無人島名物、漂流者
「おーい、魔女様ぁ、なんか船が流れ着いたぞぉ」
移民に任せた街の作業を見ているとソリド島に早々と移住してきた冒険者がそんなことを言ってきた。無人島と言えば漂流者だもんなぁ。蚊に食われて二週間くらいして熱病発症してってのがセオリーだよな。まあ私は病気しないしマナで全身をコーティングされてるから蚊にも食われない。便利である。
そしてその漂流してきた船のところへ向かうと騎士がたくさん。なんじゃこれ。面倒事の予感しかしねえ。実際奥にお姫様っぽいのがいるし。うわー、船は大破してるのになんでこんなに生き残ってるんだよ。まあ魔法あるからなぁ。船を壊れかけのまま無理やりマナで維持して、たどり着いたとこでマナが切れた、とかだな。魔術師が何人か倒れてるし。ごくろーさん。
「ちょっとお! なんで無人島にもう街ができてんの?!」
「知らん。できた」
さわがしいお姫様だねえ。小さいし子供だな。私よりは大きいけど。
「あ、アンタが白の魔女ねえ! 討伐してやるから!」
「うんうん、頑張れよ。じゃあそのへんで野たれ死なないようにな。撤収〜」
出会って二秒でハイ戦争、とかしません。めんどくせーやつだなー。なので見物人全員で帰ることにする。止められた。当たり前だけど。
「ちょまっ、アンタねえ、無視はないでしょ!」
「面倒くさい(真顔)」
「口で真顔って言うやつ初めてみたわ! ちょっと扱い悪くない?!」
すげー面倒くさい。なんでいちいち争おうとするんだろうな。戦争なんてこの世から無くなればいい。現場の感情とか知ったことか。人を殺すならすべて殺人者だ。AIロボットバトルならやってればよくね? 資源を損するだけだけど。
「だから無理だと言ったじゃないですか姫様。さっきから魔導隊も魔法攻撃できないし騎士隊も鞘から武器を抜けないどころか鞘すらベルトから外せないんスから」
ちなみに会った瞬間にマイワールドに引き込んでる。誰も気づいてないけどな。それにしてもなんかやる気なさげな女騎士だな。不真面目系女騎士って新しいな。そうでもないか? まあ好みかも。タッパもあるしソバカスだけど赤毛で濃い赤い瞳、可愛い顔をしている。気配は強そうなんだがおちゃらけている雰囲気を出してるな。姫様は黒髪に青い瞳でなんか絵本に載ってそうな美少女だよ。なんていうかよくあるわがままな感じのお姫様。テンプレすぎ。なので不良女騎士のほうが好み。
「ジョバンナ、アンタねえ! やる気ないわけぇ?!」
「姫さん、やる気ってのは可能性があるから意味があるんスよ?」
「それをやる気がないって言ってるのぉ! 可能性くらい引っこ抜いてきなさいよ!」
まあやる気って大事だけどさ。私が言っていいかな。自分でやれ。やらないんだろうなぁ。
いいんだよ、お姫様なんて他人を使うのが仕事なんだから。命令しない王族ってそれはそれで問題あるからな。命令して人を動かす人がいないと全体を見渡して指示が出せない。末端が文句言っても他に負担ができるし後でああだから言ったのに、みたいに言っても変えていたら変えていたで問題は生まれただろう。物事は右から左、左から右には動かせるが同時には無理だ。新しくもうひとつの物を、とできるならそうしているだろう。自分だけが賢いと思ってるヤツの発言だな。間違いを指摘されたら切れ散らかすんだ。それは上も下もないけどな。現実なんてままならんのが普通だ。わからんから若いって言われる。末端だけ見て物を言うのは普通にただのワガママだしな。全体的に優れた意見だとしたら我を通すべきだけどその判断ができるのかってことだよな。弱者には弱者の悪がある。だから正義だの悪だのと夢見がちなくだらないことは言うな、現実を見ろ、という。当たり前なんだけどな。建設的に行こうぜ。
と言うわけでお姫様がワガママなのは別に構わん。現実を見てないのが問題なんだよな。
「高い高ーい」
「えっ、ふぉわっ!? なにっっ!!」
マナで持ち上げるのは魔術の基本。お姫様がお子様なので優しくマナで高い高いしてやった。
「落ち着いたか?」
「落ち着けるわけないでしょがこの魔女むちゃくちゃするわねほんともう嫌だコイツ!!」
「息継ぎしろよ親近感わくなこのお姫様」
