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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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 獣人の村を一通り見て回ることにした。まあやっぱり開拓始めたばっかりの土地なんで見るものがあるわけでもない。むこうから子供が仔犬を追いかけて走ってきた。かわいいねえ。可愛いものは大好きだ。


「おーよしよし、もこもこな犬だな〜。よしよ〜し。ドッグフード食う? 缶詰のヤツ。犬のおやつもあるよ?」


「めちゃ甘やかすじゃない」


「犬ってかわいくね? 猫も好きだけど。トラとかライオンとかかわいいよな」


「どこがよ!? まあ小さいのはかわいいわね」


「へっへっへっへっへ……」


「おー、よしよし。もふもふだ」


 腹とかなでてやると嬉しそうに体を震わせて仰向けに転がる。無防備だな〜。追いかけてきたのは子供の犬獣人である。こっちもかわいい。


「アルトは僕の弟なんだ! こっちおいで!」


「ハッハッハッハッハッ」


「めちゃ仲いいな。え、ホントに弟とかじゃないよね?」


「当たり前じゃん。カーラって賢者みたいなとこあるのにすっごい抜けてるとこあるよね」


「まあアンバランスかもねえ」


 普通に個性って言ってしまうのもいいけどね。すべてを学ぶことなんてとうていできないし。私にできるのは世界を自分の中で作ることだけだ。そのビジョンが私は普通らしい。なんていうの、子供だましって嫌じゃん。でも全部正しくは無理なわけ。というかそれをやると無個性になるしね。世界はみんなにとっておんなじ形だから。相対性ってのもあるけどね。それだと全員にとって世界は違うものになるけど。まあそれでもいいんだろうけど。


 というわけで犬獣人から犬が生まれたりはしないし犬に変身したりもしないようだ。狼男とかいないよね、それは。ファンタジーだわ。遺伝子組み換えの実験生物とか魔法世界とかならいるけどね。ただ元の世界にはいない。そもそも遺伝子とか不安定すぎると発現しないからな〜。普通に変態する生き物って元に戻ったりしないしね。血圧でバンプアップしたら体毛まで生えたり抜けたりするとかどれだけ複雑な生物なんだ。そんなものが自然発生したりはしないね。結局は生き物って環境に適応することで存在しているわけだし、その環境の中に他の生物も含まれるわけで、だから人間が他の生物を大切にしなくてはアンバランスになるんだけど、それでもいてもいなくてもいい生き物はいるわけで日々絶滅と新生を繰り返しているわけだ。なにが大切か見極めなくちゃいかん。なんでも守れとか雑すぎる。しないよ、そんな面倒なこと。余裕があるからそんなこと考えるんだ。まあ全部救うなんてそれ生物の進化にはマイナスだと思うよ。家畜化したら蚕やペットたちみたいに野生に適応できなくなるし。


 ペットは飼うけどね。犬や猫や小鳥とか、昔いろいろ飼ってたんだよな。オヤジがそういうの好きで。は虫類もかわいいけどオヤジはそれは嫌いだったらしく魚は飼ったけどは虫類は飼ってない。まあオヤジは飼うだけで世話はしないやつだけどな。犬の散歩とか私が行ってたし餌もだいたいオカンがやってたし。ひとりで酒飲んてたころはペット飼う余裕はなかったな〜。酒代に消えてたから。結局は余裕なんだろうね。一人の人間がすべてを救うなんて余裕が普通にないでしょ。


 家の中荒れる前はだんだんそんな感じでペット増やしてオヤジもオカンも帰ってこないとかあったんだよな〜。子供の世話をペットに任せるなという。面倒なことはとにかくしないのはオヤジの遺伝子だな。くそったれなとこばかり似ている。ホントに私はクズなとこばっかり引き継いでるんだよな。キレやすいのは母親似だな。最近はキレる体力がないだけだな。お年寄りは丸くなるもんだ。まだそんな年じゃないけど。いや、こっち来てマイルームで十年くらい遊んでた可能性はある。時間とか気にしないでシミュレーションしまくってたからな。まあそれはいいや。


「犬も純心で馬鹿なのはいいところだけどね」


「人間がそれでは困るわね」


「賢い犬って熊にあったら主人を置いて真っ先に飛んで逃げる犬なんだよなあ」


「それバカ犬じゃないの?」


 バカ犬じゃないんだよ。バカ犬は熊に飛びかかっちゃうやつ。そして勝っちゃうやつはいるけどね。それは小さいことの強みを知ってる特別賢い犬だろうな。でももっと賢い場合は飛んで熊の注意をひきつけてから逃げる。


