レベルが上がらなきゃハクスラじゃない
やっと戦闘物らしくなってきました。まああんまり戦ってませんけど。
休憩終わり。口についてる煎餅の粉を拭ったらハクスラ再開だ。ちなみに食ったものはマナになって経験値に変わるらしい。便利な仙人ボディ。食ったもののマナが大きいと経験値もそれなりにもらえるようだ。巨人もマナで動いてるんだよな……。ごくり。普通の人も食い物でレベルが上がるらしいけど食い物で上がるレベルは毎日良いものを食ってても十年で二十がイイとこらしいので期待はしない。もちろん上がれば上がるだけ上がりにくくなる。食ってモンスター狩るのが一番レベルが上がる。前も言ったが休みなくちょうどいいくらいの敵と戦える環境なんて普通は無いからな。まあ十五レベルでゴブリンの子供やスライムと戦ってたら上がるものも上がらないか。武器がほしい。オリハルコンとかアダマンタイトとかあるらしい。ヒヒイロカネも。いっぺんこの世界の管理人らしいイルマタルに会ってみたいもんだ。話が合いそう。星のんの友達だしな。
さて、休憩した所で頭の中がまとまった感じがする。こういう休憩はセンスを磨くのにいいんだよな。頭をリフレッシュさせるのも考えを整理するのも大切だ。
さて、今度は巻き貝の化け物だ。水魔法を放ってくるらしい。ウォーターカッターとか使ってきそうだな。機械のウォーターカッターには砂みたいなのが入ってるって話だが別に人体を引き裂くくらいならそれはいらないらしい。ウォータージェットは四千気圧もあるとか。深海一万メートルで千気圧なのでメチャ強い。空気でもいきなり晒されるなら四十気圧もあれば人間はミンチになるからな。肉餅は作らないぞ。どこの妲己だ。潜水艦の事故とかミンチになった挙句に流出して魚にでも食われるのかな。こわい。まあ服とかは残ってるんじゃなかろうか。物質だし無くなるはずはないからな。ウォーターカッターとかは水が出る方向を一方に絞ってるから噴出する水が真っ直ぐになるけどエネルギーは三次元方向に広がるから高水圧の水を取り出したら爆散したみたいになるんじゃないかな。まあ食らいたくはないね。
高さ二メートルくらいの巻き貝が佇んでる。色はほぼ灰色で足の部分は白っぽい。トゲも生えてて見た目はデカいサザエかな。水の玉も空中に浮かんでるがこれは水魔法ではあるけど、浮かばせてるのは土属性の領分なんだよな。念力的なのは土属性だ。空を飛ぶのも土属性。引力や斥力、分子間力のコントロールだな。固体を分割して操作したりできるので土のミサイルとか撃てるわけだね。液体を動かしたり水を発生させるのは水属性だけどすでにある分を浮かばせたりして使うのは土属性なんだよな。飛ばすのはエネルギーなので失敗したらクラッシュするけど火属性でもできる。それらをシステム的にまとめてるのが魔法ってことだな。ややこしいな。本来物理法則に則ってるのにゲーム的な魔法を再現しようとするとこうなるわけだ。圧縮はマナを高めることで水魔法で行える。空気の玉なら風魔法だ。水圧より気圧の方が開放された時に体積が増えるから危険性は高いらしい。水の場合ダムが放水したみたいになるのかな?
魔法はあるがずいぶんゲームとかと体系が違う。だが相手の体内の物質を操るのは難しいけど治癒魔法だと体内の内臓の怪我とかも癒せる。たぶん相手の体内の生命の精霊が受け入れるように力が働くんだろうがイルマタル降臨以前なら相手が受け入れないとダメ、とかだったんじゃないかな。そうじゃないと相手の脳内に水だろうが土だろうが風だろうが火だろうが打ち込めば死ぬし。液体や固体にマナを浸透させるには精霊に干渉するのが簡単らしい。精霊素っていうマナが変質したものが物質に浸透してるみたいでそれを下位の精霊以上の意識に反応する存在が誘導して魔術や魔法を生み出す。マナに思念や怨念を込めても変質するらしいがそれはまた今度考えよう。人体を守るのはその人の意識下にある肉体の生命の精霊が持つマナということだ。それはとても強固なものになる。
とりあえず、目の前のこのデカ巻き貝はヒルスネイルと言うらしい、は、こちらに水の玉を投げてくる。試しに右手のひらで当たってみると水の玉は爆散し、骨が折れたのか右腕が関節じゃない途中からこちらに曲がった。痛ええええええええっ!!
