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ソリド島、魔女の国

 やっと帰ってきた。ちょっとお出かけでどんだけ働いてんだよ、と思うけど〜。一ヶ月以上働いた……。こっちの基盤も整えないとダメなのにな。まあ今からやるんですけど〜。


 マイルームのポインタ移動でソリド島に一瞬で帰ってきた。関係者各位には白のベルを持たせてあるけどうかつに鳴らすなとも言ってある。戦いで負けることはないがそれでも好きに呼び出されるのは好かん。当たり前かもしれないけど。昔つきあってた男が〜とかいう色っぽい話はないが父親に連れ回された記憶はある。こっちにも都合があるというのに。予定を立てるって大切。まあだからまったく親らしくなかったとも思ってないので多少ゲンコツ埋められたくらいは特に不幸とも思ってない。自分のことは耐えられるんだよな、昔から。よその子供がそうなってたら決闘も辞さないけど。余計なお世話って言うけど子供の世話って社会の仕事なんで親だけの管轄じゃねえんだわ。だから子供がいると優遇されるのが本当だとも思う。いいんだよ、年寄りから搾り取って子供養ったら。どうせ私らは死んだしな。先に死ぬもんじゃないか、年寄りは。放っとけばいいんだよ。飢えなければだけど。姥捨山は勘弁してくれ。


 そもそも年寄りだろうが不良外国人だろうが消費を伸ばすのに必要だったりするんだよな。上が豊かになるためには下も豊かになったほうがいい。太るには甘い農作物が必要なように、たとえ下の方で必死になってる人間が物でしかないと思っているとしてもそれがないと困る物なんだと言うのは理解するべきだ。人間の考え方がいかに違おうが世界は変わらない。それがわかってたら道徳や道義とかも社会をよく動かすための道理に過ぎないってわかるんだけど。善行でもなんでもねえ。ただの仕組みでしかない。犯罪を犯して刑務所入るのすごく無駄だろうに、その無駄のぶん働くだけじゃねえか。まっとうに生きるのはそっちのが楽だからだ。


 なので仕事する。まずは移民がごッさり来た。そいつらは適当に小屋とか建て始めたんだが私がマイルームを使って直径二キロの立体都市を組み上げた。日本でも大企業が計画してる都市丸ごとをひとつの建物のようにして事故とかなく流通を加速させられる仕組み、その未来都市型大型施設を作り出した。邪神ダンテのダンジョンを真ん中にして周囲を商業スペースと住居スペースで行きかえるようにしてある。レールを走るチューブみたいな乗り物が周期的に回っている。動力はマナだ。こんなことできるなら世界中でやれと言うかもしれないけど何度も言うが知識チートは社会の進歩を妨げたり飛躍することで歯抜けにしては駄目なんだ。ここだけで味わえるものにしてこれをモデルに他の国は勝手に開発競争や法整備を勧めていけばいい。法なんてものは単なる社会の潤滑油だ。無くてはならないけど人の生活をいちいち束縛するものであっちゃダメだ。まあたいがいの先進国ではそういう法整備がなされている……といいんだが悪法はどこの世にもあるんだよなぁ。


 魔女王国、名前なんにしよ、と思ったら住人が勝手に呼んでたのでそれで、の法律は、悪いことしたら楽園送り、すごく悪いことしたら地獄送り、だ。ちなみに復讐なんて絶対させないからな。この国で人を殺せないように法術スキルで制約をかけてある。殺人は不可能だ。もちろん旅人の条件もこの都市に入るなら殺人できなくなるので騎士とかは入り難い。上手くできてるだろ。この都市の噂が広まってももう困るんだよな。それくらい人が増えてきてるから。それで私の仕事はこの首都、ダンテ市から周辺の土地の整備、法整備をやらないとダメなんだよな。全員ダンテ市に入れるのはなあ。正直娯楽とか少ないしダンジョン探索しか仕事ないんだよ。ほかはオートメーションしてるし。服とかリペアの魔法かける店とかそんなのはある。浄化する店とか。風呂とかは各家庭にオールマナ化で設置してあるし、ダンテ市の外側は各国の研究施設とかにしたらいいかな。


 ちなみにこのダンテ市は壁に覆われてるんだがドラゴンのブレスも弾き返すぞ。出力はどこから来てるのかというと住民のマナが税金として納められている。そもそもここはダンテのダンジョン内なのでマイルームとは切り離されていたりするんだよな。当たり前だけどマイルームに各国にエネルギーを供給するようなシステムは無い。エネルギーの核はダンテのダンジョンにあるので不壊の壁を叩き壊さないとダメだし大規模魔法なんかはキャンセルされる。ダンジョン内のルールは別だがこの都市部では魔法は生活レベルでしか使えない。必要無いしな。武器を抜いたりハンマーをケースから出してたりするとおまわりさんこっちです、とばかりに連れていかれる。治安組織は黒うさぎにやってもらいたかったんだがさすがに干渉しすぎなので、そもそも黒うさぎはミネルバの物だし配下のうさぎには別に仕事があるからな、なのでちょうどいいので騎士団も作ったんだ。カーラ騎士団だと恥ずかしいのでクラウドナイツと名付けた。そっちのほうが中二恥ずかしい説は甘んじて受け入れよう!


