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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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獣人の村

 さて、エルフとの話し合いに出さずに放置した姫さんがぷりぷり怒ってて可愛いが無視されたら嫌だよな。事情があるとはいえ。なので表を一緒に歩くことにする。


 まあ最初から村を潰すつもりだったから交渉とか無駄になるしな。出してたら多分軍に戻れるようにするとか話すつもりだったんじゃないかね。アリーチェの立場的には国軍の弱体化は困るだろうし。


 まあ一回大戦して負けてるからこんなに敗戦者の村があるわけだし、アナナスの状態はどうなってるのかね。余裕はあるように見えるけど。全体の規模としては数千人くらいだしな。


 次は獣人たちの村か。襲われないといいなあ。と、村に続く森の中で血の臭いがするとベルが鳴く。精神的にリンクしてるのでいわゆる念話状態だね。言葉で喋るわけじゃない。感覚や感情でニュアンスが伝わってくる。他にもモンスターの群れを感知したがすぐにその姿は見えた。


「おや、オークの群れかい。ずいぶん多いね。五百とかいそう」


「ななななななななな、なんであんなにいるのお?!」


「人間はなんで何億もいるんだよ。いるよそりゃ他の生き物も」


 億って一万かける一万だぞ。一万でも膨大なのにその一万倍。それより多い。そしてその人間よりはモンスターのほうがもちろん多い。特にこの世界は人間の住処よりモンスターの住処のほうが多いんだからね。さらにゴブリンだのオークだのコボルトだの、それ以外の人型じゃないモンスターの群れも幾種類もある。その争いがあるんで最大規模の村でも万には届かないだろうが数千は十分にありえる。なので五百くらいの群れが一斉に移動することもありうる。ということで。


「やっちゃう? 姫さんがやってみるかい?」


「……そうね」


 アリーチェの天職はプリンセスだ。光の攻撃魔法と治癒魔法が使えるジョブでオーラも使える。すごい万能系ジョブだけど勇者や聖者より場合によってはレアだ。つまり血筋じゃないと発現しない天職なんだね。立石によると別に全部の天職がそうではないのだけど王族はたいてい血統で決まるのですべての天職が血統で決まるとか思われていた時代もあったらしい。立石とか天使たちもわりとそういう間違いを指摘する程度に人とコミュニケーション取ってるんだろう。まあかかわらないのがいい神様理論で言えばその上で遠ざけてるんだろうけどね。立石とかわりと寂しがりだからな。やっぱり人を見捨てるとか難しいんだろう。


 見捨てることも時には必要だ。一人のために千人死んだら目も当てられない。そして人が自ら試練を超えないならそれは神が自由にしていい国と言うことだ。そんな世界存在する意味がないね。自由にしたいなら小説を書いたり妄想していればいいんだから。


 ……まあ知っちゃったら助けちゃうだろ。目の前の一人を誰かが助けなければすべてが助かる日は来ない。正義の味方じゃないなら無理はしなくていいけどね。私が正義の味方なわけあるか。敵だ敵、あんなもん。正義依存症は本当にクズだ。勝手に人を悪にしたがるしな。そして集団で叩くんだ。いじめっ子は敵だね。


 おっと、どうやら女の子の犬の獣人が豚の化物、オークの群れに追い詰められているらしい。というかこの数を抑えてるとかすごすぎるな。レベル五十はあると見た。ほっといたらやられそうだけどどうするかね。


 獣人って頭の作りが普通の人間と違うので脳が十分な容積を持てないとかいう話もあったな。本来の犬猫のような頭の作りをしていると今度は首が縦につきづらかったりとなかなかにややこしい。この世界の生物はマナで形を保っている者もいるしそっちのほうが寿命が長かったり優位なことが多い。しかし獣人の場合はマナよりオーラで体を保っているので無理やり形を作ってる部分があるのか寿命は短くなるんだよね。まあ人間に比べて七割から八割ってところ。多産なケースもあるから平均寿命が伸びにくい部分もあるらしい。まっとうな生物学者なら一生かけて研究するくらい、まあありえない姿をしている。そもそも人間のファンタジーの産物をむりくり生かしてるわけなんだけど。この世界では太古のキメラ実験から生まれたということらしい。自由に働く細胞が多いので他の種との混血もしやすいそうだ。うむむ、科学。


