい日だね。
一部の侯爵家を筆頭に下級貴族から魔女に特別権限を与える法案に対し反対意見が登り議論が紛糾、ゼーバールス侯爵家って言って前にロードバース子爵家取り潰しの話が出たときにも騒いだ侯爵さんがまあロードバースの裏に白の魔女ありなのは拡散してたからな、その恨みが魔女退治に向いたらしい。魔女に権限を与えるとなるとモッセレン辺境伯もまたリディアこと赤の魔女の影響で強い権力を持つことになってしまうため、モッセレンの親玉でもあるムルベイ公爵に力を持たせたくない派閥もまた反魔女に回る。まあクリフト公爵は元々主流派に反対意見を突きつけるのが役割みたいなところはあるんだ。反対意見を出さないと議論が起こらないし議論が起こらないと詳細な問題が詰まらない。日本では反対しか言わない派閥が嫌われてるけどあれは売国的な政治してる派閥だから嫌われて当たり前だ。そうじゃないなら反対意見ってのは本来貴重なものなんだ。昔からクレーマーは有り難いって言われるけど問題点を勝手に洗い出してくれるからだな。根拠のない難癖つけるだけのクレーマーはいらん。暴力を振るうだけのヤツは害悪でしかない。だが丁寧な指摘や意見は重要だ。それが感想であっても意見ではある。
そういうわけでクリフト公爵についてはそんなに心配してない。むしろクリフト派閥がクリフト公爵の意見や思考、理想を理解していないのがマズい。そしてこいつらがアルス王子を擁護してるのが不味い。もっと言えばアルスが現代日本人的平和ボケ思考から脱却せんとして半端にこの世界に馴染んだ思考を始めてるもんだからこれがタチが悪い。まあ犬になるなとは言ったが諸悪の根源がどこにあるかわかってるかってことだよな。丁寧に教えてやれって? 自分で育たんヤツなんて使えんだろ。私は一人しかいないんでね。学校の先生だって一人しかいないのに迷惑かけすぎだわ。一人について一時間考えてたら一日じゃ足りなくなるしな。なので問題を打って考えさせるのが教師の仕事だろ。生徒を含め人が考えるのは普通。考えない人生なんて面白くもないだろ。思考停止って毎日勉強したり考えてる人からどんどん置いていかれるんだけどわかってんのかね。まあ働き蟻になるなら考えなくていいけど。文句も言えないけどな。考えてない文句なんぞ悪質クレーマーの暴力とおんなじだわ。だから自分の権益を守るために、利益を守るために学び考えるんだろ。馬鹿でー。やーいやーい。
なのでアルスたちには考えさせることにしている。まあ私の子供でもないしな。お母さんはあれか、鬱王妃様、じゃなかったカロリーナ様ね。あの人も放任主義だろ。この前のお茶会て自分の息子が馬鹿で困るとか言ってたけど。連座はないか。そこまで大それたことやる前にルーベンが止めるんだろうな。ハゲそう。ルーベンには現代の毛生え薬送っとこう。毛根に強くなる呪いでもかけとくか?
さて、ムルベイ東平原、通称デスワームの庭に王国軍が集まってくる。わかりやすく塔型ダンジョンを設置してるからな。近日開業予定と言ってあるがリベルトのおっさんの許可はわざと取ってない。責任取れ言われるからな。リベルトのおっさんが議会で個人や領軍単体で魔女に勝てるはずがないと言えばこうなる。魔女絶対許さん派閥は国王の許可の元王国軍総騎士団長、アントニオ=ガンバ=ザーム伯爵の指揮の元、ここを戦場にせんと集まってきた。まあアントニオのおっさんはわかってる上でこの策に乗ってくれてるわけだな。派手にやらんとわからんだろってこと。
この戦場には危険なデスワームの群れがいるんだが私のダンジョンタワー中心に二キロはすでにマイルームの中にある。敵軍は鶴翼の陣を敷いてるがわかってないな。対一なんだから魚鱗ですり潰しゃいいのに。鶴翼とか各個撃破よろしくお願いしますってことか? まあこれ王様かアントニオのおっさんの策なんだろうがな。脳筋だが軍略はそりゃできるか。部下の判断とかも聞いてるだろうけど本人が賢くないとまとまらないわな。その上で悪手をわざわざ打ってきたんだからそもそもの目的もあるが反対派を説得するだけの策もあるんだろう。ひょっとしたら反対派に策を出させたか。どっちにしろ無駄だけど。さて、配置の記憶をミネルバに頼んだら私も塔を出る。兵たちに活を入れるか? 大きな声を出すのに風の魔法は最適だ。まあその前にアントニオのおっさんたちに顔は見せとくか。例のゼーバールス侯爵のツラも拝んどこう。
敵本陣のテントに直接飛ぶ。全員一斉にこっち見んな。見てもらわないと困るけど。
「やー、おハロー。白の魔女だよ。今日は戦争よろしくね」
「おい、魔女殿。流石にここに飛び込んでくるのは無しだろ」
「アントニオのおっさん久しぶりだな。一応こんな無謀な戦争なんだぞってわからせとかないとだろ」
「それはまあそうなんだがな」
「騎士団長! なぜ敵と仲良く話しておる! 衛兵共! ……なぜ動かん?」
「お、あんたがゼーバールス侯爵だね。爺だね」
ゼーバールス侯爵はなんだ、太ってタワシみたいにヒゲ生やしたおっさん。ヒゲは整えてるんでそこはいいんだけど頭は軽そうだ。毛髪も少なめだし。まあ貴族家だから賢いってのもないのがな。ほんとこの世界で賢いの商人とか貴族の半分ずつくらいまでなんだよな。侯爵家なんだからもっと慎重に教育しろとは思うけど。放置された上に家庭教師にヨイショされまくって記憶力しか取り柄がないタイプ。私の対極の馬鹿だな。私に記憶力を求めるな。まあ面白いとこは覚える。もちろん兵たちはマイルームの力も使わずマナで固めてる。
「今日は何回か全滅してもらうからあらかじめ話しとこうと思ってな。アントニオのおっさんもガチで殺しに来いよ。戦争の悲惨さをじっくりたっぷり教えてやるからな」
「抜かせ。お主でもこの数ではマナが持つまい」
「だといいな? さあ、スタートラインに戻るから、始めようか。準備はできてるか? 先手は譲るからな」
「おお。全力でやってやるわい。卿たちも、よろしいな?」
「お、おう!」
「魔女め! 目に物を見せてやる!」
「アナナス王国に栄光を!」
「アナナス王国万歳!」
「正義はアナナスにあり!」
アナナスを翻訳しては駄目だぞ。さて、始めようか。まずはまあ、軽くいなしてやろうかね。
白の魔女対アナナス王国主力軍二万、開戦!