当たり前だ。しかし引っ張って修正するみたいに手が元の位置に戻った。治るときの痛みはないな。折れた部分がマナに変換されてから元の形にデジタルデータのように復元される。不老不死の効果だな。服も数秒してから吹き飛んだ部分が修復された。このコートもすげえ。しかし攻撃を食らい続けたらマナがガンガン減りそうだ。一応マナのバリアとかも有効らしいのでせっかくなのでマナをコントロールする原始魔法、魔術を試してみる。周辺の物質やエネルギーを変質させているとはいえ物質を発生させるのは質量やエネルギーが大きいほど難しくなるがすでに存在する物をコントロールする分にはマナで精霊素を動かすだけなのでほとんど損失が無いようだ。精霊に干渉する魔法やスキルの方が色々できるが、このマナで精霊素を動かすのが魔術、大きな、意志のある精霊を扱うのが精霊魔術といい、イルマタルが作ったシステムや魔法が無くても扱える物だそうで、自分にもマナポイントはあるので練習してみるのも良いかもしれない。精霊には精霊素、下位精霊、中位、上位、王といて、中位までは動物とさほど変わらないそうだ。精霊素に至ってはバクテリア以下、ウィルスのような物らしい。一応マナに反応する程度だ。ちなみに王を従えると神だが、おおむね精霊ではないようだ。精霊は神とかやるの面倒がりそうだしね。
念動力のトレーニングとかはさすがに戦闘中は危ないので身体を巻く風を意識する程度にしておこう。まずは巻き貝退治だ。硬いとこを殴るのはバカみたいだがハンマーとかならダメージありそうだな。ガッチン漁と変わらん。音響の魔法とかなら効くんじゃね? なるほど。やはり風魔法が最強かも。透明な空気の玉をバラ撒いて当たったら爆発。地雷にもなるな。風魔法は最初に取っておこう。原始魔法こと魔術でも土魔法はできそうだが金属とかを発生させるのはさすがに魔法の領分だろうな。魔法みたいな人為的システムを呼び起こすには詠唱が必要になるとかありそうだが、いらないらしい。ステータスオープンも言わなくていいらしい。中二心をわからんやつめ! まあ呪文とか覚えるのは面倒くさいしな。一応スキルが無くても原理さえわかっていたら難解ではあるが使えるみたいだ。まあ詳細は魔法のスキルを買ってからだな。まずはレベルを上げないと話にならない。何事も順番というものがある。
薬草とか収集する依頼もミネルバにもらおう。冒険者ギルドなんかでも市販されている物が無くなるから依頼が出るわけで本来の倍から十倍でも買い取ってもらえることはあるらしい。常時依頼なんかは買い叩かれるから逆に安くなる。そこで冒険者格差になるんだろうな。こればっかりは仕方ない。私もミネルバに売るより冒険者ギルドに売った方が高くなる。あ、冒険者ギルドとか薬師ギルドとか錬金術師ギルドとか商人ギルドとか色々ギルドは乱立しているっぽい。どこからどこまでがどのギルドの領分、とは細かく決まってないのでより高い報酬の依頼を探すのもいいらしい。まあ町に出るのはいつになることやら。引きこもる予定だしな。
冒険者ギルドも一年に一度は更新手数料が必要みたいだな。まあギルドに収入ないと運営できないもんな。手数料とか取ったり。いなくなった人登録してても書類がかさばるし消すよな。依頼人は相手を選んだり指名したりもできるけど迅速に依頼したい場合は掲示板に張り出すようだ。まあそういうのはいずれギルドに行くことがあれば、だな。私は引きこもる!
あ、この世界に個人情報保護とか無いし商店はいらっしゃいませーとかやってくれないらしいぞ。お客様は特別、なんて考えはないらしい。まあ日本のアレが特殊すぎるんだけど。いらなきゃ買うな、がこの世界っていうかこの大陸の習慣みたいだ。実際金を払うから偉いなんてことはないよな。足を運んで笑顔で帰ってくれるからお客様は神様ですって言葉になったんで、金を払いたくないなら品物も渡さない、って当たり前ではある。サービスってあくまでも善意のオマケで客側が望むもんじゃないしな。個人が店を選ぶ基準にはなるがそれだけ。どこもおんなじならサービスで選びようがないわな。田舎だと店を選びようがないし。日本に帰りたくなりそう。
まあなんでこんなに考え事をしてるかというとだな、この巻き貝、肉のとこも硬い。辛うじて刺さるけど刺したらフタをして籠るし。焚き火して壺焼きにしてやろうか。うまそうだな。でもこのままじゃ倒せないなこれ。まあミネルバが出してるんで倒したらなんかあるのかもしれないけど。レベル上がるかも?