降ろしてやったがふーん、とか言ってそっぽを向く。可愛いもんだな〜。子供は好きなんだよ。どうやら十二、三歳くらいだけど。そろそろ中二の病を発症するな。最近スマホがあるから小学生でも発症するらしいぞ。中二病のない人生なんてそっちのほうがブラックだわ。拗らせていいのよ。犯罪者が減ったの引きこもりと中二病が増えたからかもな。エロ本が多いからその手の事件が無い説あるよな。縛り付けられたら反発するなんて精神の基本的な仕組みじゃねーの。表現規制なんて馬鹿がやるんだよ。悪党ども、ブッ殺してやるぜ!って小説書いてたらそれだけでなんか落ち着くぞ。殺人したい人、ストレス解消に作家はどうですか? 誰も殺せなくなるぜ。
まあそれはいいや。このお姫様どうしようかね。そうだな、創作姫にしてやろう。小説大好きになるか漫画大好きになるかわからんが、ストレス解消には創作が一番。
「お姫様、こっちおいで」
「はっ?! なによこの部屋?! いつの間に?!」
マイルームで漫画とか立石とか水野とか星のんとかミネルバとかが散らばってる部屋に来た。散らばるなお前ら。
さて、どれにしよう。やはり人生を学ぶなら北○の拳だな。ヒャッハー!って言っておけば人生楽しくなると教えてくれる書物だ。え、最後にははじけとぶ? 人生なんてハジけたらいいじゃん。ボー○ボもあるぞ。あれってノリがわかってくるまでクソつまんないけどわかってくると笑い転げるよな。不思議だ。人生慣れと勢いだな。やはり人生を学ぶには漫画だろう。最近の漫画つまんないって思うことあるけどだいたい作者が漫画で育ってるからだろうな。普通に学問や映画で育ってる人の漫画って面白い。創作するなら自分のジャンル以外も見るべきだぞ。
「これは、見たことない漫画ね……」
「この世界漫画あるのかよ。いや、立石ィ!」
「しかたねーだろつまんねーんだもん広めるわ。ちなみに私が書いた漫画はレジェンド扱いだぞ」
「お前絵だけは上手いもんな。機械まったくダメなのに」
それでよくバイク乗りしてるよな。まあピンチに駆けつける機械に詳しい坊っちゃんみたいなのを付き従えていたんだけど。確か結婚したとか言ってたんだよな。まあずっと旅の空なんで子供はいなかったが。
「あー、ター坊な。思い出すだろやめろ」
「こっちには来てないのか。うーん、それはそうか、あいつ来てたら超知識チートやらかしそうだ」
「というわけでその話はなしだ。お前だって会いたいけど会えないヤツはいるだろ」
「だいたいここで散らばってるが?」
「クソチートめ!」
それチートなの? すごい邪魔くさいんだけど? まあ楽しいけどさ。女神は転がって本読んでミルクティーこぼして慌ててるよ。神ィ! 水野はラノベ読んでる。スクルドと水野の弟子のマリーちゃんは二人でイラスト書いてるぞ。姫様はなんか漫画読んでる。ちなみに従者の魔道士や騎士たちは楽園に送って飯とか食わせてる。姫様の映像見れるようにしてやったぜ。あ、従者のジョバンナさんは連れてきたぞ。姫さん一人だと暴れそうだし。まあ大人しく漫画読んでるけど。ちなみに楽園は夜の間漫画や映画も見れる。昼間は仕事しないとダメだけど基本は楽園だぜ。
「そう言えば姫さんの名前聞いてなかったな?」
「あん? 私はアリーチェよ! アリーチェ=トーナイン=アナナス。第一王女よ!」
「漫画から目を離せよ……いいけど」
めちゃハマってるな。オヤツとドリンク出すか。
「○ッポ食う? 最後までチョコ入ってるヤツ」
「なにこれ美味しい」
日本のチョコ菓子はチートだと思う。まあ私は煎餅とか好きなんだけどな。きのこたけのこ戦争はやめろ。キノコの勝ちだ。ちなみにリアルキノコはあんまり食べない。椎茸とか苦手。チョコは正義。戦争も終わる。いや、戦争してるけど。
そういう派閥争いはなんでも危険という話だな。人間は役割に従って性格が変わる。クラス委員とか風紀委員をやってみるといい。ちなみに高校の時なぜか私がクラス委員に選ばれたことがある。見る目ねえな〜。なんか元気良かった時期があったんだよ。それで女子人気も低くなかったんだなぜか。小学生の頃知ってるヤツらは引いてたと思うんだが。まあ小学生からの知り合いはクラスに二人くらいしかいなかったけど。人間はポジションを変えたら変われる部分があるってことだ。まあ社会人になってもいろいろ学ぶことはあるしどんどん自分が空っぽなの気づいていくからな。学べば学ぶほど自分がなにも持ってないのに気づくんだ。それが嬉しくなってくるんだよな。だから自分の無能が嫌なら勉強したらいい。他人は変えられないしたとえばつきあいのある十人を変えるより自分一人を変えたらその相手十人も変わるからお得だろ?
