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魔王

 更新月金になっちゃってるけど何曜日がいいですか?

 せっかく王都まで来たんで観光とかしていこう。ここまで音速で飛んできたから一時間くらいしかかかってない。急に音速で飛ぼうとしたらGで死ねるからやっちゃ駄目だぞ。徐々に加減速って大切。私の場合は制御や生命維持をベルが担ってくれるのでそんなに大変でもなかった。いやー、物理世界で好き勝手できるのは最高だぜ。


 ……いやー、なんで誰も愛の女神が殺されたの知らないんだよ。うっかりしゃべっちまったか。王は流石に知ってるものと思うだろ。いや、確かに女神が死んだのに落ち着いてたらおかしいよな。それも五年以上、もう六年か、経ってるので普通に落ち着いたんだと思うだろ。お隠れも死んだの隠語だと思うじゃん。


 ちなみに王様は翻訳の兼ね合いもあるんだがずいぶんゆるい感じだった。宰相とセクハラ発言してるくらいだし実質ゆるいんだけど。執務室の中だけだろうけど映画に出てくる万年平社員感が。まあ社長なんて言っても最近はこんな感じかもしれないけどな。古風な言い回しとかカタカナ語とか内容聞かせる気がないのかって言いたくならない? 見た目優先はほんと鬱陶しいよな。大人なのに大人ぶってるようにしか見えないのが非常に痛々しい。言葉遣いで子供が大人になれるならこの世に熟年離婚なんかねえわ。感情を強く持ちながらも感情を支配できるのがいい大人だろ。おかげで搾取するつもりで結婚しようとしてると思われて若年層の結婚が難しくなったんだよな。まあ社会の影響まで考えることはないか。あとは死ぬまで遊ぶだけだもんな。無責任といえばそうだけどそれまでやってきたことから開放されたいと思うのは当然だとも思う。今の七十代くらいは戦後に本当に頑張ってた人たちだからな。私らはその恩恵に、ぬるま湯に浸かり始めた世代だと思う。


 このままぬるま湯に浸かり続けるとどうなるか。日本は流通ががっしりしてるからそうそう悪くならないけど税金が下がったりしたらそれも賄えなくなる。何が起こるかといえば定期的に買えていた日用品なんかの流通が滞るようになる。豊かな国が滅びに差し掛かるわけだな。そんなこと無いと思ってるじゃん? 日本の道路って数兆円規模で支えてるんだけどそれがいつまでも持つと思う? 車離れとか進んでるのに?


 問題が明らかだよな。一般人が車を持たなくなれば流通経路を維持する費用が企業だけでは捻出できなくなり、上記の状況に落ち込み日本は本当の貧国逆戻りとなる。


 まあ私はもう死んだから関係ねえや。ははは。そのうちエネルギー資源や核融合、効率的で安全な原子炉なんかが登場したらロボットによる道路開発なんかも行われはじめてセーフ、となるかもわからない。懸念は懸念だがなんとかなるだけの財産はあるだろう。正直日本はGDPとかを競う国ではなくなっていくんだと思う。あとは文化を守るだけだ。


 個人個人が動かないと企業や団体も動かないんだよな。当たり前と言えば当たり前。やる気出せない理由はどん底を知らないからだろ。今はものすごく恵まれてるからな。昔はパソコンどころかテレビなんて物も一部の金持ちの持ち物だったけど今は生活保護の老人でもスマホを持ってる。豊かじゃないはずがない。


 現代人が異世界で生きるのって本当に無理だと思う。スマホないし。知識チートで〜とかも難しいだろうな。国が動いても一朝一夕でインフラが整って流通が回ってそのためのエネルギーも確保してなんて、それは無理だ。いかに魔法が万能でも個の力でしかない。科学のいいところはバカでもスマホを使えるところだろうな。AIに質問し続けたら誰でも物理学がわかる。AIに小学生でもわかるように説明しろって言ったらするからな。流石にこのレベルまで来たら人間の時代終わったなと思うわ。将棋のプロや囲碁のプロが勝てないように小説家や芸術分野のプロが勝てない時代はすぐに来るだろう。そうなったらどうする?


 まあそれはいいや。その分野の人は趣味でやり続ければいい。AIに出せない面白みはあるだろうし。AIイラストとか最初は驚いたけどハンコなんだよな……。AIは答えしか出せないって弱点があるからそこが負けるとかは無いからな。アホなことをいうのは難しい。あ、普通にしゃべっててもアホなヤツはいるけどな。私とかな! 泣いてなんかいない。アホっていうのは勉強ができないとかではないんだよな〜。自分の好き勝手やって自爆するヤツがアホだろ。私だな。