倒し方もなにかあるんだろうな。巻き貝が自滅するようななにか……。二枚貝なら貝柱を切ったら開くんだけどな。目を突いても死なん。失明はするかも。銅の剣だけでどうするんだ。どうにもならん。どうでもいいダジャレしか思い浮かばん。貝がフタを閉めるのに合わせて身が切れるように刃を縦に突っ込んで自力で切らせるとか? 普通は人間のアバラの間を通すために寝かせて横にして構えるんだが。やってみるか。とりあえず刺さらないと話にならんので刃が縦になるようにまっすぐ敵に向けて持ち、貝殻の下の辺りをまっすぐに全身全体重で思いっきり突き刺してその上から更に蹴りつける! 体重四十キロしかなくて悪かったな! 前は貧乏すぎて四十キロ切ってたけどな!
おーおー、うねってるうねってる。気持ちわりいー。うん、縦に刺した方が効くっぽい。閉まろうとして余計痛めたのかもにょもにょしはじめた。きもっ。更に蹴る! 蹴る! 蹴る!
少しは効いたか? コイツは魔法がないとキツイな。なるほど、この辺りで外に出て魔法を手に入れてみろってことなのか。このままコイツだけは倒せないかな。トレーニング終了すれば逃げれるから多少無理してもいいんだけど。
なんか悔しいよな。
よし、このまま銅の剣のハリセンボンにしてやろう。貝なのにフグの仲間入りをさせてやろう! 銅の剣、カモン!
「おっりゃああっ!!」
「ピギュッ!」
「貝が鳴いた?! もう一本! っらあッ!!」
水管が鳴ったらしい。さあさあ、どんどんできあがってくるぞハリセンボン。蹴りまくって更に深く刺す! ヒルスネイルのヤツはフタが閉まらないもんでかなり苦しそうだ。どうやら見た目ほどLP無いなコイツ。そうか、ライフが尽きたらこの世界のヤツらはみんな死ぬんだったな。私はマナがあれば復活するけど。つまり継続ダメージが入る大怪我状態でライフポイントがゼロになるまで待てばいいんだな。……そこに気づかせるためにコイツか。ミネルバも考えてるな。しばらく様子見るか。
蹴りながら。おりゃあっ!
「ピギいいいい!!」
「痛かろう、苦しかろう。今楽にしてやろう! 待つだけだけど。蹴りながら!」
「残酷ねえ」
「そりゃどんな目線からくる発言だよ」
お前が出したんだろうに。こっちは刺し身作ってるだけだ。活造りになってるが。新鮮だねえ。おっと、水の玉が飛んでくる。腹で受けてみる。
「グボエッ!! がブフッ! …………」
「楽しそうねえ?」
「楽しい」
水球で吹き飛ばされて大の字に寝転がる。痛みすら自由。抑圧は敵。私にとってはすべてが私の楽しみのためにある! 例えそうでなくても、そうしていく。それが生きるってことだ。私にとって!
腹に開いた傷はすぐに癒えたが血を吐いたってことは内臓が一発で裂けたってことだな。即死級とかって、初歩の魔法なのにどんな圧力だ。まあ普通は服一枚で直撃を受けたりしないか。マナが少し減ってる。こんなもんなのか。不老不死は思った以上にチートだぞ。まあ怪我はするし出血はするがそれもすぐ回復するらしい。便利。魔法もヤバいな。最下級の攻撃魔法でもゴブリンとか殺せるんだもんなあ。こんな魔法百発も打たれたら粉々になりそうだな。まあ魔法は普通は一発ずつしか打てんらしい。クールタイムが存在するようだ。私は魔術を極めるかなあ。タダだし自由だし。そうするか。まあお金は稼ぐけども。ゴロゴロしたい。ちなみにミネルバによると怠惰の効果で今から一年ゴロゴロしてもせいぜい今のレベル十五からレベル三十になるくらいだとか。むむう、まあタダで強くなるよりはハクスラの方が実感もあるし楽しいよな。
元の時代じゃまだまだ形になってなかったフルダイブ型のVRMMOをプレイしてるんだと思えば、すげえラッキー。しかも実利としてその力をリアルで使える。まあレベルが超上がりづらいクソゲーだが。それもまた良し。お、ヒルスネイルが消えた。ゲームっぽい消え方なのはトレーニングルームだかららしいけどダンジョンもこうらしい。アイテムドロップもダンジョンならある。外だと普通に物理。スライムは核を残してドロドロの体液も残るようだ。キモいな。その体液も綺麗なら糊に使えるので売れるとか。リッター数円なので誰もやらんけど。スライム牧場なるものがあるらしい。トイレ用スライムとか出荷してるようだ。楽しそうだな! それで金を稼ぐのも良くないか?