 あとで聞いたが、彼女の名前はシャロン。まあのちに、この時助けなきゃよかったとか思わなくもなかったんだけど。


「助けは必要かね」


「! お願いします!」


「元気だね。まあやれるだけやるんだね」


 つゆ払いでもないけどそこそこ強そうなの潰すのと雑魚の数減らすくらいはするか。助け過ぎたら甘えるからね。


「さて、キャンディをお食べ」


 ズガガガン、と数十発のキャンディで爆撃する。四十気圧にしてあるが十分にヤバいね。おおっと、やりすぎたかモンスターたちは混乱を始めた。まとまってたほうが処分しやすいんだがね。お姫様が。


「もおおおお、雑魚なのに邪魔なのよ〜!」


 ビカア、と空気を裂く音を立ててアリーチェの閃光魔法が唸る。蚊取り閃光。いや、オーク取り閃光。バタバタとまああんだけ散らばってるのをきっちりしとめるね。私が鍛えたんだけどやるじゃないか。頑張ったんだねえ。


 頑張れ、負けるな、お姫様。アリーチェは数分で数十は残っていたオークやハイオークを片付けた。まあこれくらいはレベル六十もあればできるし今のアリーチェなら余裕だね。


「さて、犬耳のお嬢ちゃん、大丈夫かな?」


「は、はい、あの、貴方様は!?」


 ん〜、めっちゃ尻尾振ってるよ。イヤな予感するねえ。


「私は名乗るのもおこがましいただの魔法使いさ」


「そ、そんなはずはありません! さぞや高名な魔女様なのでは!!」


 やべー、こいつ駄目なヤツ。察しろよ。名乗りたくねえって察しろよ。


「名乗ったらいいじゃん白の魔女カーラってもう十分話題だと思うわよ?」


「なんであんたが名乗るかねえ?」


 いいけどさ。それにまだそんなに名前は広がってない。はず。そもそも広がってたら引きこもれないし。変なのが未だ未開のソリド島に来たら困るだろう。まあ返り討ちは返り討ちだけど。邪魔くさい。もうちょっとひきこもってたい。


「カーラ様! 偉大なる白の魔女よ!!」


「うわっ、なんだなんだ」


 めっちゃ吠える犬娘。イヤーな予感増加中。


「ぜひ!! 私を弟子に!!」


「え、嫌だけど?」


「そこをなんとかっ!!」


「相手を思って引くとかないのかね。あんた私があそこのアリーチェを殺せって言ったら殺せるのかい?」


「ご命じとあらば!!」


「へっ」


 予想通りすぎて吐き気してきた。


「私は犬コロは嫌いなんだよ。またね。ほれ行くよアリーチェ姫様」


「姫様?!」


「いちおー獣人部落も行くわよ」


「えー」


 ものっすごい嫌な顔をしてやったがアリーチェは全然微動だにしない。そりゃそうか、そのために来たんだもんね。


「どうか! どうか! 犬が嫌いなら耳も尻尾も取りますが!?」


「え、あんた頭悪いから嫌だよ」


「それならば! 学びます!」


「学んでからおいで」


「確約を!」


 しつこっ! うへー、だから嫌なんだよ犬は。ペットなら可愛いけど喋るのはナシだ。言葉でグダグダ考えたくない時にペットがどうしたの、悩み聞くよ、とか言ってきたら蹴る自信あるわ。くぅ〜ん、ならぜんぜん気にしない。お気楽だね〜、よしよし、ってなる。受け答えすんのがなにより面倒くさいだろ。ペットにもしゃべる権利があるとか認められたら私はしゃべらないロボットを飼うね。気持ちを癒やしたいのになんでベラベラしゃべったり考えたりしないと駄目なんだよ。疲れるわ。


 まあそんなこともあってしゃべるなら犬コロは禁止。自分の意志があるなら自由にするのが一番だ。


「自由が一番だよ。そう思わない?」


「まあそうかもしれないけど自由なぶんは責任もあるでしょ」


「他人の自由を奪わないくらいだよ、自由の責任なんて。好きにしたらいいのに」


「どうか! お願いします!」


「というかアリーチェ飼えば?」


「え、いらない」


「だろ? 誠意ってもんがないヤツを下につけたがるはずもないしそもそもコイツあんた殺せって言ったら殺すらしいよ? 大問題になるわ。考えて行動しない命令をただ聞くだけじゃこっちの意図通りに動くこともないからね」


