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「我は魔女なり」 〜引きこもるためのスキル【マイルーム】をもらったがあまりに世界が酷いので暗躍することにした〜  作者: いかや☆きいろ
不思議の国のアリーチェ

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エルフの森

 さて、お姫様の騎士一行はぞろぞろ連れ歩くのも無駄だし王都に直接送り返した。姫様を守る? 私以上の護り手がいるのか、私から護れるのか。うんどっちにしても役に立たんな。なので全員漫画が〜とか言いながら帰った。あれ、姫様は?


 まあお姫様も大事だけどそっちは考えても無駄だしね。連れ帰るにしても仕事があるし引きこもる意味もなければお姫様も外遊に乗り気で国王の許可もある、と。ここまで来たらもう帰るっきゃないな。別に任務放棄とかは言われないから安心して帰るがよい。王様とはナシつけといたぜ。


 そういうわけで外遊することになった。そもそもこの世界の土台がまだよくわかっていない。確かにロードバースでいろいろやってる中で勉強していたがぜんぜんわかっていないことのほうが多い。ワクワクするな。あ、護衛のジョバンナちゃんはいちおう残ってついてるぞ。


 そんなわけでロードバース南岸の砂浜に来た。ここから北西に向かうと前に行った山賊村から更に西、森の中に敗戦者の中からエルフだの獣人だのが種族ごとに固まって村を作っているらしい。ドワーフ? 酒と鍛冶を求めて街に帰った。あいつら穴蔵ぐらしするなら街で引きこもりライフが楽で楽しいと気づいたらしい。進化してるな〜。んでエルフとか少人数でひきこもってるみたいなんだが、さすがにさあ、種族保つならもっと人数のいる大きな集落に集まらない? ひきこもっててもしょうがないのよ。なのでソリド島にエルフさらっちゃおうかって。悪いやつ? 魔女になに言ってんの? 平和主義? 不毛の土地から豊かな土地に誘う。すごい平和だぞ。土地にこだわりが? 敗戦者の村だが?


 なので問題ないのである。


 なのだが。


「さて、お姫様、エルフの森まで道程はわかるんだろうね?」


「もちろんよ、任せなさい!」


 うん、ちょっとつきあってみてわかったけどこのお姫様頭はいいけどアホだわ。アクティブというか。転んでみなければ痛みはわからない、ってタイプ。好ましいね! そもそも馬鹿とかアホとかって可愛らしいし下げることないと思うんだよ。どうせこの先進化するAIに比べたら人間は馬鹿だしそこを競っても仕方ない。競うな、持ち味を活かせ、ってどこかのお父さんも言ってたしな。私の持ち味ってなんだ? ゲームしかしてないぞ。やべえ、空っぽだ。まあそのうちなんか中身ができるだろ。地道にやってれば。


 そういえば他人と付き合うときについ相手は自分より上か、下かを考えるがそういうのは相手が疲れるのでやらないほうがいい。自分と相手は対等、クリアな心で接するのが大切らしい。人を下げることは本当に自尊心を満足させる以外無意味だ。私は……まあ話を聞いてもらえないのは純粋に辛いわな。人の話を聞くようにしないとな。


 他人がマウント取ってくるならそんなことしなくても大丈夫な自分は大人だなあ、と自己満足しておくといい。口にするとマウントになるけど思うぶんには自由だからな。


 さて、いろいろ街だとか森だとかある中を進んでいく。どこも戦争で敗れた部隊から逃げ出してきたりした人たちの村だ。なんでこんなにいるのか、場所によってはしっかり男女比そろっていて開拓資金でも出てんのかなって思う。この辺りはムルベイ公爵が人を引き止めるために練ってる戦略だろうな。ムルベイ王国として国力を高めるため、なのか国に離反せずとも余裕で守りきれるようにするため、なのか。ムルベイ公爵としては王国愛が深いので離れるのはいよいよ自分の立場を他の貿易国に追求され戦争を仕掛けられそうになったら、だろう。それで言い訳をして時間を稼いで体制を整えるわけだが、それは今もやってるわけだな。どちらに転ぼうが財は力だし。人財も宝、財と言うが人を物扱いしてる意味はないからな。大切なものを宝とか財と呼ぶのであって。