 狩りをする動物の習性としてよく動き逃げる獲物を追いかけたがるんだよな。不思議なことにそこで怯えて突っ立ってる狩りやすい獲物よりも逃げ出すヤツを追いかけるんだ。猫とかでもあるんだけどな。動かないボールじゃなく動くボールを追うだろ。こうなると犬のほうが速いから逃げ切っちゃうんだよな。そして主人も注意がそれた隙に逃げれる。賢いだろ? こういうのをバカ犬って言っちゃうのが人間なんだよな。野生の仕組みを知らないの。


 人間ってそういう野生の仕組みを忘れ自分が動物であることを忘れてるのが一番愚かなんだよ。自分たちは優れている、とか言いながら戦争するんだ。馬鹿なんだよ。理性は正義ではない。本能に任せていても失敗するから理性は必要なんだけどそれだけになったら友達殺したりしても平気になるんだ。馬鹿だろ?


「カーラさまー!」


「あとはアンタの仕事だね。頑張ってねアリーチェ」


「あの獣人まだ来るのね。まあ取引とかも終わったみたいだし私もやることなくなったけどね。これからソリド島の魔女王国とアナナスでどう協調していくかなんだけど」


「あー、それはやらなくていいよ。王様と話はついてる」


「今のままだとけっこう魔女反対派が強いわよ? まあトーナイン公爵家は王家についてるから静観だけどクリフト公爵家が今王妃にもいないし宰相も侯爵家だし騎士団長の総長は伯爵家って感じでいいとこなしなのよね。それに魔法の名門だから魔術師嫌いだし」


「あっはっは、魔法の名門とか、積み木が得意ですって自己紹介するようなものじゃないか」


「まあそうなんだけど、魔法って体系化されてるからね。私も魔術は鍛えたわよ」


「わしが鍛えた」


「そうだけど。頑張ったのよ!」


「がんばれてえらい」


「まあなめられても仕方ないんだけどもうちょっとほめてよね〜」


「普通にほめてるぞ。一年位でレベル百二十は立派だぞ」


「外だと一日も経ってなかったけどね……」


 それはラッキーだろ。マイルームのいいとこは時間を気にする必要なく勉強やトレーニングができるところだ。使わせてやるのはなにも問題ない。いらん知識を与えて知識チートするのはアンバランスでまずい。まあ普通に大きな発明をする人がひとつふたつしか結果を残せないことはあるんだが。


 ニー○ス・ボー○みたいに偉大な科学者なのにシュレディ○ガーやアイ○シュタインばかり有名になってることもある。量子論はボー○が基本を作ったんだからアイ○シュタインと変わらないくらい偉大なんだけど。量子論の父なので物理をやってたら知ってるけど私は物理やってないからな。高校は生物やってたし。


 まあだからってその偉大な人物が本当は知識チートしてたとかなら嫌じゃない? 現実にはそんなことはない。基礎的な部分が天才的な人だから新しいことを組み立てられる。なので現実に知識チートするやつが現れたらあちこち間抜けでおかしいと感じると思う。そもそも理論的な話って組み立てが大事だしね。


 さてあの獣人はどうするかね。


「カーラ様! どうか私を弟子に!」


「お、いいこと思いついた。ショウ、おいで」


 ザマァするかは知らないが勇者のショウを預かってシミュレーションで鍛えまくってる。人を鍛えるのは楽しいな。本当に育つからな。たぶん人間って見てくれる人がいたらそれだけで育つんだよな。やり方がおかしかったり無理しちゃったりしてら止めてやらないとダメだし、栄養管理とかしてやればいいし。


 とにかく勉強しろって言われてやるヤツは言われなくてもやるんでムダにやれやれ言わないほうがいい。ストレス与えたいなら知らないけど。自分の子供をストレスで苦しめる親とかもう古いと思うぞ。