 クラウドナイツは上位冒険者から選出されててコイツらにはプライバシーはない。治安組織にプライバシーなんていらん。悪さはできないが人から贈答品もらったりおごられたりしても問題ない。ワイロなんていくらもらっても法は破れない制約を課してある。重たいと思うかもしれんけど常に生活のぞいてるわけでもないんだ。当たり前だけど事件が起こらない限りなんにも調査は入らない。完全に犯罪を無くすすべなんてこれくらいなんだよな。暴力を完全に禁止にするのって難しいんだよ。性の営みとかに立ち入るわけにもいかんし。流石にそれはなー、プライバシーなんていらんとは言ったがこっちが関わりたくないわ。変態は人が見てないとこで勝手にやってくれ。知らん。


 自由を守りつつ法をガチガチにするとしたら魔法世界なんで制約とか便利なものがあるからここまででほぼ完全に違法行為を無くせている。ダンジョン内で違法行為してもダンテが許さんからな。私よりアイツのが厳しい。


 そうそう、外側の整備の話だった。港を作ったり船を作ったりもしなきゃならんしこっちが大変なんだ。正直簡単な動力機関の作り方なんてそんな悩むことはないからな。回転エネルギーを作ってやればたいていの機械は動かせるわけで、それってギアを組み合わせたりクランク作ったりしたらいいんで、問題になるのは材料工学のほうなんだよな。こっちが研究してもらいたいヤツなんで私は手出ししてない。分子工学とかこれからの時代なんだからコイツラが楽しめるところを奪うわけにはいかん。既存の船でしばらくはやってもらおう。


 自然とかは残したいからマイルームで地形を変えまくっていく。ほとんど設計は私とミネルバでやってるがミネルバが計算したものって天使の造形物なわけで、そう簡単に壊れたり計算外の出来事も起こらないんだよな。量子まで計算しきれるのが天使だからな。私らが太刀打ちできるはずもない。


 そもそも天使も神も次元がリアルに違うのでコイツらの基準で物を考え出すと人生意味なくね、ってなりかねない。まあ人生の意味はあるんだけどそれはなあ。語ってもつまらん。世界はひとつなんで答えはひとつしかない。答えはひとつじゃないってのは逆に言えば世界がひとつの形に収束してるだけとも言える。世界そのものがひとつしかないんだよなあ。人により違うのは視点だけだ。人ひとりにひとつの世界を用意してくれるヤツなんていない。そのうちな、AIが作ってくれるかもしれないが、それ本当に存在する意味あるか? パーフェクトワールドなんていらん。ヌルゲーお断り。


 脱線しまくるが忙しいからな、ついつい考え事をしてしまう。やること多すぎるから人にやらせたいんだがスクルドもソフィアやワルテルたちロードバースのブロッサム組にも仕事があるのでもう私が動くしかないんだよ!


 港と港湾地区の区画整理と商業ギルドとの折衝もある。冒険者ギルドはダンテ市にすでに置いてある。このあとの予定はムルベイ公爵との契約書作成とかもあるのか。


 メモを取りまくってるのでそれをベラベラ剥がしながらあー、これも、とか言っては走り回る。


 あれ、なんでブラック労働してんの?


「おもしれーよな槇中って。ほっといたらめっちゃ仕事するんだもん」


「立石は教国に帰れ」


「冷たい!」


 そもそもなんでこいつのほうが怠惰なんだよ。勤勉スキルは? 常時発動で経験値二倍になる? チートやめろや。そもそもレベルがねえだろ。レベルはないけど成長するの? チートめ。こいつが一番ずるだよな。法律守ってたらなんでもいいってヤツだもの。解釈違いで罰してやろうかな。侮辱罪辺りで。私女王だし。うへえ、絶対女王とか名乗りたくねえ。中二病にも方向性ってあるよな。解釈違いで同担拒否でケンカ起こるな。ケンカすんな趣味で。