 暴力野郎とかは死ねと思うけど好き勝手も迷惑かからない限りは楽しいんじゃね? 自分でバカだな〜とか思いながらやるのが楽しいんだよ。


 さて、いよいよ帰っちゃおうかと思ったがなんかすごいマナのデカいヤツがいてベルも楽しそうなんだよな。たぶんアレは偽神とかそんなレベルじゃないんだが。魔王。


 魔王。


 うーん、そう言えばアナナス王都にいるんだったわ。思いっきりマナ放出してるのは暗にこっち寄ってけって言ってるんだろうな。普通に生活しててあんなマナ漏らしてたら魔法使いは全員チビるぞ。物理的に言うなら火山噴火が都市部で発生してるみたいな感じか? 昔そんな映画あったけど。


 あの支配域、ドミニオンに入ったら私でも怪しいな。ギフトなら問題ないので、てか星のんは宇宙の摂理そのものを無制限に自在にできるので争う意味ないからな。宇宙を点滅させてモールス信号とかやろうと思ったらできるんだぞ。やらないだろうけど。誰に連絡するんだよ。


 なので命の心配はないんだが、うん、まあ面白そうだよな。ベルも喜んでるし。ベルと魔王が戦ったら流石にベルが勝つし。問題なのは生物なのに自然と比べられるほどの能力ってことだからな。私の一撃でベルが懐いたのも天候が余裕で変わる威力だったからだろうし。つまりはベルも魔王につくかもわからないのでそれは少し恐ろしい。私の能力半減以下だよ!


 でも呼ばれてる気がするので会いに行くことにした。王様には事後報告しておくかね。マイルームのポインタは城に置いてあるのでそこから一キロ以内ならどこにでも行ける。まずはマイルームの中から外をのぞくことにしよう。


 うーん、魔王の部屋に視点を飛ばしてみたんだが。


 ショタがいる。いや、ほんとにそんな感じ。中二病を患っている微笑ましいショタがいる。黒髪ショートに赤い瞳。頭に白い角をつけて黒い布切れのようなローブをまとって体に白いベルトをいくつも巻いて、だから中二病満載のショタがいる。私よりチビ。私よりチビってもはや小人族だからな。小人族の中二病患者。すげー笑ってるけど、まあ似合うけど、マナも荒れ狂ってるけど中二病。これは愛の女神になんか汚染されたな。愛の女神も中二病確定。まあ死んでるんだけど。


 ……。会うの? 帰る?


 ………………………………。うーん、仕方ねえ、なんか会わないで帰ったら泣きそうだし泣きながらソリド島に押し入ってきそうだしここで会っとくのが一番安全だろうな……。はあ。


 ゆるっとマイルームから出る。あ、ビクってした。大笑いしてたのにビクってした。


「ハーッハッハッハ……ハアッ!?」


 って感じでビクってした。大丈夫か? 中二病を拗らせたら死ぬんだぞ。知らんけど。背中から羽も生えてるな。黒い翼。うーん……、こんな魔王感満載にした魔王がいるはずがない。完全に地球人の中二病患者に感染させられている! 大丈夫か、傷は深いぞ!


「なあに、ただの致命傷さ!」


「死んでるからなそれ。魔王ってだいぶ痛い子供だったんだな〜」


「痛いゆーな! 我こそは魔王ルシア! 世界を支配せんとする破滅の権化、邪神の使いである!」


「ダンテ知ってる?」


『え、知らない、なにこの子かっこいいね


 邪神ダンテは白のベルでいつでも通信できるからな。今もソリド島のダンジョンの奥にいるんだがゲームしたり漫画読んだりしてる。私が買い与えたんだけど。ちなみにダンテもなんちゃって邪神ではあるけど一応イルマタルに派遣されてる派遣社員なので邪神と名乗っても問題はない。一生涯仕事場から出られないファイナルブラック労働だけど。


『いや、白さんのおかげでマイルームとかでお出かけできるようになったけど』


「邪神のまんま出かけたら街の人たちが卒倒するわ!」


『ソリド島のみんな適応力高いからなんともなかった』


「うちの配下もちょっとヤバいのか?!」


「ふーむ、つまりはこいつが裏ボスで我がラスボスであるな!」


「駄目だこいつ早くなんとかしないと」


 知識チートとかでは確かにないかもしれないが精神汚染はどうなんだ。いいか、楽しそうだし。二人は楽しそうにラスボスと裏ボス登場シーンの打ち合わせを始めた。知らんがな。そもそも魔王を倒せないが?