さっそく雨のような矢と矢を軸に誘導した魔法が雨あられと降ってくる。いやー、軍隊なんて人に向けるもんじゃねえぜ。体から数センチくらいまでを強固なマナで固めそこに触れるもののベクトルを逆に向ける。そうするとエネルギーは全体で相殺されるのでその場に落ちる。その場で飽和したエネルギーだけは反射されて元の方向へ向かうが大した威力じゃないので途中で消える。後から来る攻撃もその弱った威力で跳ね返った魔法や粉塵で妨害されさらに威力が落ちる。その結果ドーナツ状にエネルギーが固まることになりそれが壁となって後続の攻撃が続かなくなる。粉塵で周りが見えなくなる。敵の攻撃も命中するとは限らないので包囲してる方向の攻撃は相殺されている。もし核兵器があっても小さな小さな私一人に核をぶつけるのは無意味だ。ドローンで撃てばいい。それにしてもなかなかの威力だな。魔法兵中心だっけ。そりゃそうだ、クリフト公爵家は魔法の大家だったわ。まあ効かんけど。ご苦労様ー。左翼から立ち寄ってキャンディを投げていく。一万の敵を倒すのにマナなんてそんなにいらんのだけど時間がかかると何回も殺せないからな。人を殺すたびに痛む心を忘れんようにしよう。まあ薙ぎ払うが。
「ほれ、ニ千気圧のサッカーボールだ!」
空気のサッカーボールをドライブシュート。ずごん、と音を立てて敵陣の一角が崩れる。十分の一くらい吹き飛んだぞ。なんか楽しくなってくるから嫌だ。舌の根も乾かんうちに。まあいいや、パーティーだ。痛め、苦しめ、地獄を見ろ、二度と戦場に立ちたくないと思え! 戦争を恐れる恐怖こそ戦争を止める。たっぷり味わわせてやろう!
向かってくる兵たちの隙間をスルスルと縫って腕や足や首をハネていく。まずは時間をかけて無力さを味わわせる。もう三回は少なくとも死んでもらうからな。
「ほれ、風よ、嵐よ、吹きとばせ!」
実際に大人数とやる時は戦術としてはまとめて固めて焼き尽くすのが王道だが、一旦散らして距離を取る。さて、もう一発、少し大きめに行くぞ!
キャンディは実は小さい量にエネルギーを込めてるので破壊力は高いが全体に波及するエネルギーはそうでもない。大規模に破壊するには大規模なエネルギーの塊が必要になる。数万気圧くらいでもキャンディの大きさだと全体を吹き飛ばすには少し弱い。なので大きいキャンディを作って吹き飛ばすのがいいんだよな。当然必要なエネルギーは幅の二乗で大きくなるので簡単な話ではない。例えばディバステイティングストライクなら三メートルくらいに数十万気圧を固めるのでマナの仕組みで大きい力でも反転して使えるという性質がなければとても作れない。集める空気も膨大で時間もかかるぶんエネルギーは余計に食うしな。これがあの技の難点だ。まあ今回はあれも一回見せる気でいる。
まずは掃討する。数百人、数千人ずつ吹き飛ばしていけば戦場は阿鼻叫喚の巷と化す。たっぷり怯えろ。もう白など見たくないと思わせてやろう。戦などやるまいと思わせてやる。
そのあとも何十分もかけて一個一個部隊を潰していったので全部終わるのに一日じゃ済まなかった。やっぱり軍隊をちまちま潰すなんてやってられねーな。
寝る間も惜しんで叩き潰しているが安心してください、マイルームですよ。ということで時間は数分しか経ってない。たっぷり時間はあるから、ほんの数分でレッスンタイム終了だ。あ、精神崩壊とかしないようにチェックはしておこう。言っちゃなんだが脳味噌も精神も情報でしかないからな。