 まあ魔女の国なんだから仕方ねえ。


「しんどげによーるけどうれしげやん」


「意味わかんねえから普通にしゃべれ」


「つらそうには言ってるけど調子に乗ってるじゃないの」


「やっぱり元に戻せ。似合わん」


「そやろ? 終いにしまいそれ仕舞いまい」


「わかんねーよ普通にしゃべれ」


「ループやめまいのおとましい」


「わかんねーよ普通にしゃべれ」


「くらっしゃげるで」


 ちなみにギフト持ちにも天使の制約は効くんだが強制契約はできん。当たり前かもしれないが線引きが微妙だよな。詐欺ってもある程度オッケーなんだよな、この制約。まあ管理してるのがミネルバの同類だからなぁ。法の天使テミスとはいつか会ったりするかもな〜。ミネルバがらみで。こわっ。


「おとっちゃまやの」


「誰かおぼっちゃまだ」


「おとっちゃまはおぼっちゃまよりおとましいで」


「うるせー、仕事手伝え」


「ウチは弟子とダンテダンジョン行ってくるで、またの」


「冒険者生活謳歌してんなぁ……」


 私以外の魔女遊びすぎ説。まあ私も修行に託つけて遊んでたんだけどな。もうおそと忙しいからイヤだ。二度とメッシス大陸には渡らんぞ。これからムルベイで契約だよ。マイルームくぐるだけだけど。到着。


「なあオッサン、領主辞めてウチで働かね? なんで怠惰の魔女が一番仕事してんだよなんか間違ってね?」


「ムルベイ辞めてそっちやるメリットとか違いなんかあんのかよ」


「最先端のダンテ市で仕事できる」


「普通に魅力的な提案してんじゃねーよ!」


 なんで魅力的なのに怒られるんだよ。まあムルベイのこの先のほうがしんどそうなんだけどな。


「結局独立なんかわざわざ噛まさんでも貿易協定で縛り入れるだけならできるんじゃね?」


「まあ白の魔女が配下にいればだな」


「人の下につくことなんて未来永劫ねえよ。私みたいな働き者は使い潰される世の中だからな」


「重い人生送ってんじゃねーよ! まあだから魔女なのか」


 リベルトのオッサンはオッサンで忙しそうなんである。モッセレンとの兼ね合いも修復ができないんでわざわざ関係を壊すほうがもったいない。派閥は西派閥で一緒なんだよな。宰相も西派閥の侯爵らしいし。なんつったっけ、ハーリング侯爵だっけ? やっぱりヒゲだったり目の下にクマがあったりするのかな?


「そう言えばリベルトのオッサンもセカンドネームにスケルフィスって名前があるんだよな。この国の名前の理屈がわからん」


「この大陸では果物の名前を実り多くあるようにと願いを込めて国名につける。地方名はアナナスは魚の名前が多いがこの辺りから西はまた共和国ができる前のいろんなルールで名前つけてる。ハート子爵とかな。それでセカンドネームには母親方の名前をつけるのが一般的だ、リディア・ハート・モッセレンとか」


「ややこしすぎんだよ。まあ名前が何十個もある正式名は本人も覚えてないとかじゃなくて良かったけど。歴史があるのもよくわかったわ」


 だれだっけ、ピカソとかすげー名前長いんだよな。まあいいや。


「ちなみにソフィアって名前の女性が多いのは愛の女神の名前がソフィアだからだったりな」


「ややこしいわ。ウチのソフィアもそれか」


「いや、子供に偉人の名前つけるの別に普通じゃね?」


「だよなあ。まったくファンタジーな世界なのに手加減せずに現実が押し寄せてくるのなんなのいいけど」


 それはもう置いといて、この気安いオッサンと今後の計画を練る。うーん、とりあえず東の王都派閥を黙らせたいんだよな。そこはまあやりようがある。面白い手を考えているんだが、……そこは時間をかけて白の魔女とソリド島とブロッサムにこの国をズブズブに漬け込んで依存症にしてからだ。


 そこから悪逆の魔女カーラの伝説が始まるわけだな。


「……ぶぷっぷ、ガハッ! に、似合わん」


「うっせーよ泣くぞ協力しねえからな!」


「悪逆の魔女とするか一国の女王とするか、どっちに転んでもしんどくなるんじゃね?」


「そうだとも。寝てていい?」


「いいわけねーだろ」


 はあ、現実が厳しいよお、ニートしたいよお。スローライフしようぜ。よし、明日はバーベキューしよ。


「オッサンも来る?」


「行くぜ!」


「フットワーク軽すぎ公爵に名前変えろ!」


「なんかいいなカルスギ公爵とか」


 つまんねーこと言ってんじゃねーよ、こんなとこにいられるか、私はソリド島に帰るぞ! 殺人犯はもう捕まったけどな!






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