「あ、自己紹介してねえわ。白の魔女カーラだよ。よろしくね」


「うむ、新しい魔女だな。サンドラより危ないヤツだと聞いている」


「誰だよサンドラ。ああ、立石か。やっぱり忘れるなぁ」


 もう面倒だからのりピーに改名してやろうか。本人に言ったら烈火のごとく怒るから言うなよ。いや、地雷そうだから言ったことはないんだけどな。つか立石の知り合い。当然か、立石はこっちに千年いるはずだしな。


「それで、私を呼んだのはなんで? バトルしたいの?」


「やってもいいけどお楽しみに取っておこう。魔女全員来たら流石に殺られると思うし勇者パーティー来ないかな」


「まあ魔王倒す意味なさそうだけど。どうするの?」


「うーん、実際に会ってみて人柄とかを見ようかと思ったんだがよく考えたら真なる神の使いがおかしな奴なはずがないしもしおかしかったら世界を終わらせに来ているんだろうからな、そこは心配するまでもなかったわ」


「まあまともかどうかはわからんけどな。私は自分のことしか考えてねえし」


「自分のことを考えて世の中に貢献できるならそれでいいじゃないか」


「まあな、偽善とか言って何もしないやつはただの吝嗇な悪人だし、他人の評価のためにやってるわけでもない」


「目的はなんだ?」


「戦争をこの大陸の奴らの考えで無くさせる。そんなもんなくても全員が豊かに暮らせるようにコントロールさせる」


「人の生死まではコントロールできないぞ」


「するさ、そのうちな」


「ふむ、まあお前さんがするという話ではないんだな」


「当たり前だろ。世界を動かすのはそこに生きてるすべてだ。私はそいつらに杖を貸してやるだけさ」


「魔女の杖はなんでも願いが叶う杖、か?」


「なんでもはできないよ。できることだけ」


「知ってる、それネタだよな!」


「お前さんはなんでも知ってるな」


「なんでもは知らんがな」


「中二病ネタだけ、とか言っとけ」


 本当によくネタを叩き込まれている。なんのためにだよ。愛の女神に会っておきたかったかもしれん。


「それでな、そのうち我から依頼を出そうかと思ってな」


「あー、いいぜ。ほれ、これを持っておくんだね」


 白のベルを渡す。魔王なら使われてやらんこともない。間違ったことはしないだろ。したら倒す。ベルもいるから不滅の存在でも念入りに消す。まあそんなことにはならんだろ、なるなら偽神たちが倒してる。


「お前さんは偽神たちと仲はいいみたいだな」


「それはもちろん。長いつきあいだからな」


「ほーう、まあその辺りは自分で調べてみるわ。面白そう」


「それがいい。一口には話せないからな」


「愛の女神を殺した奴は?」


「心当たりはあるがぜんぜん動機がわからんのだ」


「ほーん、まあその心当たりがあるヤツも探してみるか。暇つぶしだしな」


 というか魔王のほうは殺されたの知ってたか。さすがにな。


「うむ、それでいいだろう。波風を立てていいことなどない。お前さんの目的からもズレるしな」


「そうだね、まあすぐには無理さ。今も世界中が戦争してるんだ。ハタからなにか言って止まるなら止まってる」


 まあこの世界では私は人間核兵器だからな。無理やり止めようと思えばそれは難しくないんだ。でもそれじゃあかん。あの人がいるから大丈夫、というのはあの人がいなくなったら終わるってことだ。個人への過度の依存は許されない。だからこそ少しずつだ。これやってる意味あるか?って思わせないと。


 戦争なんかくだらない。ゲームでいいだろ。漫画でいいだろ。暴力描写が嫌いってヤツは規制が逆にその方向のストレスを生み出し増強することを知らんのだ。人は生きてる限り欲深い存在だからな。


 だから漫画やゲームでいいんだよ。個人の人生は暇つぶしだ。社会においての生は後に意味が残るが、個人としてだけ生きるなら存在意義が消費しかないからな。自分が特別である必要はないと思ってるんだろうが競い合い磨きあうのはより深い楽しみを作るのに欠かせない。多くの人間がステージに立つことが望ましいんだから、ちょっと前のアイドルだってそうだしね。夢を叶える人がアレのおかげで増えたじゃないか。悪いことじゃない。


 夢は競い合い磨きあい、それを楽しめるからハタから見てても楽しい。わざと喧嘩腰でもいいと思う。実際に足を引っ張りあってたらバカだなとは思うが。相手の足を引っ張っても自分も一緒にすっ転ぶだけだ。無駄な労力だな。


 実際に走ってるヤツの足を引っ張ってみたらいい。すげえ体力使うぞ。無駄だ。無意味にして無価値。協力しあうのなんてただの実利だよ。リソースは有限だが増やすことはできる。宇宙は広いからな。


 遠い未来にはひとり一銀河の時代が来るかもよ? 楽しみだな。あと一億年もかからないと思うんだけどどう? その頃は別の異星人と取り合いになってるか?


 まあそんな極端に先の話は妄想だけしておこう。今はこの世界のヤツらに、戦争を止めさせに行く。


 結局魔王とは深く話すこともなくここは別れることにした。うーん、やり取りをするならいつでも連絡できるからな。長居する意味がないよな。会いたいって思ったときにスマホがあるからそっちでいいじゃんとか言われたら寂しいけど。この世界のスマホ、白のベル。転売は禁止です。スマホも転売は禁止だわ。





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