才能なんて最初からないぞ。二足歩行の天才である人類も赤ちゃんから大人と張り合えるのに十年はかかるのになぜか小説とか歌とか絵画とかは初めて触れたその瞬間才能なる謎の能力を得て天才に至ると思ってる。馬鹿じゃん。そんなわけがない。赤ちゃんがカール・ルイスみたいに走れないから私才能ないわとか言い出したら呆れるだろ。赤ちゃんしゃべらないけど。十年やってから才能とか言うといい。二十年やって初めて花開く人もいるぞ。私? 私に才能なんかあるわけないだろ!
最初はその分野の知識を得ることだな。そして恐る恐るでも歩き始めることだ。そのうち筋肉がつく! そして走れる! そんなもんだろ。ガッツリやりこめばいいんだ。まずはそこだろ。
なのでお姫様には漫画を読んでもらう。アリーチェだったか。姫さんでいいや。そのうちボーイズラブとかにハマったりしそう。まあこの世界の枠内でやるならいいんじゃね。この国は別に同性愛批判はないけど子供を残すことは重大とされている。既婚者が同性に溺れても見て見ないふりされてる。それはいいや。地球もそのうち交配型のクローンでも増やせばいい。私は死んだから関係ないしな。同性相手にどうせいって言うの?とか言うタイプだぞ私は。そもそも愛などいらぬ。べつに帝王じゃないけど。退くし媚びるし省みるし。
姫さんたちは、なんか付き人の女騎士も漫画読んでるし私は楽園の整備に行くことにする。いや、楽園はやることもあるんだよ。仕事をしたいヤツは仕事できるように作ってる。そこにいる騎士や魔道士たちは安全だとわかったのかうさぎたちを手伝っている。ここにいるうさぎは犯罪者だったりするがだいたい働いて改心するようになる。人は自分に何もできないという無力感から暴走する。家族を失ったりな。しかしまだやれることはあるだろう。生きているんだし生を否定するなら人の死を悲しむ意味もない。重い荷物だけどそれなら一緒に持ってやる。
この魔女が杖を貸してやろう。
なので悲しみや苦しみ故に悪人になったヤツらはこの楽園で癒やしている。人が苦しむのは大切な人を失ったからと言うのもあるがそうしなければいけないという自身への強迫観念もある。そういうヤツに復讐は無駄だと理を説いたところで激しく反発するだけだ。癒やされるのを待たなくちゃ駄目だろうな。そのために周りがサポートするべきなんだろう。よく賠償を求める人が金じゃない、というがそれも事実なんだろう。でもなあ、犯人が苦しんだら、犯人が死んだら清々しくすべてを忘れるような相手だったのか? そんなはずないんだよな。私はベーシックインカムが導入されたら無期懲役にしてソイツの生活費から余ったぶんを被害者遺族に返すとかにするべきじゃないかと思うんだよな。そのうち刑務作業でできる程度の労役は機械が全部やるようになるし。そうしたらどうなるか、そういったことを考えておかないとダメだろうな。人の痛みを知る術なんて厳密には脳を接続するくらいしかないんだから。だってこうこうこうだから苦しい、って説明してくれるわけじゃないし、一口に説明できるわけないんだよな、思いってヤツは歴史だから。
刑務作業機械化とかの事前の対策とかもそうだけどAI登場後の対策は何ひとつ話が進んでない。社会が未熟なんじゃなくて進歩がものすごい急速なんで先に先に考えて対処を、ことが起こる前にやる気じゃなきゃ間に合わなくなる。気がつけばただのペットに成り下がってるぞ。それでいいならいいんじゃね。知らね。
社会においてただの数字として存在している誰かになりたいならいいんじゃね。代わりはいくらでも作れるから守られなくなる可能性はある。そういうの怖くない?
楽園を作ってて思うのはほんと人間て人と干渉し自分で考えたり創作しない限り存在意義をなくしていくんだろうなってことだ。それすらも機械には及ばないが個を保つにはそれが必要になる。いずれってか十年二十年でそうなる。シンギュラリティはすでに起こってると思っていい。人間にしかできないことがあるなら人間を間に挟めばいいだけなんだから。脳科学的には人間も物理だからな。ずっとファンタジーなオカルトな世界を信じていてもいいけど今は実証主義の時代なんだよな。
こういうのは考えてるだけだから楽しいけどさ、現実になってきたらしんどいぞ。自分は無関係? そんなわけあるか。スマホ使ってる時点でないね。いずれAI社会に飲み込まれるよ。
この世界ではどうなっていくだろうか。どっちにしろ急速な発展なんてクソゲーだ。