 社会において人は皆消費者として価値があるんだよな。消費者がゼロなら生産もゼロになるだろ。消費者が百なら生産は百までしか作れない。作るだけならできるがそれだと値打ちが下がるし自分に益がないと原資が枯れてしまうからな。作れたものが作れなくなったら困るからやはり百人には百か余裕を見て多くて百二十で作る。まあ今話してるのは消費者が価値があるという話だからこれが千人になり、一万人になれば益は多くなりより良くよりたくさんのものを作れるようになるわけだ。なので消費者が多ければ多いほどいいわけだな。お客様は神様ではないがいないと困るんだ。まあつまり人は生きてるだけで最低限の値打ちがある。


 私は物扱いはもちろん嫌だが星のんじゃないから神とかも嫌だな〜。まあだから星のんに普通って言われるんだろうけど。普通の木が普通に成長していたら周りを見渡すような大樹になるんだよ、普通は。そんな普通ならいいんだけどな。


 普通より劣化してね? してるよな。まあそれはいいや、悲しいし。


 さて、森の中に入った。戦いとかで敵の攻撃を躱すのに普通は横か後ろに躱すと思うけど実は一番いいのは斜め前に躱すことなんだよな。相手の攻撃はこちらに向いて慣性でまっすぐ飛んでくるのでそれに対して後側、つまりこちらから前方に行くと自然と打点から距離が離れるんだ。そして相手はこちらに来ると思っていないので隙ができる。こちらは最初からどういう立ち位置になるかわかってて前進してるので好きに攻撃できる。便利だろ。なんでこんな話したかというと矢が飛んできたからだ。どうやらエルフの領域らしい。


「な、危な!」


「お姫様たちは部屋に入ってな」


 アリーチェたちをマイルームに返す。わかりやすいように扉を出して潜らせた。フェイクだな。まあこれでもヤバいスキルに見えるのがいいところ。敵の矢が飛んでくるのでするりするり躱しつつ前進する。慌てたのか矢の数が多くなった。


 普通は警告とかするんじゃないかね。この矢が警告だ、とか言うんだろうか。エルフは言葉も通じない猿らしい。仕方ないので戦争を買ってやることにする。


「あまーいキャンディをお食べ」


 防音無しで四十気圧のキャンディを超音速で炸裂させる。周囲は吹き飛び爆音が鼓膜から脳まで揺らす。死人も出たかな?というくらいの威力だ。風魔法は本当に凶悪だぞ。そもそも音というのが命を狩るのにとても便利なんだよな。カッチン漁が禁止される理由は手当たりしだいに殺して生態系を破壊するからだ。それを空気中でやった。たぶん動物とかも気絶してるだろうな。まあ話のできないエルフ猿も動物といえば動物か。対話するなら悪いようにするはずがないのにな。力比べとか技術勝負とかしたいのか?


「うーん、だいたい気絶しちゃったか。弱すぎね? 普通に雷魔法とかも轟音だし音対策なんて常にしてるもんだろうに」


 この世界の常識は元の世界とやはり違うんだよな。そしてこの世界の住民である私より常識に疎いエルフ猿。うーん、猿扱いって話ができないのそっちじゃんってなるよな。やめとこう。


「さーて、いい子はいないのかね。山賊しかいないなら楽園に送るけど」


「ま、っ待たれよ!!」


「私は戦争を仕掛けられたんで全面降伏か撤退か全滅か選びなよ。まあ私は戦争する気まったくないんだけど無言で射掛けられたら戦争だわな? 違う?」


「ま、まったくもってそのとおりです、魔女様、どうか鉾を納めてください」


「だから、そこ」


 ぱあん、と音がしてエルフが一人耳とか目とか血を流しながら落ちてくる。矢をつがえている以上和平交渉とは言い難いね。


「統率取れてないね〜。もういっそそのまま楽にしてやるかい?」


「お、お待ちを! 貴様らあっ!! 実力の差もわからんのか、この猿どもが!!」


 自分で猿って言っちゃったよ。まあ身内のことは基本的に社会問題にならない範囲なら構わないがね。今のこの世界でパワハラ禁止って言ってもまとまらないだろうし。仕事もできない話もできない馬鹿者にはついパワハラしたくなるけどさっさと首にしたほうがいいよな。仕事をしないくらいならまだ飼ってる意味はあるけど仕事の邪魔をするならマイナスだ。この世界では鉄拳制裁だな。そもそもが従業員の契約があるから仕事をするのは義務で仕えている以上は仕事をしない権利は存在しないんだよな。法的に。