「そうね、部隊長権限もある程度ないと部隊は動かなくなるわね」


「切羽詰まったときに命令がないから動かないとかされたら下手したら大戦犯なんだけど」


「兵隊にはロジックもセンスも必要ね」


「そういうわけでサヨナラ〜」


「どうか! どうか!」


「……ええ〜」


「完全に犬じゃん。獣人ってこんなんじゃないと思うけど」


「本人の資質だろ。以前はなにをやってたのかね?」


「私は騎士をやっておりました! ピーアにて犬将に仕えておりました!!」


「じゃあ帰ったら?」


「お願いします!!」


 ダメだこりゃ。話しにならん。スクルドは考えてたし自分の利益は確保するタイプだから許したけどコイツ死ねって言ったら死ぬタイプだもん。重いわ。そんな命令下さんでもどうとでもなるしな。


「じゃあ村に行くか」


「ご案内します!」


「マイルーム」


 そのままマイルームに入って村に移動する。一キロの範囲内なら行ったことがなくても移動できるからね。さすがに数百メートル離れていたら追いかけても数十秒はかかるしまずこっちは臭いも残さず飛んでるからすぐにどこに行ったかはわからない。


 それにしても数百メートルなんて近いもんだね。普通の人でも走って二分もかからないわけだし。でも二分もかかったらことが終わるには十分な距離だ。村はなんか騒動になってるね。いちおうあの犬娘が出ていったものの進軍を抑えられるかって話だし逃げる準備かね。


「こんにちは」


「だ、誰だ!?」


「敵か?!」


「こんなプリティなオークがいるか!」


「そりゃそうだこんなちびっこなはずないやな」


「おまえさん、この村は危ないぞ? すぐにオークがくるぞ?」


「ぜんぶこっちの姫さんが片付けたよ」


「え、なんで私に振るのよ?!」


 だって面倒くさいもん。今は姫さんの付き人みたいなもんだしね。


「おお、本当ですか?!」


「シャロン! シャロンも帰ってきたぞ!」


「かーーーーらーーーーさーーーーーまーーーーーー」


「ウザい|(真顔)」


「ウザいわね|(真顔)」


「真顔って言わんと駄目なんです? まあなんとなくわかりました。アイツは猪突猛進なもんでこっちで止めておきますんで」


「すぐに出るから気にしないでいいよ。姫さん、調査するんだろ」


 獣人もソリド島に移すつもりだったけどエルフよりさらに話しにならない。文字通り話しにならない。まあこの村長がしっかりしてるっぼい。トラの獣人だけども。


 そのあと村長にソリド島移住を持ちかけておいた。ここからなら船を出せばソリド島につけるんでソリド島からミネルバの作った船で送らせる。シャロン? 知らんよ犬コロは。必要なら殺しするヤツは獣より厄介ななにかだ。理性という名の邪悪な計算だね。人は理性をいいもんのように思ってるけど恐怖や人を傷つけることの悲しみがわからんのは理性のせいなんだよね。本能なら普通はわかるんだ。種ってのはその種を守る本能があるから生存したんだよ。もともと社会なんてのは本能であるはずなのに理性を絡めるからうっとうしくて邪魔くさい偽物の道徳がはびこるんだ。理性に必要なのは感情のチョイスだよ。悪い感情を無視しいい感情に目を向けるんだ。結局満たされるったって脳の反応でしかないんだから。手に触れぬくもりを感じそれを意識する、それはデータが決めたことか? 命としての当たり前の反応だろう。それをよく解釈する、理解することが理性にとっての必要なことだ。上っ面の計算なんてものが人を殺し傷つけ戦争を生むんだ。それは正さにゃならん。


 私ひとりでできるわけないだろ。だからこうやってコソコソやってるんだしね。


 人間一人で戦争するやつなんていないんだよ。相手もいない一人きりで戦争って。昔そんなSF漫画あったけどね。現実的ではないね。相手がいるから戦争になるんならかかわらないのが一番じゃね? 侵略が悪いもんだと言いつつ自分はやるんだよな。反吐が出る。殴ってくるなら殴り返すわ。


 まあ、だからくじくんだけど。その世界の人間の力でね。







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