 まあそれでまあまあ鍛え上がってるショウなんだがコイツはヘタレだし、特に能力を高めるための修行もしたが特殊な修行もつけてやった。


 まあつけたのはバーチャル達人なんだけどそれはいいや。


「お前さんに必要なのは実戦だろ。ちょうどいいじゃねえか、この娘っ子と戦いな」


「ええ〜、なんか強そうなんですけどぉ〜」


「違うだろ、もっと楽しめ!」


「あ、おう、ひゃはー! 娘っ子がカーラにからんでんのかよぉ〜?」


「いいねいいね。そっちの犬娘!」


「はい! この方を倒せばカーラ様の弟子に?!」


「まあやってみるといい。筋がいいなら育ててみるのも面白い。ダメな子ほど可愛いって言うしね。ショウとか」


「ダメな子って言ってる〜?! 事実だしまあいいや。ゲヘヘへへ、オレのナイフが火を吹くぜ〜?」


「楽しそうだねえ」


「カーラにやれって言われたんだけどな!?」


「やります!! お覚悟を!!」


「ショウ、実戦だ。アンタが強くなるために学んだものを見せつけろ」


「オウヨォ!! ヒャハハ〜ッ!!」


 ショウは実際に臆病なヤツだった。前世持ちなんでゲームとか漫画は好きだろうがモンスターを倒して金を儲けるのができないとぬかす。なのでシミュレーションでホモゴブリンと戦わせた。ホブじゃないぞ。ぶっちゃけこの世界のゴブリン相手の体内に種子を植えつけて増えるんで男でも女でも動物ですら構わず食っちまうらしい。ある意味男らしいな!


 そのホモゴブリンの群れに叩き込んだら一週間もしないうちに殺らなきゃヤラれるを理解した。いや〜、何回かズボン下ろされるまで行ったんだがな。いや行かなくて良かったんだが。


 ぶひゃぶひゃと鼻水垂らして泣きながら与えた剣鉈でホモゴブリンたちの頭をカチ割っていったよ。やればできるじゃん。まあしばらく睡眠薬飲むハメにはなったけど。


 無理やりやらせるのはよくない。カーラ学んだ。まあ立石とかBL好きなもんでめちゃくちゃはやしてたけどそれはそれ。ちなみに水野も好きらしくやられろ〜とかすごい間延びした声援を送ってたな。楽しかった。


「楽しかったのカーラたちだけえ!! でも強くなれたし、いくぜぇ〜!」


「うらやましい! 私も鍛えられたい! 行きまーす!!」


 こうしてシャロンとショウのぶつかり合いになったわけだが、この因縁かなり続くことになるんだよな。まあそれは先の話だ。


 一合目、ショウは飛びかかってつかみかかってくるシャロンの手をガッチリと捕まえてくるりと体に腕を巻きつけるように外側に回り込む。大事なのは足さばきだ。このさばきを見せないために普通は袴をはいてるが膝下、足先に至るまで技術と鍛錬の結晶になっている。


 一発でシャロンは地面に顔をつけて抑え込まれていた。まあこうなるよな。


 サツキ流、柔操術。コイツに一番向いてたのはこれだった。モヒカンヒャッハ〜スタイルに仕上げてやってピンクのモヒカン見てせめて赤にしてって言うんで赤にしてやって、そして肩パッドつけてナイフなめながら相手を威嚇するけどやるのは達人技。ウケる。


「やっぱり面白がってない?!」


「面白がってる。でもできあがったじゃないか。どうだ、実戦初勝利」


「え、あ〜、おう。やれたわ。ありがとうな、カーラ」


「似合わないねえ、いつもの調子でやりなよ」


「へ〜っへっへー! ありがとヨォ! ってこっちが仮の姿〜!」


「ぶはははは!」


「う、も、もういちど……」


 お? どうやらシャロンは負けは負けと思ってるらしい。そんでまだやるの? 私じゃないからいいけど?


「ショウ、まだ相手してくれるってさ」


「お? おう、大丈夫かヨォ〜、ネエチャンヨォ〜?!」


「様になってるぅ!」


「茶化さないで?! へっへっへ、何度でも土を食わせてやるぜぇ〜?」


 コイツ勇者なんで魔法も使える。あの押さえ込みを決めてから雷撃とか打ち込めば半端なモンスターなら確実に仕留められる。接近戦に天賦の才がある勇者ってまあいないこともないか。なんでもできるのが主人公キャラだしな。相手を傷つけないこともできる武術なんてまさに天職にあってるのかもしれない。


その後も何度かかかっていくシャロンだが、徹底的にショウにいなされる。まあコイツは三年ほど鍛えたからね。






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