「反意のあるヤツはコイツとコイツとコイツと……なあ、エルフって魔術得意じゃないの?」


「と、とくい……いや魔女様と比べたらアリとノミのせいくらべですが……人間よりは……」


「エルフは妖精の分類だっけ」


 普通にマナでまだ敵意のありそうなヤツを捕まえて前に並べる。マナが届く範囲でも距離に反比例して威力が下がるんだから魔術が得意なら五十倍程度は力の差があっても跳ね返せるはずなんだが。力のないヤツが力を誇るって自殺志願だと思うんだけどどう思う? 私は殺さんけど、うーん、どうせおんなじだし楽園に送っとくか。どうせ口を開かせてもろくなこと言わんだろうし。あ、声はもちろんベルがカットしてる。


「グルル……」


「ほれ、ベル、あんまり脅すな」


「かっ、かっ、かぜっかひゅっ」


「大丈夫?!」


 風の精霊王はエルフの信仰対象だ。それが怒りを放っているんだからもう神に逆らった信徒のようなものだね。そのままだね。平社員が会社のプロジェクト潰しに行くような? さすがに理由があれば取り上げるだろ。潰しに行く意味がない。


「エルフってのはもっと理性的で対話を重んじ優雅なものかと思っていたけど力に屈服してようやく膝をおるんじゃただの蛮族なんだよ。都会的であれとは言わないが対話のルールくらい知っとけって思うんだよね。知っててこれなら終わってるぞ。そもそもなにをもって矢を射ったのやら。相手の力も属性もわからんのに。いや別にお説教じゃないんだよ、普通に疑問だわ」


「ま、まったく面目次第もございません……」


「いや、謝られても困るんだが。改善したほうが安全だよってことで。命令でもないし。戦争仕掛けてきたから買っただけだしな」


「ま、もうしわけ……いえ、改善に努めます……」


 エルフってそもそも長寿の種族のはずだけどそれでも若いバカはいるんだな。その感性のまま年寄りになるヤツは一定数いるわけでそういうのがエルフの場合寿命が長いせいで多いしわざわざ教育も施さないんだろうね。年寄りがなにかを学び始めるのはたいがい暇だからだしな。人生に暇を感じないからゲームとかに走るんでそれが暇なことだと気づいたら勉強始めるんだよな。そこまで行くのに時間がかかるけど。


「なんていうかさ、私が水野とかなら全部凍らせたりしたと思うんだよ。危なくない?」


「あ、危ないですね」


「行きあたりばったりつまづいて頭をしこたま打って余命幾ばくかになってから足元に気をつけなきゃ、キャハ♪って言っても遅いだろ。普通に全滅してたぞ。謎だ。どうしてこんな軽率な種族が生きながらえているんだか」


「ま、まったくもってそのとおりで」


 うーん、この人はしっかり止めにかかったらしい。さすがに宣言もなく矢を打つのはね。殺気をもらした覚えもないし。まあ周辺の風はベルが支配してるのでそこに違和感があったのかもしれないけど、それなら余計警戒して一声はかけるけどねぇ。うーん、血気盛んなヤツが暴走してそのグループが追従したかな〜。もううさぎになったからわからんね。次に会うときは善良なソリド島の民になっているだろう。


「んー、まあ全員うちにさらう気ではあったから敵っちゃ敵なのかねえ。暮らしやすい場所より自分が開拓した場所がいい、それはわかるな」


「ど、どうしましょうか」


「このレベルならまだ開拓したとも言えんしうちに来て他の子たちと開拓してくれんかな。人間が嫌とかある?」


「い、いえ、大丈夫です。ここは敗戦したエルフ部隊の者が集まっているだけで開拓もそれほどしていませんし長老がいるわけでもありませんので」


「じゃあ、もらっていくよ?」


 なんかこの人は村のリーダーでもあるみたいだね。エルフなんで百歳くらいかもしれんけど。この世界のエルフは長くて三百歳まで生きるくらいで平均寿命は二百歳くらいらしい。子供が少ないので子供を部族を上げて大切にするし子供好きが多い種族なんで大人に対してはこんな感じだけど子供なら保護するって感じ。それなのにいきなり私に矢を射かけてきたんだから最初に打ってきたやつのグループがマジギルティ。子供ならしとめられる、エルフの領域を汚す者に死を、そんな極端な思考回路してたんだろ。なんでも五十歳くらいの若者グループらしい。五十歳とは言うが人間のペースでは生きてないから中身は二十四、五歳かもっと若いくらいのもんだけど。やんちゃの盛りだね。


「じゃあエルフの村いただいたよ」


「なんでマイルームに入ってる間に終わってんのよぉ!」


「姫さん忘れてたわ」






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