「ミネルバ〜、スライム牧場作ったらスライム買ってくれる?」
「いいわよ。それなら普通に相場で買うわ。うっかり死なせてしまうといけないから飼育室のクロックは上げないわよ?」
「まあそれだと売れないスライムも出てくるからなあ。売りすぎて値崩れするのも面白くはあるけど生き物だからなあ」
普通にプランターも趣味で設置してもいいけどスライム牧場は楽しそうだよなあ。やってみよう。言うなればペットだしな。売らないで飼うやつも置いとくとか。経済戦争は面白そうなんだけど仕掛けるなら別のとこでやる。
「それにしてもレベルが上がらん。おや、上がってるな。なんかファンファーレとか鳴らないんだな」
「鳴るようにしてもいいけど?」
「あんまり頻繁だとうっとうしいけどこれだけマレならむしろ嬉しいかも?」
「じゃあてってけてーん、で」
「気が抜けるわ! まあなんでもいいけど」
『びよろり〜ん。てってけてーん。レベルが16になりました』
「お前の声かよ! ……気は抜けるけど敵を倒したあとならいいか。戦闘中はやめてくれよ」
「ゲーム仕様ね」
「ゲームしようぜ」
「日本の商品を買いますか?」
「買えねえよ。金がねえよ」
ゲームも買えるんだな。まあ今やってるのがゲームみたいなもんだけど。ハクスラってなんでやめられなくなるのかね? 楽しい。
「そうだ、トレーニングルームで敵を倒したらミネルバポイントをもらえる水晶を落とすようにしよう」
「へえ、なんになるんだ?」
「私の好感度が上がる」
「絶対いらねえよ」
「そこまで拒絶」
「ポイントを貯めたら武器を強化できるとかどうかな」
「ペットも強化とか?」
「いいねえ」
経験値でレベルも上がるしな。ハクスラっぽくていいな。あとはもっと敵を薙ぎ倒す感じで倒したいよなー。しかし一番強いのってやっぱり質量攻撃な気がするな。なにかあるかなー。考えておこう。レベルが上がってもスキルが無いから魔法を覚えたりはしないようだ。魔術の鍛錬をしてみるか。それに、うーん、ストレージがあるなら軍隊とも戦えるんだよなー。金はかかるけど……。用意しておくかなあ。ゴブリンの国とかオークの国とか潰してみたいよな。あれば。
無双してみたいよなー。戦争に参加するのは嫌か?って聞かれたらやってみたいって答えるんだよなあ。死んでもかまわんし。そう、前まではこんな考えだったんだが、最近は変わってきている。
長年寝たきりになってたオカンが死んで遺品を漁ってた時だ。昔オカンが欲しがっていたミシンが出てきた。買えるまでそうとう欲しいって言ってたし買ってからは私のことはそっちのけでやってたな。お陰で私は縫い物や編み物には触らなかったが。そりゃそうだろ、私の母親を奪ってるんだから。まあ料理はひとりになったら必然やることになったが。得意メニューはチャーハンだ。ネットの掲示板でも作ってたけどそれは置いとこう。
大事なのは、それを捨てる時に無性に悲しかったんだ。動かなくなった母親、喋れないから聞くこともできず、その大事なミシンを捨てることになった。私より大事にしてたミシンだ。母親が哀れだった。大切な物を残して死ぬことが、どんなに悲しいことか。そう思ったら。
私は死ねないと、生きていこうと思った。死にたくないとは思わなかったが。死ぬなら死ぬ時だ。そして死んだが、悲しくはないな。
大切なのは、今を生きることだ。どうしたって人間は何かを残して死ぬ。それは悲しいけれど仕方がない。だから、今を大切にするんだ。過去も未来も実際にあることだろうけれど、今に比べたら不確かだ。過去は記憶に過ぎず、未来は訪れるかわからない。
時間なんて無いんだと物理学者が言っていた。それは人間が作った概念に過ぎないと。
……死んでしまった今はよりわかる。私は今を生きるのだ。
さあ、せっかく鑑定能力があるんだからハクスラも一旦置いといて、薬草探しにでも出かけるか。
☆きいろメモ☆
マイルームの管理はミネルバが行っています。基準は面白いかどうか、ですが基本的に物理は弄ってないです。トレーニングになるように実世界的に動けます。ここで習得したアイテムは取り出す場合対価にマナや物質を必要とします。通常は取り出し不可です。
不老不死だと食べたものは分解して再構築される際に余ったものは経験値として情報世界に蓄積したり精霊として漏出していきます。物質が無限に増えることがないように無に帰ることもありません。
インフィニティの能力を赤の魔女が持っています(当分出ませんけど)。これは魔法のクールタイムをゼロにする能力はありません。なぜ彼女が何百発もの魔法を放てるのかはカーラが謎解きをしていくことになります。